8.花





数日後。

千里「イシナギ、忙しそうだな」
 ボスの広間に入りながら、千里は言った。
石投「おー千里、ちょっと久々…に感じるな、よく一緒に居たしな」
 バタバタと書類を運びながら言った。
 もちろん、爆弾の処理のこともあるが、それと共に…
石投「地下室にばかり行っていたせいで仕事がたまっててな。笑えるだろ」
千里「笑えないよ…」
 といいつつも笑う。
 石投は突然、書類をテーブルの上にドンと置いて千里の方を向いた。
石投「…いつから気付いてた?」
 ニヤケ顔で言った。
 何のことなのかは…千里にはもう分かっている。
千里「兄貴のことは、イシナギに自分の目で見た方がいいって言われた時だよ。わざと分かるように言ったくせに」
 千里も同じく、ニヤケ顔で言った。
石投「クク…お前なら乗り越えられると信じていたからな」
千里「ふーん」

 しばらくの沈黙。

千里「…いつから?」
 沈黙を破り、石投と同じような疑問を返した。
 そして、もちろん、石投にも何のことだかは分かっている。
石投「いつから、お前なら乗り越えられると信じれるほど、お前に期待していたのかは…初めてお前を見た時からだ」
千里「本当かなあ」
 千里は再び笑った。
千里「俺、ドリーム島の外に出て、<E-ナンバーズ>を探しに行くよ」
 石投は、再び書類を手に取り仕事に戻る。
石投「そーかい。なら、造船区にある政府の船を使いな。マーキング…そうだな、バリアをすり抜けられる船だ。
もう手配してあるから行けば分かるぞ」
 用意周到。
千里「…いつから…」
 千里はまた石投に驚かされ、同じ疑問を口にしてしまう。
石投「そうだ千里、俺は見送りに付き添えないぜ、これ以上留守にしたらボスとしての面目の問題が生じるからな」
千里「分かった。色々ありがとう…必ず<E-ナンバーズ>を連れて帰ってくるよ。ユリも…俺、今は、この島に居ないんじゃないかって気がしてる。
勘だけどさ…そんな気がするんだ…俺が探してあげて、連れてきてドリーム島を紹介するかな」
石投「おー気を付けてな」
 千里は、入口に向かいながら、石投に背を向けて言った。
千里「イシナギ…俺は、あんたが期待したりとか、零に光みたいだって言われたりとかしたけど、全然そんなんじゃないよ。
怖がりで情けなくて…そう、どんくさい人間だよ」
 石投は再び書類をテーブルに置き、腕を組んで笑った。
石投「そこがいいんだよ。そんなお前なのに奇跡ばっか起こすじゃねーかよ」
 千里は、プッと笑うと、右手をひらひらと上げて石投にあいさつをし、広間を出て行った。
石投「千里、千里、千里…ククク」
 大声で1人ごとを言い出す。
石投「楽しみだねぇ、これから先、お前が何をするのか、何が起こるのか。未来のことは誰にも分からんが、千里が居れば何とかなるだろう」
 千里には聴こえたのだろうか。
 千里は通路を歩きながら、照れくさそうに「あはは」と笑っていた。


分かってるよ、イシナギ。
俺の周りで、奇跡ばかり起こった。それは俺が意図して起こしたわけじゃないけど、
その奇跡が未来への期待感へ繋がるのも不思議じゃない。
でも、それだけじゃダメなんだよな。
そう、折角自分が意図してない奇跡が起きて、様々な可能性が示されたのだから、


後は、俺自身がどうするか。


俺は太陽にはなれないけど、太陽の光が様々な景色を通って陸に届くように
雲に穴を開ける

そんな存在に俺はなりたい











→9.陸