俺には分かるよ…
このドリーム島、穴が空いているんだ。
欠けているんだ、重要な何かが。
それが何なのかも、俺には分かる。
そして、俺が何のために…ここに来ることになったのかも…なあ…そうだろ
千里と石投は、ビルの外に向かって走った。”あの場所”へ向かうために。
出口から一歩外へ出た時、ちょうど冬華と待ち合わせる。
千里「…アレッ…冬華、しばらく帰ってこないんじゃなかったのか?」
冬華「いえ…医療所に行ったら、零さんが居なかったから…」
千里と石投は顔を見合わせた。
千里「冬華、俺たちは、零と会って話をしなきゃいけないんだ」
冬華「何かあったんですか?」
冬華はまだ何も知らない。
石投「レジスタンスの計画はドリーム島の爆破。そして、それを指揮している可能性があるのが、レジスタンスのボス…”医者”の”ゼロ”だそうだ」
冬華「!??」
冬華の顔色が変わった。
驚きではない。
怒りだ。
冬華「どういうこと」
石投の胸ぐらを、思い切り掴んむ。
冬華「零さんを疑っているんですか」
怒りの矛先が分かった。
冬華「<E-ナンバーズ>が命をかけて守ったドリーム島を、何で<E-ナンバーズ>を大切に想っている零さんが爆破するんですか!?
そんな訳ないじゃない!!!」
千里「冬華、落ち着いて」
肩で息をしている冬華をなだめる。
千里「疑いたくないからこそ、零と話をして確認しなきゃいけないんだ。きっと何かの間違いだろうからさ」
冬華は、ほんの少しだけ平穏を取り戻した。
冬華「…ごめんなさい」
石投の胸ぐらを掴んでいた手を、そっと放す。石投の目を見て涙ぐんだ。
冬華「…石投さん…ごめんなさい」
石投「いや、それはこっちのセリフさ。冬華の気も知らねーで」
話は落ち着いたようだが、何も解決していない。
千里「…どうする?零、居ないんだっけ」
石投「居ないとしても、探す必要は無い」
冬華をじっと見つめた。
石投「ドリーム島、島一つを破壊できる物に、お前は心当たり無いか?」
考えを巡らせる。冬華は、はっとした。
冬華「…半年前…ドリーム島は、自爆装置によって消滅しそうだった…というのは、聞いたことがあります」
石投「そう。それだ」
石投は再び、ビルの入り口の方へ体を向ける。
石投「システム自体は封印したが、どこかに設置してある爆弾自体を撤去した訳ではない」
千里「…レジスタンスたちは、それを発動させるつもりなのか!?」
冬華「息吹の計画と同じ…息吹の理想のため…?」
石投は、体の半分をビルの入口に入れたまま言った。
石投「その場所を、レジスタンスたちから聞いてくる。意地でも吐かせてやる…!」
そして、走ってビルの入口に消えていった。
千里は、冬華の正面に回って、肩をしっかり掴んだ。
千里「冬華、零を探す必要はない。今からイシナギが必ず爆弾のある場所を突きとめて、それを3人で撤去に向かえばいいんだ。
そこに零は居ないよ。それで話は全て解決するんだ」
冬華は、ようやく笑った。
冬華「…はい。千里、ありがとう。いつも本当にありがとう」
…いつも?
冬華は千里の存在にかなり励まされているが、千里自身に自覚は無かった。
冬華「あの…私たちは、どうします?」
千里「…うーん…イシナギが爆弾のある場所を吐かせるまで、広間に戻って待ってるか」
2人は、ボスの部屋である広間に戻ることにした。
冬華「あの、千里」
広間の窓から、2人は何となくドリーム島の景色を見ている。
冬華「千里が住んでいた場所のこと、聞きそびれてたから…」
そういえば、そうであった。
千里「そうだよな、兄貴の住んでる場所知りたいもんな」
冬華「それもですけど…千里がここに来るきっかけのことも知りたいです」
それをきいた千里は、少しだけ照れる。
千里「…期待外れだったらごめん。話すね。まず…」
千里が住んでいた西の方の大陸には、街がいくつもあった。
昔は戦争ばかりだったらしいが、今は平穏を保っている。
街はかなり栄えている。特に、千里とイナリ(千秋)が住んでいた街にはビルが林立し、何一つ不自由することは無かった。
しかし…何一つ不自由することがない=退屈。
千里は、日々の生活に生きがいを見い出すことが出来ないでいた。
その時だった。イナリ(千秋)が、”東の海に、ドリームを探しに旅に出ます”と書き置きを残して失踪したのは。
両親に話をきくと、
「これは運命なのかもしれない」
と返ってきた。
どういうことなのか分からない。
あとは、
「業<カルマ>と夢<ドリーム>の約束だから仕方がないな」
日がたつにつれ、気になって仕方が無かった。
業<カルマ>とは、大陸を象徴する重要な単語であった。
では、夢<ドリーム>とは…?
