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次の日。千里も、自分の目的について冬華に告げた。
千里「冬華、聞いてくれ。実は俺も…俺、兄貴を探すためにここに来たんだ」
千里は、兄を探していた。
冬華「この島に居るんですか?」
千里「いや…分からない。ただ、東に向かったっていうのは聞いたんだ。だから”俺たち”も、東へ向かって船を出したんだよ」
冬華「…”俺たち”?」
冬華の疑問に、千里はもう1つ重要なことを思い出す。
千里「そう、双子の妹と一緒に来たんだよ!港に着いた時には俺は気を失っていて、気付いたら1人だったんだけど…
この島の港が見えた時にはまだ一緒だったから、先に下りて周りの様子を見に行ったのかなと思ってるんだけどさ」
冬華「なら、早くここを出なくちゃいけないですね。お互いに」
千里「そうだな」
2人は頷き合った。
2人が出会ったことには、意味があった。
2人の運命は、すでに交差していたのだから。
冬華「千里さん。その…お兄さんって、名前は何ていうんですか?私が会ったことがある可能性もありますし」
何となく聞いただけであったが…
千里「ああ。”イナリ”っていうんだ」
冬華の顔色が変わる。
冬華は下を向き、険しい顔つきで目を潤ませた。しばらくして顔を上げると、千里の目をじっと見つめる。
冬華の表情は、今までに無いくらい優しい表情であった。
冬華「…私…イナリ…知ってます」
千里「えっ!?」
冬華の両肩を掴んだ。
千里「本当か!?」
冬華「はい…だって、イナリは私の仲間だもの」
ここで千里は、様々なことを知った。
この島は、千里が来ようとしていた場所に、間違いない。
恐らく冬華が探している仲間の中に、兄は居る。
そして、兄を探すためのカギは、冬華である。
千里「じゃあ冬華。俺らの目的は一緒なんだよ」
冬華「…ええ…」
冬華は、複雑そうな表情で千里の顔をじっと見つめる。
冬華「…本当…なんですね…だって…目元が千秋にそっくりだもの」
千里「…チアキ?」
冬華は我に返った。
冬華「あ…ごめんなさい。私たちは傭兵をやっていて、私たち傭兵一味は本名ではなくて、通り名で呼び合うんです。
イナリの通り名は”千秋”なんです。それにしても千里さん…やっぱり…」
千里「何?」
冬華「千秋が昔、自分の通り名は弟の名前に似てるって言ってたから。あなたの探しているお兄さんは、千秋で間違いないと思います」
運命…まさかこんな大きな手がかりが見つかるだなんて
千里はここで我に返り、冬華の肩を掴んでいた両手を慌てて放す。
千里「な、なあ。兄貴、別の国から来たようなことを言ってなかった?」
冬華「言っていたような気がします…このドリーム島を探していたようなことを…」
千里「ドリーム島!?」
千里は更に驚いた。
千里「ここはドリーム島っていうのか!!やっぱり…冬華、これを見てくれ。兄貴の書き置きなんだ」
上着のポケットから、1枚の紙が取り出される。
”東の海に、ドリームを探しに旅に出ます”
冬華「ドリーム…?」
千里「俺、兄貴が何か夢でも掴もうとして旅に出たのかと思ってたけど…もしかして、この島のことを知っていて、この島を探しに来たのかな…?」
千里は大きく頷いた。
千里「きっとそうだ。そうに違いない」
…実際のところは、どうなのだろう。千秋の書き置きの内容は、あまりにも抽象的だ。千秋の本当の目的は、謎に包まれたままである。
しかし、今は考えても分からない。
冬華「とにかく、まずはここを出なくちゃ。ボスが遠征から帰ってくれば、すぐにボスと会って話が出来ると思います」
千里「ボス?」
冬華「ドリーム島のボスです。私のことは知ってるので、話をすればすぐに解放してもらえると思います。でも…あなたは…」
千里は上を向いて考える仕草をした。
千里「…解放される口実でも考えとくよ」
苦笑する。
冬華「…あの…」
冬華は、控えめに聞いた。
冬華「千里さんの住んでいる場所って、どんな所なんですか…?」
千秋の故郷に興味があったのだろう。千里は笑いながら話し始めた。
千里「俺の住んでいる大陸は…」
??「おい」
牢の外から、男の声がした。
男「ボスが戻ったからボスと面会してもらうぞ。ここを出ろ」
千里と冬華は、頷き合った。
まずはここを出てから。話は、それからだ。
→3.海