16.”選択”

16.”選択”

――どうやっても避けられないのかもしれない。
 そもそも自分たちは、生まれる前からホープ帝国を救うための部品だったのだ。
 道具として生まれてきたようなものなのだから





 チーム:ミモザの6人は、アリスの父・コーラルに話を聞くためにウェストシティにあるアリスの自宅に来ていた。元帥執務室が爆破された影響で研究室が使えないので、コーラルは家で調べ物を繰り返していたのだ。

 コーラルは部屋にアリスたちが入ってくると、驚いた表情で言った。
「アリスと…皆か。どうした?」
 アリスは、少し考えてから答えた。
「…最近各地が崩落してるでしょ?それの調査の任務なの。ジェイド地区の噴き出すエネルギーを止めれば崩落は鈍化するんじゃないかって話になったの。前に父さんが止めるって話をしてたと思って…」
 アリスはコーラルにもレギュレート・コアへの封印のことは言わないでおいた。コーラルが慌てている様子も無いので、皇帝から今回の封印の話も聞いていないと思われた。
 コーラルはアリスの話に納得して答える。
「丁度、崩落の件もあって私もジェイド地区について調べていた。以前から調べていたんだが仮説の域を出ることが出来なくて止まっていたんだがな。私の途中になっている仮説で良ければ話そうか?」
 ラングは、一礼をして言った。
「お願いします。少しでも可能性があればそれに賭けたいんです」
 コーラルは頷き、話を始めた。
「8年前のジェイド地区爆発事故からエネルギーが噴き出し続け、爆心地の地層の輝煌石はほぼ消費つくされ今は海に沈んでいる。爆発事故の時に出来た穴…火口とでも名付けようか。火口は常に移動し、輝煌石の消失した範囲はどんどん広がっている」
 アリスは小声で「火口?」と呟く。コーラルは頷き、続けた。
「そう、ここで重要なのは火口だ。あちこちで爆発しているから誤解しやすいが、あくまで爆発は輝煌の濃度が一気に高くなった時に引き起こる物であって、火口自体は一つしかない。そこに、『無情の”壊”剣』の赤い光をぶつけて火口を塞ぐ」
「!?」
 コーラルの示した仮説に全員驚いてしまう。方法が残されていたのは良いが、かなり過激な内容である。コーラルは更に続ける。
「レギュレート・コアへの封印の場合、エネルギーを止めるのは封印されている間だけなのだ。もちろんそうじゃなくても君たちの封印など私が許可しないがな…しかしこの火口を塞ぐ仮説の場合、噴き出すエネルギーと赤い光の勢いをぶつけ合うことで火口が結晶化して蓋がされるから、今後エネルギーが噴き出す心配は無くなる」
 コーラルは今、封印を許可しないと言った…恐らく、皇帝はそれを知っていてわざと今回の封印の話をコーラルにしなかったのだろう。
 コーラルはここまで話すと、首を横に振った。
「だがこれはあくまで仮説だ。赤い光が目覚めたことが無かったので試したことは無い。火口に近付く必要があるから危険も多い」
 アルトも同意するように話に入る。
「…覚醒して赤い光を目覚めさせないといけなくなるね。危険すぎる…」
 そこで、エンが提案をした。
「例えば、『無情の”壊”剣』の青緑の光を数人同時にぶつければ赤い光じゃなくてもいけるんじゃないかな?普通の懐剣より強いんだよね?」
 それを聞いたコーラルは考え込み、納得したように答えた。
「…なるほどな。確かに『無情の”壊”剣』は普通の懐剣より放出するエネルギーが強い。ただ、いかんせん仮説でしかないから試してみないと何とも言えないがな。それに、火口に近付かなければならないことに変わりは無い…」
 エンはその返答に対し呟く。
「でも、このままじゃホープ島が崩落するかもしれないし…」
「…」
 コーラルは再び考え込む。そして、6人を見回して言った。
「そもそも、君たちがこんなに悩む必要は無い。ホープ帝国に敵などいない。大陸の崩落もカタルシス国の存在も全て自ら招いた物だ。全て、自滅なんだよ。この愚かな大陸を救うものがあるとすればそれはなんなんだろうな…」
 皆、少しだけ驚いた表情になる。ラングが代表するようにコーラルに聞いた。
「どういうことですか?カタルシス国は敵じゃないんですか?」
 そこでコーラルは、シャルとムジカの方を見た。
 突然見つめられ少し驚いた表情をした2人に対し、コーラルは静かに、こう言った。

「カタルシス国の話を聞きたいか?ジェイド地区にも関わる話だ」

「…!?」
 突然ジェイド地区の名前が出されたのだ。シャルとムジカは目を見開く…
 その時、ラングのデバイスに皇帝名義でメールが来た。

『カタルシス国にレギュレート兵器が奪われた。破壊を求む。すぐ来るように』

 とのことだった。

 ラングがメールの内容を皆に伝えるとコーラルは驚き、眉をひそめながら口にした。
「レギュレート兵器はジェミニが管理していたはずだが…何があった…?」
 ジェミニとは、アイオラの助手をしていた研究開発部の幹部の1人である。先日アリスを救出した際、ラングとレギュレート兵器について話したばかりであった。
 コーラルは自分のデバイスを確認しながら言った。
「こっちにもジェミニの動向について皇帝からメールが入っているな。ジェミニに連絡を入れてみよう。アリスたちも一緒に待ってみるか?」
「…そうするわ。情報に繋がるかもしれないし」
 皇帝にはすぐに呼ばれたが、アリスたちは少し待つことにした。
 コーラルがジェミニに電話をかける。中々出ないがコーラルはしばらく粘り続けた。
 ラングは顔をしかめながら呟く。
「…何でこんな時に兵器が…電話が繋がらなかったらすぐに出ないとまずいな」
 シャルも、ため息をつきながら言った。
「…こればっかりは仕方ねーか。あの兵器『無情の”壊”剣』でしか破壊出来ないって言ってたしな…カタルシス国の話、ちょっと気になるけどさ…」
 それに対しムジカも頷く。
「…うん。ジェイド地区に関わるってどういうこと…?」
 コーラルはシャルとムジカの言葉を聞き、ジェミニからの連絡を待ちながら言った。
「確かにレギュレート兵器のことは一大事だ。だが君たちにとってはジェイド地区のことは同じくらい大事なことだろう…ジェミニが電話に出るまでに手短に話すことも出来る。カタルシス国について聞くか?どうする?判断は君たちに任せよう」
「…」
 シャルとムジカは顔を見合わせる。

 カタルシス国とジェイド地区…2人は、ここでの選択により、自分たちの運命が大きく変わってしまうような気がした。後で聞いてゆっくり考えた方が心の整理がつきやすい気もする。それに今は、崩落や兵器と関係の無い話をしている場合ではない気もした。
 もしくは、今話を聞けば今後カタルシス国との接し方を考えられるきっかけになるかもしれない。何かの役に立つ可能性もある…とも思った。
 カタルシス国とジェイド地区について詳しく聞くか…今回は見送るか…
 どうする?

→今回は聞かずに見送る

→カタルシス国について聞く