ただ、その言葉で実感する。自分にとってそれが生きがいでそれが喜びなのだと気付いた
ラングとアルトは列車を降り、ついにジェイド地区に到着する。
2人ともすぐに懐剣を展開した。瓦礫、深く立ち込める霧…ジェイド地区の様子は以前と同じに見えた。だが、恐らく輝煌石が更に消耗し地形は以前とは変わっているだろうと思われた。
そこで、再び地響きが聴こえる。またどこかが崩落したのだろうか…
2人はとりあえず歩き始める。しばらくすると、機械と機械兵の群れが現れた。アルトは”懐剣:ディライト”を構えながらラングに言った。
「ラングは見てて。僕1人で機械と戦い続ける」
「…そんな…」
ラングはこうなることは分かってはいたのだが、実際その時が来ると胸が締め付けられるような気持ちになった。
アルトはラングの心情を察し、懇願する。
「追い詰められないと覚醒しないと思うんだ。ラング、お願い」
「…」
「折角ここまで来たんだ。後少しで全部終わる…お願い、ラング」
ラングは唇を噛み、しばらく考えた後、絞り出すように言った。
「…出来るかぎり協力する。でも、俺の理性がガマンできなくなるかもしれないからな」
「…うん。分かった」
そして、戦いが静かに始まった。
アルトは懐剣を振るい、機械を次々と攻撃する。機械兵以外のものは、何とか撃破できた。
この時点でアルトの息は既に上がっていた。
「…」
ラングはじっと耐える…
後は数体の機械兵だけである。しばらく戦い続けると、アルトは汗だくになっていた。そもそも倒すことが目的では無い。アルトは意図的に自分を追いつめるような戦い方をしていた…
機械兵の攻撃がアルトに当りそうになった。
「アルト!!」
アルトは自分を助けようとするラングを手で制し、敵の攻撃をぎりぎりで避けた。ラングは唇をかみしめながら後ずさる…
ラングがアルトの名前を呼び、アルトが手でラングを制す。それが何度も何度も繰り返された。
ラングの目は血走っていた。
手を出してはいけないことなんて分かっている。我慢すればホープ島を救うことができるかもしれないのだ。
だが、理屈では無い…
「…やっぱり駄目だ、アルト!!!!!」
ラングが我慢の限界を超え飛び出そうとする…
刹那。
再び機械兵の攻撃を受けそうになったアルトの懐剣の光が、一瞬で赤に変わったのだ。
――ついに、アルトの”懐剣:ディライト”の赤い光が目覚めたのだった。
アルトは目の前の機械兵を、一振りで、一瞬で殲滅した。
そしてその場にへたれこむアルトにラングはすぐに結界を使う。
「…アルト、大丈夫か」
ラングが優しく声をかけると、アルトは肩で息をしながら、穏やかな表情になり答えた。
「…うん。本当だ。結界があると体が楽だね…」
しばらくすると、アルトは落ち着きを取り戻したようだった。
「…ありがとう、ラング。もう大丈夫。さあ、行こう」
ラングは結界を解除したが、まだ心配そうな表情で言った。
「苦しくなったらすぐに言えよ」
「うん、ありがとう」
ラングとアルトは、すぐに列車でリマインド・コアのある場所へと向かった。アルトはディライトを収納したが赤い光が少し漏れてしまっていたので、2人は座席に座らず外の展望スペースでやりすごした。
列車が行けるぎりぎりの所まで行き、ノースエリアの人目につかない山奥にある石碑のような所に着いた。アルトが石碑を操作すると入口が現れた。
薄暗い通路を、配置された機械兵を倒しながら進む。
ラングはアルトに負担をかけないように出来るだけ前に出たが、アルトは定期的に暴走気味になり機械兵を殲滅していった。覚醒したディライトの強さは凄まじい…一振りだけで目の前の機械兵が殲滅されるレベルだった。
「…っ…ラング…!!」
ラングはアルトが暴走気味になる度に結界を使ったのだが、時々アルトが苦しそうに唸ったりラングの名前を呼び結界を求める時があり、その時にも結界は欠かせなかった。赤い光の影響で感情が不安定になるのだ…
「…アルト、大丈夫か」
「大丈夫、あと少し。輝煌がなくなれば赤い光も消えるから…」
「ああ。あと少し、がんばろう」
アルトが暴走したり不安定になったりする度にラングが結界を使う。それを繰り返しながら2人は前に進んだ。
最深部。薄暗い、寒い小部屋に着く。大きな機械の前に複数の椅子が並べられている。そう…これがリマインド・コアなのである。
アルトはリマインド・コアをうつろな目で眺めた後、静かに呟いた。
「ここまでだ。ラングは、帰っても大丈夫だよ」
「…どういうことだ?」
ラングはそう声を漏らす。嫌な予感がした。
アルトはラングの方を振り返り、穏やかな口調で答えた。
「…ちゃんと言わなくてごめんね。言ったらラング、絶対だめって言うから」
そしてアルトは、こう言った。
「…僕がここで封印されれば、リマインド・コアが発動して全ての輝煌が消える。だからここまで来たんだ」
「!!??」
嫌な予感が当たってしまった…ラングは首を強く横に振り、言葉を絞り出した。
