7.幻





 レジスタンスの拘束を終えて後々から来たボスの部下と、石投は爆弾の前で何か話していた。今後のことだろう。
 千里は、それを満足そうに眺めている零に話しかけた。
千里「なあ…」
零「なんだい?」
 千里は、口元に笑みを浮かべる。
千里「<E-ナンバーズ>、俺が探してきてあげようか?」
零「…!?」
 零の驚き方は相当だった。肩がピクンと動くぐらい。
千里「だって零はドリーム島を動けないんだろ?俺は部外者だからいつでも動けるし」
零「…」
千里「いい案じゃない?」
 零はしばらく考える素振りを見せる。そして、千里に握手を求めた。
零「よろしく頼む」
 もちろん千里は、すぐに握手に応じた。
零「君は、まるでドリーム島に降りそそいだ光みたいだ。雲のスキマから太陽の光が久々に見えたみたいに。
…君は、外の国から来たんだってね。どうして君が、ドリーム島のためにここまで…」
 今度は千里が、考える素振りを見せる。
千里「兄貴を探しながら、その意味を考えながら、ドリーム島を見てきて、色々な人に出会ったら、救いたくなった。
…って言いたいんだけど…もう1つ、やっと自覚し始めたことがあってさ」
零「何だい?」
 千里は、右手でおでこを押さえて、声を出して笑った。
千里「あっはっは!ナイショ。恥ずかしいから」
零「…ふふ。そう」
 零は特に、その内容を聞き出したりはしなかった。
石投「よしみんな、話がまとまったから帰るぞ!」
 爆弾はとりあえずそのままにして、石投と部下たちは引き上げる準備をしていた。
石投「後は俺たち政府に任せてくれ。千里と冬華の仕事はここまで。お疲れさん」
千里「冬華、帰ろう」
冬華「はい」
 2人は、微笑み合った。


 帰りの列車の車内。
 石投は再び、部下たちと話し合いをしていた。
 零は零で、1人で窓の外を見て物思いにふけっている。
 皆、バタバタしていたのと地下に居たので、時間の感覚が無かったのだが、今は夜明けであった。
 そして、千里と冬華は…
千里「ねえ冬華。俺、聞きたいことがあるんだけど」
冬華「何ですか?」
 まだ薄暗い外をちらりと見てから、冬華を見た。
千里「”冬華”って通り名なんだよな。本名聞いてもいい?」
冬華「…本名ですか。久々に聞かれました」
 冬華は、深呼吸をしてから千里を見て、微笑んだ。
冬華「私の本名は、ハツナと言います。初名草から取ったそうです」
 千里は、うんうんと頷く。
千里「いい名前だなぁ」
冬華「でも、今まで通り”冬華”って呼んで下さいね。こちらの名前は、蓮華草をイメージしています。この通り名も、気に入ってるんです」
千里「分かったよ、冬華」
 しかし、何かを思いついたような表情をする。
千里「1回だけ呼ばせて!」
 冬華の返事を待たずして、
千里「ハツナ」
 と、1回だけ呼んだ。
冬華「…はい」
 冬華も、微笑みながらそれに答えた。
 その時。ちょうど朝日が昇ってきた。
 しかし…
冬華「…曇っててよく見えないですね」
千里「もう何だよ!空気読めなすぎる!!」
 千里が大声でそう叫んだので、石投や部下、零を含め、全員が笑った。
石投「どんくさい千里の心模様の表れだろう」
千里「ハァ!?」
冬華「まあまあ」
 石投の元へ向かおうとする千里を、冬華が諌める。
千里「止めるなって、冬華!」
 千里はもう、冬華を本名では呼ばなかった。


今は、とてもとても、心が穏やかだった。
でも、そろそろ向き合わなければいけないんだよな。
ビルに帰ったら、その時には…
とりあえず、ゆっくり休んでからかな。疲れたし。

冬華とも、ちゃんと話さないと。
俺たち2人のことだし。


 何のことだろうか。
 それは、過去に石投が言った言葉にあった。

 それをきいてからだ。胸がむしゃくしゃして仕方がなくなったのは。
 千里の中には、とある思いがあった。
 その思いを自覚しないために、自分の行動理由を…
 そうすることにより、千里の心は何とか保たれたのだった。

そろそろ前に進まなくちゃね。


 ビルに帰って来た皆は、それぞれの場所でゆっくりと眠った。
 そして体力が回復した頃、千里は石投の部屋へ向かう。
 石投に、今から行く場所の行き方をきいた。
 石投は、
石投「お前たちには俺がついてるぜ」
 と、最後に言った。

 次は、冬華だ。
 今から2人で向かわなければいけない場所を冬華に話すと、冬華はぐっと手を握りしめ、目を閉じて、
冬華「…分かりました。行きましょう」
 と言った。

 今は昼。2人は、列車にゆられて住居区の郊外へ向かった。
 2人は手を繋いでいた。
 別に、中むつましい理由ではなかった。
 こうしていないと、耐えられそうになかったから…










→8.花