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葵「百里、立てるか?」
<星>の9人、そして葵と百里は、一番最初に居た聖堂の入口の広間に居る。
下の階から上がってきたのだ。
葵は、腰を抜かして立てなくなっていた百里を、ここまで抱き上げて来た。
百里「…立てる」
葵「そうか」
葵は百里を、優しく下に降ろす。百里は、しっかりとそこに立った。
百里には、葵に言いたいことが色々あった。だが…
葵「みんな、今までありがとう」
百里「…?」
葵は、<星>の9人と百里の顔を、一通り見回す。
葵「俺には、やらなければいけないことがある」
入口に向かって歩き出す。”トーキョーシティに戻る入口”に向かって。
葵は一度、ぴたりと止まった。
懐から、利九に貰った破壊コードのカードを取り出し、目の前にかざす。
葵「何故、俺1人の記憶だけが戻ったのか。何故、俺の手にこれが渡ったのか。今、トーキョーシティの悪夢を終わらせることが出来るのは、俺だけだ」
葵は皆の反応を待たぬまま、走り出した。
「葵!」
時間の感覚が無かったのだが、今は夜明けであった。
葵は、以前に自分が捕らえられていたダースの本社に向かって走り続ける。
「葵!!」
後ろから誰かに名前を呼ばれていることに気付き、止まって振り返る…
と、すぐに思い切り殴られた。
百里「私を置いていくな!!馬鹿野郎!!!」
百里だった。
葵「いてて…久々に殴られたな…」
頭を押さえていたが、顔は笑っていた。
葵「元気になったか?」
百里「なった」
百里には、言いたいことが沢山あった。だが今は…
百里「私も行って見届ける。さあ行くぞ」
葵「…いいのか?せっかく外に…」
百里「話は後だ!!ダースがそこら中に散らばっている今しか、ダースの本社に潜入出来るチャンスは無い。行くぞ」
葵は百里の言葉をきいて、また1つ覚悟を決める。
葵「ああ…行くぞ!!」
2人はすぐに走り出した。
途中。
葵は一軒の店の前で、足を止める。
百里「葵、どうした…ここは?」
今、街は電波塔の爆破と街を暴れ回った<星>のことで、厳戒態勢になっていた。住民は避難したようで誰も居ない。
葵は無人の店の中へ飛び込み、しばらくすると”何か”を持って出てくる。
長い、刃物だった。ここは競技用の真剣を扱った店だった。
百里「お前…いきなり大胆になったな」
葵「そうか?本社の中に敵が居ても、コレで脅せば今の体力でも退けられるだろうからな」
真剣を持った葵が、街を疾走する――――――――――
葵と百里は、ダースの本社ビルの正面玄関に居た。
正面を見張っていた警備員を、葵が真剣で脅す。
葵「そこをどけば、命だけは助けてやる…」
さすがに警備員、すぐには退かない。
だが、刃物を目の前にして動揺しているスキを、百里が武器で突いて敵の体を痺れさせた。
2人は警備員の横をすり抜け、本社内部に侵入する。
中にも警備員や黒スーツの男たちが居たが、全て先程と同じ方法で倒して行った。
百里「葵、どこへ向かうんだ?」
葵「よし、この辺なら見覚えがある…こっちだ百里」
葵と百里が洗脳ルームへ連れて行かれ、催眠ガスで眠らされた後。
葵は、別の部屋へ連れてかれていた。
それは洗脳を解いてしまった百里と隔離するためだったのだが、葵は監禁されたその部屋に、このビルの間取り図があることを覚えていた。
葵「ここだ…」
2人が入った狭い部屋の壁には、大きな間取り図があった。
百里「そういうことか…!ここでデータを管理している部屋を探せば…」
葵「ああ。…あった、ここだ!」
そこは、ちょうどこのフロアにあるらしい。この部屋より、9部屋先にある奥の方。
2人は頷き合ってすぐに部屋を出る。
データを管理する部屋の前には、黒衣の男が1人居た。
男「お前たちは…まさか、このテロの主犯者か!?」
確かにテロといえばテロか。
もう普通に戦う力は、2人には残されていない。だがこっちには…
百里「私たちが恐ろしいのか。お前たちの方が、よっぽど恐ろしいことをしているぞ…」
葵の真剣と、百里による武器で、相手を一瞬にして行動不能にする。
2人はすぐに部屋に入った。
部屋の両側には、沢山のファイルが収納されている。何の資料なのだろう。
そして、正面には大きなモニターと端末があった。
葵は端末に手をかけ、内容を調べ始める。
葵「…洗脳用電波を流す時刻…ダースと繋がっている施設の数…12人の黒衣を着た代表、従える黒スーツの人間たちの組織図。
重要なデータがかなり入ってるな。頼むからここにあってくれ…頼む…」
百里も、画面から目が離せなかった。
すると…葵がついに。
葵「あった!”トーキョーシティの正しい歴史、クローン兵育成計画管理データ”…これだ…いや、これだけじゃない。
”クローン地下研究施設の全管理・研究蓄積データ”…これらを消せば、計画の全てが泡になって消える」
葵はすぐに、破壊コードのカードを端末に差し込もうとする。
しかし、その手はピタリと止まった。
葵「百里。クローン計画の段階と詳しいデータについて、調べてみるか?」
百里「…」
2人は見つめ合う。
百里はしばらくした後…ゆっくりと、口を開いた。
→9.陸