「…駄目だアルト…知ってたら許可してない。リマインド・コアで眠りにつくって言ってたのが気になってた…でもお前が赤い光なら大丈夫だって言ったからここまで来たんだ。さあ、帰るぞ」
「帰ったって誰かがレギュレート・コアに封印されるだけだよ。だったら、より強力なリマインド・コアの方がいいでしょ。こっちはジェイド地区だけじゃない、大陸全ての輝煌を消せるんだから」
「そうだとしたらちゃんと話し合えば良かっただろ!!」
悲痛な表情で叫ぶラングに対し、アルトはリマインド・コアを背に、ラングを正面から見つめ話し始めた。
「ラングに納得して貰うために全て話す。リマインドが封印された場合、輝煌石が消費され続ければいつか大陸は崩落する。その前にホウプが島を救う最後の方法としてコアをこっそり作った。コアのことはホウプの直系の子孫の長男か長女の間だけで言い伝える。今は直系のお爺さま、父さん、そして僕しか知らないんだ。父さんの作ったレギュレート・コアが人を封印するのは、リマインド・コアを参考にしてるからだよ」
アルトはリマインド・コアをちらりと見てからラングを再び見て続ける。
「リマインド・コアがあれば、リマインドが見つからなくても遠隔でリマインドを発動できるけど数人が封印されて意識も途切れる。輝煌が大陸中から消えた後も、遠隔操作を維持するためにそのまま封印され続けないといけない。本当は数人分の懐剣のエネルギーが必要になるけど、ディライトの赤い光ぐらいのエネルギーがあれば僕1人でも大丈夫なんだよ。誰も巻き込まないで済む…」
アルトは最後に、力強く言った。
「僕はそのためにここまで来た。これは僕の”ホウプの子孫”としての使命だ」
ラングは再び首を横に振り、アルトにそっと話しかけた。
「アルトはそれでいいのか?使命とかじゃなくて、アルト自身はどう思ってるんだ…?」
「兵器として育てられた僕でも、誰かを助けられる。みんなのためにこの力を使えば、生まれてきて良かったって思える…だから全然嫌じゃないよ」
ラングはアルトの肩を掴み、絶叫した。
「じゃあ何で泣いてんだよ!!!!!顔触ってみろ!!!」
「…!?」
アルトが自分の頬を触ると、顔は涙で塗れていた。ラングは更に声を絞り出す…
「…お前…泣いてるじゃん…本当は嫌なんだろ…?こんな暗いところで、1人なんだぞ…?こんな寒い所に寒がりのお前を、俺が置いていける訳無いだろ…」
そこで、最後の機械兵が発動する。ラングは「こんな時に…!」と漏らし2人はすぐにそれを片付けた。
それと同時にアルトはリマインド・コアの封印用の椅子に座る。
「…今のが、最後の機械兵みたいだね。さあ、ラング…もう…」
ラングはアルトの前にしゃがみ、顔を覗き込んだ。
「…アルト、みんなのことを想い出してみろ。本当はどうしたいんだ?」
「…」
アルトは、ぼーっとしながらラングの顔を見る。ラングは更に呼びかけた。
「…本当は違うんだろ…」
「…」
「本音を言えよアルト!!!本音を言ってくれ…頼むアルト…」
「…」
思わず涙ぐむラング。
その時…アルトの体が震え出した。
声が漏れる…静かに、アルトの声が漏れ出した。
「…みんなと…」
アルトは、ぼろぼろと涙を流しながら言った。
「…みんなと一緒に居たい……やっと毎日が楽しいって思えるようになったのに…」
暗くて寒い部屋に、アルトのすすり泣きが響き渡る…
ラングは目を細め、アルトの顔を見つめた。そして、静かに立ち上がり、隣の椅子に座る。
それを見たアルトは目を見開き、ラングに向かって叫んだ。
「…ラング、何してんの?早く逃げて!!ディライトの赤い光があるから僕1人でも大丈夫…」
「元々大勢でやるもんなんだろ?だったら1人より2人の方がいいだろ」
「でも…!!」
ラングはアルトに向かい、笑顔で言い放った。
「…俺たち、友達、だろ?」
「…!」
アルトはぼろぼろと涙を流しながら、微笑みを浮かべて、こくんと頷いた。
「…うん…」
それは、ラングがアルトと出会ってから初めて見た、彼の笑顔であった。
ガシャン、と大きな音が部屋に響き渡る。
リマインド・コアのスイッチが入り、黒いケーブルが発動した。そして…
それからしばらくした後。
アルトとラングが封印されたことにより、リマインド・コアが発動した。
輝煌石に結界が張られることで輝煌が消滅し、崩落の進行は完全に止まった。輝煌石の消耗により出来た地下の空洞に対し対策を講じながら、一見完全に平和になったように見えた。
だが…
各地が崩落したことにより、地層がむき出しになっている場所が至る所にあった。
…そこに、どこにあるのかも分からない…途方もない探し物をするために彷徨う人影があった。
アルトの祖父から詳しい話を聞いた。それさえあれば…リマインド・コアに居る2人を…
<E6>=壊剣 最後のページについて
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