2001年 某日。
カルマ、サトリ、マモル、ヒナギク。
4人は、いつもの拠点の小屋の外に居た。
棺の中に、アカネが居る。
4人は棺を囲んでいる。
カルマは、アカネの綺麗な顔を見つめながら、皆に言った。
「私は…これは、何の根拠もない、ただの思い込みなんだが…アカネには、魂が宿っていたんじゃないかと思うんだ」
カルマは、くしゃっとしたアカネの笑顔を思い出した。そして…
「アカネは死ぬ間際に、アサヒ…大切な人の姿を見たようだった。きっとアサヒが迎えに来て、アカネは成仏したんじゃないかと思うんだ。
いつまでも体だけが残っていたら可哀想だ。残しておいても…ロボットである体を誰かに利用されたくない。だから…」
カルマは、アカネの背中に手を回した。
「アカネ、ありがとう。お前は私の、大切な友達だ。アサヒと、幸せにな…」
そしてカルマは、アカネの背中にある自爆装置を押した。
アカネの顔が見えなくなる瞬間まで、じっと見つめながら棺を閉じた。
しばらくして、棺を開ける。
そこには、金属の粉だけが残された。
カルマはその粉を、小箱に、手ですくって大切に入れた。
カルマの手が震えているのを見て、サトリたちはカルマの背中に手をやったり、肩をポンと叩いたりして、
言葉を発さずにカルマを励まし見守った。
次の日。
小屋で休んでいる皆に、カルマは言った。
「みんな、昨日はありがとう。アカネを送ることが出来た。みんなは…これからどうする?」
カルマの使命は終わったのだ。これからのことを考えなくてはならない。
マモルは、レーダーを見ながら言った。
「魔物の残党が残ってるうちは、俺とヒナは賞金稼ぎを続けるかな」
クライムは消えた。カルマは、クライムを倒した時に彼の”気”が消えたのを感じた。
しかし、魔物はまだ残っている。レーダーに魔物の光点がびっしりと残っていた。
カルマは、クライムが消えた時に魔物が獣に戻る可能性に少し期待していた。
魔物を全滅しなかった理由は、そこにもあったのだが、そううまくはいかなかったようだ。
でも新たな魔物はもう生まれない。後は、残った魔物を退治していくだけだ。
カルマは、レーダーを見ながら言った。
「全ての魔物を退治したら、聖域の獣を解き放てる。そうすれば、呪いによる生態系の変化も、少しは補えるだろう」
「カルマ、あなた獣の生態系まで気遣ってるのね。優しすぎるわよ」
ヒナギクはそう言って、カルマを抱き締めた。
マモルは、ふと思いつき、カルマに聞いた。
「カルマ、ここを拠点に使ってもいいか。ここは大陸の真ん中にあって便利だ」
「ああ、かまわない」
マモルの意見にヒナギクも同意する。
「いいわねえ。そうすればカルマにも頻繁に会えるしね」
そして…カルマとサトリの今後だ。
カルマは、皆に伝えた。
「私は…今まで出会ってきた大切な人たちの、墓参りをしようと思っている。ずっと、怖くて避けていた…今なら多分、大丈夫だと思うから」
サトリは、カルマの顔を覗き込んで言った。
「そっか。カルマ、1人1人と話したいよな?なら、カルマ1人で行きたいよな」
「…いや」
カルマは、サトリの服の袖を、きゅっと引っ張った。
「…1人だと、押し潰されるかもしれない。サトリ…来てくれ」
「…」
サトリは、袖を引っ張ったカルマの手を、ぎゅっと握った。
「分かったよカルマ、一緒に行こう」
マモルとヒナギクは、2人の様子をじーっと見つめていた。
サトリはそれに気付き、キッと睨む仕草をする。
「何ジロジロ見てんだっ」
「…何って、お前らが勝手に俺たちの前で繰り広げたんだろ」
「うふふ、良かったわね~カルマ!」
笑ったサトリと、不思議そうに皆を見回しているカルマを見たマモルとヒナギクは満足し、準備を始めた。
「2人とも、行くのか」
カルマは察した。2人は今日も魔物退治だ。
マモルとヒナギクは、それぞれ言った。
「じゃあ、また後でな」
「すぐ戻るからね!」
そうして2人は、小屋の外へ出て行った。
起区:フシンが各国と終戦協定を結んだというニュースと見ながら、カルマとサトリも、出発する準備をした。
最初に、行かなければならない所があった。
ガトの研究所がある街の墓地。
とある墓の前に、カルマとサトリは居た。
「アサヒ…アカネを連れてきたぞ」
アサヒは結婚したりはしなかったので子孫は居ない。この墓を管理している親戚の者に、アカネの粉の箱を一緒に入れる許可を貰った。
カルマはアサヒの墓に、アカネの箱を一緒に入れた。
カルマは、アサヒに語りかけた。
「アサヒ…お前が、アカネを私の元に送ってくれたお陰で、私は…ここに居る。
ずっと1人だったら、クライムを消すまで誰にも本音を打ち明けることも無く、今頃自害していただろう。
私は…アカネと接して、明るいアカネを見て、アサヒとアカネが幸せな日々を送ってきたことを感じた。
アカネからお前を感じ取ることが出来て嬉しかった。そっちでも、アカネと幸せにな。…ありがとう」
次に、隣にある墓。
カルマは、クオンとミクリヤに語りかけた。
「クオン、最初に…アカネを作ってくれてありがとう。あと…お前のレーダー、今でもみんな使ってるぞ。本当に凄いな。
お前は…変な奴だったけど、楽しかった。楽しかったから怖くなった。その日々を失う日が来るのが怖いから。…楽しかったよ。
ミクリヤ、あの日…お前と話が出来て良かった。私は、自分が神の遣いだったことを誇りに思ってる。お前の言う通りだった。
あの日、お前と話が出来たことが、今の私に大きく影響しているような気がするんだ。ありがとう…」
承区:ガトの王族の墓地。
とある墓の前に、カルマとサトリは居た。
ここは王族の関係者しか入れないのだが、ヒナギクが許可を取ってくれたのだ。
そこの墓には、2つの名が刻まれていた。
カエデと、キリュウだ。2人は一緒になっていた。
カルマは、カエデとキリュウに語りかけた。
「カエデ。聞いたぞ。お前、あの出来事がきっかけで、兄弟の1人が王を継いで1人が見聞を広める旅に出る法則を考えたらしいな。
お前が作る国を、本当は近くで見ていたかった。お前は…気の置けない奴だった。側に居たかった…
キリュウ。お前、カエデと一緒になったらしいな。女王と平民出身の軍師が結ばれたことで、ガトはより柔軟に発展していったと聞いた。
…人から聞いた話ばかりですまない。本当は、2人のことを、ずっと近くで見ていたかった」
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