7.幻:自分の中にだけ











自分の心を見つめてみたい


 千里と冬華と石投の3人は、レジスタンスの言う通り、BARの看板の下にあるマンホールから地下に入った。
 薄暗い通路だが、風がよく吹き抜けている。
千里「一本道だから、風が抜けているってことかな?」
石投「ご名答」
 3人は、真っ直ぐ奥に続く道を進んだ。


 どんどん奥に入っていく。
 入っていくたび…
冬華「…綺麗ですね」
 何かの鉱物が、足下でキラキラと輝いていた。
石投「おお、これは俺も初めてみたぞ。ドリーム島にこんな場所があったなんてな」
千里「ホント、綺麗だな…」
 奥へと進んでいくにつれ、鉱物の量は増えていった。


石投「しっ、誰か居るぞ」
 一本道なので、隠れることは出来ない。
??「誰だ!!」
 10人程の人間が待ち構えていた。この先に爆弾があるのだとしたら、彼らはきっとレジスタンスだろう。
冬華「この中にボスは居るんですかね…?」
千里「いや…待ち構えていたから、ボスの行動をジャマさせないための見張りじゃないかな?」
 双方は一斉に戦闘体勢に入った。
 3対10。だが、今回もこちらが有利だった。3人は強い。そして最近は、それに加えチームワークも良くなり、よりいっそう強さを増していた。
 石投は3人で戦う度に、千里と冬華の戦い方をよく観察していた。
 冬華は強い。さすが、傭兵として戦い慣れしているだけはある。あの重機は扱いの難しいものだろう。
 そして…
 数々の戦いで最も活躍していたのは、実は千里だった。
 千里の武器は、攻撃時に敵の体を痺れさせる差し棒だが、彼はそれの機能にほどんど頼っていない。
 差し棒で敵を殴るだけでなく、状況によっては武器の柄の部分だけで敵を突いたり、相手の腕を掴んで投げ飛ばしたり、臨機応変に戦い敵を上手になぎ倒していた。
 今回は敵も中々強かったが…
千里「…終わったな。レジスタンスが、あんまり強くなくて助かったよな」
石投「いや…結構強いんだぞ。お前、自分が強すぎて気付いてないだけだろ」
千里「??」
 千里は涼しい顔をして、首を捻った。
千里「そうなのか?俺、訓練や模擬練習はよくやってたけど、実戦はこの島に来て初めてやったんだよ。結構戦えるものなんだな」
石投「なっ…実戦したことなかったのか!?マジかよ…ククク」
 嬉しそうに笑う。
冬華「本当に凄いですね…ふふふ」
千里「え、何何?」
 千里は、2人が嬉しそうにしている意味が理解できないで居た。悪い気はしなかったが。

俺の決断はきっと、間違ってないと思うんだ。
ただ…
ちょっと違うんだろうな。もっと
いいかげん ちゃんと考えないと




 レジスタンスは石投の部下に任せ、3人は強く風が吹いている奥へと向かった。
 視界が一気に開ける。
千里「…凄い…」
 そこには、広い広い空間があった。
 そこは、この世の物とは思えないくらい、美しい、美しい鍾乳洞だった。
 3人は呆気に取られながら、周りを見渡してその美しい景観に見とれた。
 見渡してみると…様々な物が目に飛び込んでくる。
 奥の方には、その景観に全くそぐわない、大きな爆弾のような物があった。
 そして中央には、1つの石碑、そして…

…零…

 石碑の前で石碑を見ていたのは、
零「…みんな、どうしてここが?」
 振り返り、驚いた表情で零はそう言った。
冬華「…私は、あなたを疑っていません」
 表情を変えずに言った。
 表情を変えないように、勤めていたから。
石投「まだ疑ってないぜ。まずは話をきいてから、だからな」
零「…」
 零はそれで、全てを悟ったようだった。
零「みんな、これを見て」
 しかし零は、まだその話に触れない。再び石碑を見た。
 3人は、落ち着いて零に近づき、零と一緒に石碑を覗き込む。


