8.花:終わりと始まり:裏











ユリ。俺だよ、チサトだよ。
お前のことも探してあげないとなあ
随分会ってないような気がするよ

俺が必ず、探し出してみせるからな
お前はしっかりしてるけど、融通がきかなくて頑固なところがあるし
俺が支えてあげなくちゃ

待ってろ、必ず迎えに行くから。





必ず





必ず





必ず迎えに行く






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日時:不明
場所:トーキョーシティ
自分:


 厳かな雰囲気の聖堂の通路を、百里と葵はひたすら進む。
 2人の足音が、不気味にこだました。
 しばらくは足音は2人分だけだったが、かすかに別の足音が聴こえてきた。
 太一たちだろうか?
 違う。2人が、何のために下に落とされたのか…
??「よう。久々だな」
 2人の目の前に現れたのは、ダースの師走と黒スーツの男たちだった。
師走「<星>がここに来たということは…奴らの狙いは、トーキョーシティからの脱出だったという訳だな。
奴らは、魔法のような物を使うからどうやっても始末出来ないんだ…」
 魔法のようなもの。太一や五月、七々が目を光らせて使っていた、アレのことだろう。
師走「だからせめて、お前たち2人だけでも始末してやる」
葵「させるか…」
 百里と葵は武器を構えた。
 師走は黒スーツの男たち10数人をけしかけ、奥へと引っ込む。2人は囲まれた。
葵「百里、この人数じゃお前とその武器なら、大したこと無いだろ」
百里「…そうだな」
 百里は、葵との会話が終わるのとほぼ同時に踏み出す。
 例の差し棒状の武器を敵にピシピシと当てると、敵は体を痺れさせてうずくまった。
 普通だったら、いくら百里が強くても10人相手では分が悪い。だからこそ、こういう状況のためのこの武器なのである。
 百里が取り逃がした敵は、敵が百里に気を取られているスキに背後から葵が気絶させた。
葵「よし、行くぞ」
 敵が起きないうちに、2人は走り出した。


 しばらく進むと、また同じように小部屋に着く。
 すると、またぞろぞろと黒スーツの男たちが現れた。
 人数は先程と同じくらいなので2人の敵では無く、また同じように2人は奴らを倒して先に進んだ。


 通路に出てしばらく進むと、また黒スーツの男たちが現れる。
葵「…百里」
百里「ああ」
 師走の作戦が何となく分かってきた。
百里「私たちを消耗させ、体力が無くなった所を刺すつもりだろう」
 百里が再び、武器を構えて一歩踏み出した瞬間…

 ドカッ。

 葵が、敵を1人倒した。
葵「…?もしかして行けるかもしれない…」
 背後からの攻撃に気付き、武器で受け止め弾き返すと、そのまま一発叩き込んでもう1人倒した。
百里「…お前…」
葵「このままじゃ、お前1人だけの体力が無くなっちまうだろ。お前ほどの力は無いけど、俺も出来るだけ敵を倒すようにする」
 2人はそうして、終わりの見えない戦いを、いつもまでも続けた。


 どれ程時間が経っただろうか。
 2人は、大きな広間に辿り着いた。
 上の階と、吹き抜けで繋がっている広間だった。2人は下の階から上を眺める。
葵「落ちてきたんだから、上に上がれば皆と再会出来るんじゃないか?」
 2人は一歩踏み出す…