千里は、兄が夢を掴むために旅に出たのではないか?と考えた。
業<カルマ>から生まれた人間が、夢<ドリーム>を掴もうとしている。
自分も旅に出たい!
そう言ってきかなかった千里を、双子のユリは放っておけなかった。
そして2人は、東の海へ向かって旅に出たのであった。
千里「…この島の名前をきいて、ピンと来たよ。兄貴は夢を掴もうとしていたんじゃなくて、この島のことを知っていたんじゃないか?
業<カルマ>の大陸と夢<ドリーム>島には、何か大切な関係があるんじゃないかって。そして俺は」
首をぶんぶんと横に振って、目を強くつむった。
千里「俺は…やらなくちゃいけないことが出来たんだ。俺は…ドリーム島を救わなくちゃいけないんだ。”兄貴の変わりに”」
冬華「…どういうことですか…?」
俺はドリーム島が気になる
千里は顔を上げた。
千里「ごめん、今はうまく説明できない。分かるんだ…俺には。俺だから分かるんだ。
第三者の俺だから、この島のことを客観的に見ることが出来る。この島…少しずつ良くなってるんだろ?
それは何となく感じたよ。でも、それだけじゃ足りない、足りないんだ」
分かる 分かる 分かるんだ…!!!
冬華をじっと見つめ、絞り出すように言った。
だって俺は この島の
千里「1ヶ所、ぽっかり穴が空いてるんだよ…そう…<E-ナンバーズ>の存在が…!!」
冬華「…!」
冬華は、手で口元を覆う。
千里「みんなが心のどこかで感じてるだろ。<E-ナンバーズ>の存在が足りないって。
みんなが待ってるんだろ、<E-ナンバーズ>の帰りを。それはそうさ。
この島が今ここにあるのは、彼らが命をかけてこの島を守ったからなんだから…
だとしたら、この島は<E-ナンバーズ>の命そのもの。<E-ナンバーズ>の命は、この島のそのもの。
この島は、<E-ナンバーズ>無しでは完成されないんだ、きっとそうだ…」
ドリーム島の景色を、しっかりと目に焼きつける。
千里「俺は東に向かって船を漕いでいただけなのに、偶然この島にたどり着けた。
バリアに触れたら木っ端微塵になるはずなのに、その時たまたまバリアが不具合を起こしていた。
牢でたまたま、兄貴の仲間である冬華と出会えた。
レジスタンスの幹部の名前がたまたま四季だったから、この島のことに関われた。こんな偶然ってあると思う?
まるで運命に導かれたみたいだろ。誰かの力によって引き起こされたとしか思えない、これは運命なんだ」
惜しい 少し違うな
千里「この島にこだわっていた兄貴の”変わりに”俺がこの島を救わなくちゃいけない…そんな気がしたんだ」
そう、これは運命。でも、誰の力も関与してないんだよ。じゃあ誰の力?
冬華「そうなんです。<E-ナンバーズ>を知ってる人みんなが…彼らの帰りを待ってるんです。みんなが、彼らの存在を信じています、みんな、みんなです」
信じたい、信じてほしいと思ってるよ。
もうちょっとだよ。ちょっと違う、後少し…あと少し
千里「俺はこの島を救いたくなった。そのためにここに来たんだって思いたい。今はこの島の役に立つことを考えていきたい」
広間の出口へ向かう。
千里「イシナギ、どうなったかな。俺らに出来ることを探しに行こう」
冬華「…はい」
2人は、自分たちもちょっと前に居た牢を目指して、走った。
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