カタルシス国はジェイド地区に関わる…レギュレート兵器がカタルシス国に奪われたと皇帝から連絡があった今、コーラルから詳しく話を聞くのかどうかシャルとムジカは迷った。だが…
2人は考えた末、カタルシス国について詳しく聞くことにした。シャルとムジカは顔を見合わせ頷き合うと、シャルはコーラルに「お願いします」と礼儀正しく言った。
コーラルは頷き、シャルとムジカを交互に見た後、しっかりとした口調で言い放った。
「カタルシス国は…ジェイド地区爆発事故の生き残りにより結成された団体だ」
「…」
シャルもムジカも驚いていたが、正直「カタルシス国とジェイド地区が関わる」と聞いてから、何となくそんな気がしていたのだ。
コーラルは2人の反応を確認した後、更に続ける。
「彼らについてずっと調べているチームがあるんだが、そこからの情報だ。心当たりがありすぎるだろう。彼らはホープ帝国を異常に恨んでいた…恐れていたことが起こった。事件…隠ぺい…いつかこうなる運命だったのだ」
シャルもカタルシス国の人間と対峙した時の彼らの反応を思い出し、「…心当たりか…そうだな。本当にそうだ…」と小声で呟いた。
以前、ホープ帝国のアイオラが起こしたジェイド地区爆発事故をホープ帝国が自らが隠ぺいしたことが知られたら暴動が起こる…という内容の話をコーラルとした。実際は暴動どころでは無く、帝国を恨む集団により新たな国が出来上がりつつあるのだ。
ムジカは戸惑いながらシャルに質問する。
「…シャル…私たち、どうしよう?」
「…」
本当に、どうしよう…だ。シャルもムジカもジェイド地区の生き残りである。今後、自分たちと同じ立場の彼らとどう接するべきなのか…
答えられずに居るシャルに、コーラルは申し訳なさそうに聞いた。
「辛い話だったか?」
それに対しシャルは、少し考えてから、心を落ち着かせて穏やかに答えた。
「いや、知れて良かったよ。知らないよりはいい…」
ムジカもシャルの真似をして心を落ち着かせ、コーラルに笑顔で言った。
「ありがとう、コーラルさん」
コーラルは首を横に振り、「いや、何の役にも立てなくてすまない」と小声で答えた。
しばらくして…コーラルは、ふう…と息をつき、デバイスを下ろしながら言った。
「…ジェミニとは繋がらないな。待たせてすまない。もう行くか?」
アリスは頷きながらそれに答える。
「そうね、そろそろ行くわ。色々ありがとう、父さん」
「私も後で政府ビルに行く。また何かあったらそこで聞いてくれ」
コーラルは最後にそう言い、6人は会釈をするとすぐに外に向かった。
外に出た6人は、政府ビルに戻るために走って駅に向かう。
すると…突然現れた数人の人間に懐剣で襲われたのだ。
「何だ…!?みんな、懐剣展開!!」
ラングはすぐに呼びかけ、6人は懐剣を展開し敵に応じた。
敵を一通り観察したアリスは戦闘をしながら皆に情報を伝える。
「…これ、多分カタルシス国だわ」
カタルシス国の人間は、最近は同じエンブレムを身に着けているのだ。カタルシス国は完全に新たな国としてまとまりつつあった。
シャルとムジカは無意識に、カタルシス国の人間の表情を観察しながら戦っていた。
その時…シャルが異変に気付く。シャルは敵の中の1人を見て、目を見開きながら呼びかけた。
「…あなたは…あの時の…!?」
シャルに呼ばれた男はシャルの顔を見ると、仲間に向かって「待て、攻撃をやめてくれ!」と叫んだ。仲間が攻撃を止めると、男はシャルとムジカを交互に見て、その後ラングたち6人全員を見渡し、こう言った。
「君たちは、シャルとムジカだな…それに、ラング…と言ったか?」
そう…彼は、シャルとムジカ…いや、6人全員と面識があった。
彼は、ジェイド地区の特殊任務の時、シャルとムジカを救出してくれたあの男だったのだ。