 あっという間だった。
 2人は、黒スーツの男たちに囲まれていた。
 ざっと、30人は居た。
百里「…ここでとどめを刺すつもりだな」
葵「つまり、ここを抜ければもう大丈夫だ…!」
 2人は、消耗し切ってしまった体力を無理矢理振り絞って、戦う。
 しばらく戦い続けた。
 徐々に…百里の体から、戦う力が失われていく。
葵「百里、大丈夫か!?」
百里「…」
 これはきっと、体力だけの問題では無い。
 百里の武器によって体を痺れさせている敵をかいくぐり、2人は広間の角まで移動した。
葵「百里」
 2人は少しだけ、体を休めながら話す。
葵「言いたいことがあるなら、今言え。聞いてやるから」
百里「…」
 百里はしばらく天井を見つめた後、深く深呼吸をした。
 百里は、口を開く。
百里「…私たちは今、何のために戦っているのだろう…」
 ぽつり、ぽつりと本音が漏れる。
百里「自分が本物なのか、クローンなのか、今は分からない。だけど…それが…苦しい…
真実の一歩手前で…拷問を受けてるみたいに…知ったほうがいいのか…知らない方がいいのか…知らない方が幸せなのか…体が動かない」
 敵の人数は多く、すぐに2人は追い付かれる。
葵「…百里、お前」
百里「私は今、何を考えればいいのか分からない。自分が自分だったから堂々と生きてこれた…
もう考えすぎて自分を定義しているものが何なのか分からなくなった。どこにも行けない…消えてなくなってしまいたい」
葵「百里」
百里「もう何も考えたくない、苦しい、苦しい、消えたい」
葵「百里!!」
 本当に動かなくなった百里を、葵は安全な場所へと無理矢理引っ張り出す。
葵「百里、俺の声を聴いてくれ…!」
百里「…」
 百里にはもう、葵の声は届かない。
 敵が襲いかかってくる。葵は、戦う力を失った百里を庇いながら戦った。
葵「百里、聴け。よく聴け」
百里「…」
葵「お前…!」
百里「私を置いて逃げろ葵。もう私は…いいから」
葵「何がいいんだ!!何がいけないんだよ!!」
 百里はあまりにも無心になりすぎて、気付かなかった。
 葵が、泣きそうな顔をしていることに…
百里「消 え た い」
葵「百里」
 消 え …

葵「クローンの何がいけないんだよ!!!!!お前はお前だろ!!!!!!」

 自分は
葵「もし俺がクローンだったとする!!」
 葵は目の前に居る敵を、3人ほど一瞬で倒した。
葵「じゃあ…この気持ちは何だ?大切な人のことを考えると、胸が熱い…大切な人のことを思い浮かべろ、
家族、友達、自分の中に存在している誰か、どうだ??胸が熱くて、俺は仕方ないよ…そうだろ、お前はどうなんだ?」
 百里の元へ再び歩いていき、肩を、ぐっと掴んだ。
葵「お前の大切な人は?お前の想い出は?この胸に湧き上がる喜びも、悲しみも、
全部…俺だけのものだ…この熱い気持ちが、偽者な訳あるか!!!」
 百里は、ガタガタ震えながら涙を流す。
葵「お前はどうなんだよ百里…お前の心はどこにあるんだ…今お前が思い浮かべているものは全部本物で、お前だけのものだろ…違うのか??」
 葵は敵の気配に気付き、手をぱっと放す。葵は敵と対峙した。
葵「お前らジャマだ…どけ!!!」
 敵を次々となぎ倒す。

 なぜ…葵が突然強くなったのか…

 彼には元々、戦いの素質があった。
 しかし、優柔不断な性格が災いし、真の実力を発揮出来ずにいたのだ。
 だが今は…
葵「次!早くかかって来いよ…」
 百里の武器による体の痺れ、というハンデを持つ敵なら、何十人でかかろうと今の葵の敵では無い。
 百里は、ふぅ…と息をつくと、その場に座り込む。今は、違う意味で体が動かなかった。
 そんな百里を、葵はしっかり守りながら戦った。

 広間の吹き抜けの上の階。
 知らぬうちに、<星>の9人が葵と百里の様子を伺っている。
 どのあたりから、彼らが見ていたのかは不明だが…
太一「アイツ、すげーじゃん」
八重「うん、すごいね!」
 9人はすぐに下の階へ下りる。
 戦いの終わりは、すぐそこだった。