「里」





 転区:ホウテイのギルドの敷地内。
 とある石碑の前に、カルマとサトリは居た。
 これは、ギルドの創設者たちの名前が刻まれた石碑だ。
 ホープ。ライク。ドリーム。
 誰かの意図なのか、バースの名前もちゃんとあった。
 彼らはこの大陸を離れたので墓は無い。代わりに、この石碑が建てられたのだ。
 カルマは、4兄弟に語りかけた。
「ホウプ。ギルドを作ってくれて…本当にありがとう。ギルドのお陰で、人々は危機を乗り越えることが出来た。
ホウプ…お前の言葉は、本当に心に響いた。”みんなで乗り越える”…とても心強かった。あれから、私の考え方が変わったんだ…
ライク。お前は、”3人のために生きることが自分の目標”と言っていたな。私も、その気持ちはよく分かる。
私は、人々のために使命を続けた。人々の幸せが私の目標だった。そういう意味では、私たちは似ていたのかもしれないな。
ドリーム。ドリーム…お前は、東の島々に行ったんだよな。お前だったら、どんな国を作るんだろうな。
…遊びに行くって約束したのに、お前が生きているうちに行けなくてすまない…いつか、何らかの形で、そっちに行けたらと思ってるよ。
バース。…クライムが、そっちに行った。2人で、幸せになってくれ。クライムを、よろしく頼む」
 ギルドを去ろうとしたカルマに、サトリは話しかけた。
「カルマ、グゲン3世たちの墓はいいのか?」
「今、ギルドはグゲン5世のことでゴタゴタしている。それらが落ち着いたら、ゆっくり話すよ。大丈夫…みんな、乗り越えられる」


 結区:マイオウギの首都を、カルマとサトリは歩いた。
 カルマはマイオウギを離れた後、1度だけマイオウギを訪れたことがある。
 それは、大陸の災害が起きた時だ。しかし、都心には近付かなかった。
 マイオウギを離れてから首都を訪れたのは、これが初めてである。
 首都には、見覚えのある城があった。
 所々改装はしてあるが、あの頃の骨格がそのまま残っている…
 サトリは、カルマに説明した。
「あの城は、文化遺産として残されてる。ご先祖たちの墓もそのまんまだ。中に入る許可は貰ったから、すぐに入れるぞ」
「…うん」
 カルマはサトリの話に頷きながら、マイオウギの首都の風景を見回していた。
 ビルや電光掲示板、電車…昔と大きく変わった街並みに、カルマは長い時の流れを感じた。
 だが…城に近付くたびに、少しずつ懐かしさを感じ始めていた。

 カルマとサトリは、城の塀沿いを歩いた。

 …上から、人が降って来た。

『きゃあっ、あ、す、すみません…!!』
『ミコ、今行く…うわっ!!!』

「…」
「…カルマ?」
 昔の記憶がフラッシュバックした…
 カルマは、気が付いたら足を止めて、塀を見つめていた。
「カルマ…大切な場所?」
「…うん」
 サトリはカルマの様子から察して、一緒に足を止めた。
「…サトリ、行こう」
 しかしカルマは、自ら歩を進める。
 この先だ。あと少しだ…


 見覚えのある墓の前に、カルマとサトリは居た。
 風化してはいるが…変わっていない。
 マイオウギを離れる前に、花を手向けたあの墓だ。
「…リゾク…ミコ…」
 カルマは墓の前に座った。
 カルマは…リゾクとミコに、語りかけた。
「…リゾク、ミコ…
私は…



私は、

…」

 涙が止まらなかった

「…やっと、帰って来たよ。遅くなって、



…ごめん…」

 今の自分があるのは、きっと2人が優しかったから

「…リゾク…約束は…守ったからな…
…ミコ…私は…幸せになった…」

 …ありがとう。

「お前たちに会えて、本当に良かった。
一番最初がお前たちで良かった。
友達になれて良かった。
ありがとう。
ちゃんと、故郷に帰って来たよ。
…ただいま…」





 泣きすぎて、目の腫れが引くまでは…とのことで、カルマは、墓の近くにある石の階段に座って休んでいた。
 すると、サトリがリゾクとミコの墓に手を合わせ始める。

 サトリは、5分くらい祈った。

「…よし」
 サトリは祈りを解くと、カルマの横に座った。
「…何を祈っていた?」
 カルマが聞くと、サトリは笑って言った。
「祈りっていうか、誓いみたいなやつ。カルマのことは任せろ、ってな」
 そのことで、5分もかけてくれたのか…と、カルマは胸がいっぱいになった。
 カルマとサトリは、見つめ合った。

「カルマ、もう一度言う。俺と、一緒に、一生を過ごしてくれ。必ず幸せにする」

「…」

「…カルマ、真っ赤だぞ」

「…うん」

 生まれて来れて良かった。

「カルマ、帰るか。今日から何するかな…」
「何でもいい」
 カルマとサトリは立ち上がり、歩き出した。

「…私は生きている。ここに存在しているよ」










→「終」