―――――夢の名を持つ者、ここに眠る。


千里「夢の名を持つ者…?」
 零は、石碑の字の書かれている所を指で撫でた。
零「ここに、この島を開拓した人物が眠っているみたいだね。これは僕も知らなかったよ…
こんな神聖な場所に、あんな物を、よく設置出来たものだよね」
 4人は、場違いの大きな爆弾を見た。
 そして零は真剣な表情で、3人の方に向き直る。
零「皆も分かってるんだろう。そう、…僕が”ゼロ”だ」
 3人は表情を変えない。
 それをきいても、3人は零を疑わなかった。
零「…ありがとう」
 そしてそれは、零にも伝わった。
零「…それは、ある日…」
 零は語りだした。



 3ヶ月ほど前。
 零は、運び込まれた大ケガで重体だった患者を治療した。
 零たった1人で、患者は数週間で完治したのだった。
 それを、患者だった彼の”部下”たちは大いに喜んだ。
 彼らはレジスタンスで、患者はボスだった。
 レジスタンスたちは、零を慕う。
 零としては、息吹を崇拝するレジスタンスに慕われるのは複雑な気持ちだった。

 ある日。
 レジスタンスたちは、零に「ドリーム島爆破計画」を遂行中だという話をした。
 当然、零にとっては許せない話であったが。
 それと時を同じくして、レジスタンスのボスが事故で帰らぬ人となる。
 零は、咄嗟にこう言った。

 …僕を、新たなボスにする気はないか?



零「利用させてもらったよ、自分が慕われている事実を。びっくりするほど、心苦しくなかった。
そして、自分がこんなことを言うなんてことも、思いもしなかったよ」



 零は、3ヶ月前に<E-ナンバーズ>の9人を引き止めてしまった爆弾が、どこかに存在していること自体に激しくイライラするようになった。
 これは絶好の機会だ。

 爆弾の場所を自分が突きとめて、この世から消してやる…



石投「おいおい、ここを突きとめて、その後どうやって爆弾を消すつもりだったんだよ?」
 笑いながら言った。
 千里も冬華も笑っていた。
 零は”ゼロ”だったが、ドリーム島の爆破が目的ではなかったから。
 むしろ逆に…
千里「すごい行動力だな。<E-ナンバーズ>がそんなに大事か」
零「…」
 零は、地面に落ちていた美しい鉱物を手に取った。
零「…自分でも、自分にびっくりしてるよ。自分にこんな行動をさせてしまうなんてね…
でも、何だか、彼らと過ごしていた日々…夢でも見てたんじゃないかと最近思ってしまうんだ。
だって、周りを見渡したって、彼らはどこにも居ないんだよ…居ないんだよ、どこにも。
確かに、確かにこの島に居たはずなのに」
 冬華が、一歩前に出る。
冬華「零さんが信じてれば戻ってくると思います。あなたが彼らの指標だと、私は思います」
 零はしゃがみ込み、鉱物を地面にそっと戻した。
零「こんなに美しい場所、僕も初めて見た…でも彼らは、この場所どころか、ドリーム島のこともまだよく知らないんだ。それなのにどうして。
…僕が指標ね。そうか…」
 立ち上がり、3人の方に向き直る。
零「君たちがここに辿り着けたことで、ドリーム島は再び爆破から守られた。ありがとう。僕は、医療所に戻るよ。僕はもう、あの場所を動かない」
 その時、零の言葉を静かに聴いていた石投が、突然零を指差す。
石投「…気に入った」
 2人の視線が交差した。
石投「お前、政府の医者にならないか?もちろん今まで通りの場所で医療所をやっていてもかまわん。こちらが送り迎えをするように手配をしよう」
 零は苦笑しながら、首を横に振る。
零「私情で医療所を、何の前触れもなく空けるような僕なんか、やめた方がいいよ。僕は医者には向いていないと思う」
石投「そーかい」
 まるで、その答えが返ってくるのが分かっていたような口ぶりだった。
石投「それでも、あんたを頼りにしてくる奴は沢山居るんだろうけどな」
 零は再び首を横に振った。これは謙遜だろう。
 そして。
零「この爆弾、どうしようか…」
石投「専門家を呼んで、解体する方法を考えるぜ。それで万事解決」
零「レジスタンスは、アジトに居るだけじゃない。そこら中に散らばっているんだよ」
石投「レジスタンスが何かしたら、また俺が成敗してやるぜ。何度現れたって、何度でもやっつけてやろう」
零「…」
 零は、心の底から笑った。
零「安心だね。あなたがドリーム島のボスをやっていれば、もう何の心配もない」
石投「ああ、俺もそう思うぜ♪」
 自信満々に答えた。