ムジカは、恩人である男を見ながら静かに言った。
「…カタルシス国の人だったんですね…あなたもジェイド地区の生き残りって言ってましたもんね」
それを聞いた男は少し驚いた顔をした後、納得したように答えた。
「カタルシス国の正体を聞いたのか。そうだ、カタルシス国はジェイドの生き残り…俺の名は”ライブラ”という」
シャルは、攻撃を止めたライブラを信頼し、自分たちの情報を伝えた。
「俺たちは、カタルシス国にレギュレート兵器が奪われたと聞いて政府ビルに戻るところです。兵器は…」
そこでライブラは、まるでその話を待っていたかのように話し始めた。
「俺も君たちを探していたんだ。そのことについて話をしたい。内容によっては兵器を破棄しよう。今からカタルシス国本部に向かう。シャルとムジカ、”2人だけ”で来てくれ。同胞にしか話したくないんだ…」
シャルは自分を見つめているムジカを見てから少し考え、ラングの方を向いて言った。
「ラング、2人だけで行ってくる。この人なら話が分かるはず…兵器を無効化できるかもしれない」
「…」
難しい表情をしながら押し黙るラングに、ムジカも言葉を伝えた。
「ラング、あたしからもお願い!!」
ラングは少し考えた後に観念し、2人を交互に見てから言った。
「…分かった。すぐに追いつく、深追いするなよ」
2人は頷くと、合図をして走り出したライブラの後を追う。
アリスはシャルとムジカの後ろ姿に思わず叫んだ。
「2人とも、無理はしないで…!!」
2人は走りながら振り向き、アリスたちに手を振った。
そしてシャル、ムジカ、ライブラの3人は。カタルシス国の人間と共に街に消えていった。
残されたラング、アリス、エン、アルトの4人は顔を見合わせる。エンはラングに聞いた。
「ランちゃん、どうする?兵器取り返せるかもしれないけど…」
そういえば、皇帝に呼ばれたのはレギュレート兵器が奪われたからであった。
ラングは少し考え、皆に告げた。
「ここで待っててもしょうがない。一応政府ビルに戻って皇帝に報告しに行こう」
そしてラングたち4人は、すぐに走り出したのだった。
ラングたちが列車に乗ろうとすると、ズン…という地響きが聴こえたので皆思わず足を止めてしまう。そして人々の叫び声が続けて聞こえた。またどこかが崩落したようだった。
エンは地響きがする方を見て、首を傾げながら言った。
「こんなに突然、一気に崩落するものなの?空洞は突然できた訳じゃないよね?」
それにはアルトが答える。
「どこかが崩落する度に地震が起きてる。その衝撃で連動してしまってるのかも…」
ラングは列車に乗りながら、思わず呟いてしまった。
「…レギュレート兵器にカタルシス国に大陸の崩落…問題が山積みだな」
列車に乗り政府ビルに着くと、ラングたちはすぐに最上階にある謁見の間に向かった。
謁見の間では、皇帝が焦った様子で皆を待ちわびていた。
ラングたちが入室すると皇帝は間髪入れずに言い放った。
「レギュレート兵器がカタルシス国に奪われました。それと同時に、カタルシス国がホープ帝国に宣戦布告をしてきました。レギュレート兵器にはコアが詰まれています…このままでは帝国も危険な上に、封印でジェイド地区のエネルギーを止めることも出来ません」
そこでラングは、皇帝に状況を伝えた。
「シャルとムジカがカタルシス国に兵器について交渉しに行っています。内部に知り合いが居たんです。もちろんその知り合いがカタルシス国の人間だと知らなかったんですが、話がつけば取り返せるかも…」
「そうですか、コアも無いことですし、後を追って下さい」
皇帝にそう告げられると、ラングたちは頷きすぐに外に出る。
シャルとムジカの後を追うために、カタルシス国の本部へ向かうのだ。