ドリーム島を知ることとは、ドリーム島の景観や風習を知ること。
それだけじゃない。そこにはどんな人たちが居るのか…
その人たちが、どんな人たちなのか。
何を求めているのか…
??「おう、来たか来たか!!ちょっと待ってろよ!!!」
エレベーターで高層まで上がり、大きな広間へと案内された千里と冬華。
恐らく、ここがボスの部屋だろうが…
慌ただしく室内を走り回っていたのは、豪快な大男であった。
千里「…冬華、アレがドリーム島のボスなの?」
冬華「そうです」
冬華はもう見慣れているのだろう、顔色一つ変えなかった。
冬華「どうしたんですか?」
千里「いや、何かイメージと違うというか…」
ボス「よしよし、話を聞くぞ」
仕事が落ち着いたボスは、2人の前に立つ。
千里と冬華とボス。3人が初めて会合をした瞬間であった。
ボス「よう冬華元気か?政府のデータをハッキングしようとしたんだってな~」
冬華「すみません。だって、ボスや皆がどうしても見せてくれないって言うんですもの」
ボスは頭をひねる。
ボス「個人的には教えたいんだが、政府の人間という立場上、傭兵に重要機密を教える訳にはいかんからな。すまないな」
冬華「…いえ…」
冬華にボスを責めることは出来ない。
ボスは次に、千里を上から下まで観察をして笑った。
ボス「なるほど、お前が噂のスパイか」
既に噂になっているらしい。
千里「スパイじゃないんだって!俺はホープ島って所じゃない大陸から船で来たんだから!」
ボス「ほう…」
それをきいたボスは、腕を組んで面白がるような表情をした。
ボス「お前、どうやってバリアをすり抜けたんだ?」
千里「バリア…あっ」
ドリーム島には、外敵を侵入させないためのバリアが張り巡らされている。
千里には、ピンと来るものがあった。
千里「バリア!?それかな!?俺、この島の港が見えてきた時、何か見えない物にぶつかったんだよ。で、気付いたら港の中に居たんだ」
ボスは、部下たちと何かを話し始めた。そして再び千里の方を向き…
ボス「スパイ、お前、運が良かったのかもな」
千里「千里だけど」
ムッとして名前を名乗る。
ボス「悪い悪い。千里、お前が兵士区で発見された日、バリアに不具合が生じていたらしい。
そんなことは滅多に無いんだけどな。不具合が生じている間でなければ、お前の船は木っ端微塵だっただろう」
千里「…!!」
鳥肌が立った。
ボスは少し考え事をした後、再び冬華の方に向き直る。
ボス「千里には悪いが、今から出かけないといけないんだよな。お前の話を聞くのはまた今度で。申し訳ないがまた牢に…」
千里「え、ちょ、ちょっと待ってくれ」
慌てる千里を横目に、ボスは冬華と話し始めた。
ボス「政府のデータはビル崩壊時故障していて、手がかりらしいものは無いそうだ。…他に、仲間のことは何か分かったか?」
冬華「…いえ」
ボス「政府の方でも、あの時何があったのかはちゃんと調べているんだ。で、あの時に犠牲になった人たちの名前を」
そこまできいて、冬華は一歩後ずさる。
ボス「…ちゃんと聴け、お前の今後のためだぞ。犠牲になった人たちを収容する墓を建設中だ。そこに名前が書かれた名簿があるそうだ。
俺も後で見に行く予定だが…お前も、そこに仲間の名前があるのか後で見に行った方がいいぞ」
冬華「…」
冬華だけではない。
千里「…」
…千秋は、死んでしまった可能性もある、ということなのだ。
…絶望…そうか…そういう可能性も考えないといけないのか…
しかしボスの顔は、真剣な顔から笑顔に変わる。
ボス「本当は今時間が無いんだが、冬華にはどうしても話しておきたい事があるんだよな」
冬華は俯きかけていた顔を上げた。
ボス「俺は今から、反政府組織のレジスタンスのアジトを潰しに向かうんだが…そこの構成員の名前が…」
冬華の肩にポン、と手をやった。
ボス「”四季”に関する名前なんだそうだ」
冬華「えっ!?」
冬華は、もの凄い勢いでボスの両肩を掴み返す。
冬華「もしかして、もしかして私の仲間ですか!?」
ボス「そこまでは分からんが、四季の名前と言われて、お前の傭兵一味を思い出してな」
傭兵一味の通り名に四季の単語が入っていることは、冬華と千秋の名前から千里も察した。
冬華は手を放し、目を潤ませる。
冬華「…何か、理由があってレジスタンスをしているのかも。お願いですボス」
真剣な顔つきでボスに向き直る。
冬華「私も連れていって下さい。仲間である私なら、彼らがなぜレジスタンスをしているのか聞けるかもしれないし、説得出来るかもしれません」
ボス「そう言うと思ってお前にこの話をしたんだ。もちろんいいぜ」
そして、千里ももちろんこの一連の流れをきいていた。
千里「なあボス、俺は傭兵の1人の弟なんだ」
ボスはそれを聴き、意外そうな顔をする。
ボス「何?…傭兵の中には、外から来た人間が居るのか?」
冬華「…はい」
千里は千里で考えた。
千里「弟である俺が居れば、何か役に立つかもしれないぞ。例えば俺を人質にして話を聞き出したりでもいい」
抜けている千里にしては、いい考えである。
冬華「私からも、よろしくお願いします、ボス」
ボスは少し考えた。
ボス「なるほどな…その話が本当なら、何かの役に立つかもしれんな。分かった、お前も連れて行こう」
うまく行った!千里と冬華は、顔を合わせて笑った。
ボス「よし、行くか!!」
千里「…ちょっと待って」
ここまで話を進めてきたが、千里には疑問があった。
千里「ボスが直々に、レジスタンスのアジトに行くのか?部下に任せるようなことなんじゃ…」
ボスは、大きく胸を張る。
ボス「俺がボスになる、遥か昔…やんちゃしていた頃な。よく、ドリーム島の地下に潜って探検をしていたんだよな」
冬華「アジトは、地下にあるんですか?」
ボス「そうそう」
満足そうに頷く。
ボス「ドリーム島の地下に関しては、俺はきっと島の中で一番詳しい!だから俺が直々に潰しに行くって訳だ」
千里「…そ、そう」
思わず苦笑した。
ボス「とはいえ、俺がボスであることはバレない方がいいだろうな。外に出たら俺のことは”ボス”ではなく本名の”石投(イシナギ)”と呼ぶように」
髪をオシャレに編み込んだ、コートの大男のボスの名前は、石投。
以前のボスであった息吹が失脚した後、ビルの関係者の中から石投が、新たなボスとして選ばれたのだった。
石投「行くぞ、二人とも!」
冬華「はい、石投さん」
千里「ああ、イシナギさん」
出かける前に、千里は石投と部下が何か話しているのを耳にする。
石投「…彼らは見つかったか?」
部下「いえ、まだ何の情報も」
石投「そうか、引き続きよろしく頼む」
千里には、何の話かは今は分からなかった。
イシナギさんは、変な人だけど…この人が何で今ドリーム島に必要とされているのかは、何となく分かる気がする。
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