6.空





石投「やっぱ…さすがに、これは喋らないか…」
 石投は苦戦していた。
 それもそうだろう。レジスタンスたちにとって、ドリーム島の爆破は最終目的なのだ。
千里「…どうだ…?」
石投「いやそれが、さっぱり」
 頭を掻いた。
石投「こいつらの、兄貴への信仰心は凄い。拷問したって話さないかもしれん」
スプリング「…兄貴?」
 レジスタンスの1人が反応した。
ウィンター「お前、息吹様の弟なのか?全く似てないな」
サマー「息吹様は、いつも凛としていて、真っ直ぐ前を見つめていた…」
 石投の肩がピクッと動く。
千里「…そうなのか?見る人によって印象って変わるもんだなぁ…」
石投「…」
 石投はしばらく、じっと下を見て、顔を上げた。
石投「違わないさ」
 レジスタンスの方を向いた。
 石投は、ドリーム島のボスとしてここに立った。
石投「俺は…兄貴の計画なんざ、ろくでもないと思っていたさ。だが…奴は確かに、
目標へ向かって迷い無く突き進んでいたねぇ…そこに惹かれる奴が居るっていうのも、正直、納得いくよ。
それが…あんな計画じゃなく、別の所に向かってくれれば良かったんだが…それだけが心残りかな。
俺も、奴の意思を曲げない所は見習いたいね。その気持ちだけは…お前らレジスタンスと同じさ。
だからこそ、ドリーム島のボスとして、爆破だけは必ず止めてみせるぜ。この島を守ることが、俺の強い意志だからな」
 その場に居る、全員が押し黙った。
 最初に口を開いたのは…
オータム「…ここから上りの列車に乗って、3つめの駅だ。BARの看板の下にあるマンホール。そこから1本道だぜ」
 他のレジスタンスたちも、それを黙って聴いていた。
石投「そうか。そんな所に地下があったとは…俺にもまだ知らないことは多いな」
オータム「早くしないと”ゼロ”が爆破しちまうぞ」
 なぜ急に協力的になったのか。彼らは、最終目的であるドリーム島の爆破を容易く諦めた訳ではない。
 彼らが息吹を崇拝しているからこそ、石投の言った内容を否定することが出来なかった。
石投「すぐに出るぞ2人とも…レジスタンス共、感謝するぞ!!」
 そう言って牢に向かいウィンクをすると、すぐに走り出す。千里と冬華も続いた。
千里「自分の兄貴のこと、そんな風に思ってたんだな」
石投「何度も言うが、奴のやったことを許した訳じゃねーぜ。あいつがやっていたのは人体実験だからな」
千里「…うん」
 石投は走りながら、待機中の部下にアレコレ指示を出した。例の時間差スタイルだろうか。
 3人は、列車へと急いだ。


 夕方。3人は、走る列車の中に居る。ボスの権限で、緊急ですぐに列車が車庫から出てきたのだった。
石投「さあ、着くまで十何分かあるからゆっくり休もうぜ~」
 石投は慌てる様子もなく、いつも通りだった。
 千里も、何となく話を繋ぐ。
千里「あのサマーって奴、おしゃべりだったよなー、なあ冬華」
 冬華は、窓から夕暮れの景色を眺めていた。
冬華「…サマー…夏…昔、夏夜といっしょに、ここで夕日を眺めてたっけ…」
千里「…冬華?」
 冬華の目は、虚ろだった。
冬華「夏夜は物知りで、色んなことを私に話して教えてくれたなぁ。ハルは逆に無口で、不思議な人だった」
石投「そうかそうか」
冬華「ねえ、リーダー」
 一瞬、空気が止まった。
 リーダーという言葉を…
 石投に対して発したからだった。
冬華「あ…」
 我に返る。
冬華「ごめんなさい」
 石投は笑顔のままだった。
冬華「…ごめんなさい…」
石投「何だ、俺が誰かに似てるか?」
冬華「…」
 千里も石投も、何となく、冬華が誰と石投を間違えたのかを察した。本人のことは知らないが、流れで分かった。
千里「気にするなよ冬華。間違えることだってあるよ」
冬華「…私…いつまで過去に縛られているのかしら」

 千里は驚く。
 冬華が、傭兵の仲間のことを”過去”と言ったからだ。



…冬華…まさか…


まさか。感じているの。


君も。




石投「いいさ、俺を誰かと間違えたって、誰かの影を重ねたって。それで冬華が楽になれるんだったら、俺はかまわんよ」
冬華「…ごめんなさい…」
石投「…似てるのか?」
冬華「…はい…」
 石投は、千里と冬華の肩をポンと叩いた。
石投「気付いたら、3人で行動することばっかだよな最近。俺らはもう、仲間なんだろうな。何かあったら、お互いのことを頼りにしていこうぜ」
 千里も冬華も、石投を見て涙ぐんだ。
石投「何、泣きそうな顔してんだよ。ほら、そろそろ着くぞ」
 2人は、静かに頷く。
 そして…
石投「あ、何だ!三つ編みがほどけそうじゃねーか!鏡、鏡」
 そう言うと、窓に写る自分を見ながら三つ編みを直し始めた。
冬華「…ふふ…」
千里「どうした?」
 2人は、糸が切れたように笑い合う。
冬華「やっぱり似てません。リーダーは、身だしなみに無頓着でしたもん。料理だって、してるところを見たことありませんしね」
千里「そっか」
 髪を直すと2人が笑っていたので、石投は不思議がった。
 それを見て、2人は再び笑う。

 列車は、目的の駅にたどり着いた。
 そこには何があって、誰が居るのだろう。
 今は、何も考えたくなかった。










→7.幻