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グゲンとクライムは、指定されたガトの田舎道の村で降りた。
そこに、約束通りアサヒとアカネが現れる。
アサヒはグゲンに向かって、
「こっちだ、来い」
と言い、アカネと共に走り出した。
グゲンはしばらくうつむき、意を決したように走り出す。
クライムもそれに続いた。
田舎道を、どれだけ走っただろう。彼らは村を外れ、森の中を走っていた。
そして、少しずつ様子がおかしくなり始めたのは、クライムの方だった。
「クライム、どうした?」
少し冷静になっていたグゲンが、クライムの異変に気付く。
クライムは殺気立っていた。
そう…感じたのだ。カルマの殺気を。
もう日が沈み始めていた。
アサヒ、アカネ、グゲン、そしてクライムは、開けた草原に出る。
草原の中央に立っていたカルマは、クライムを確認して力を解放し、剣を抜いた。
クライムはアサヒとアカネ、グゲンを追い越してカルマに力を解放しながら急接近をする。
そしてカルマとクライムは、力を一撃、ぶつけ合った。
「うわっ…!!」
アサヒはその力の凄まじさに、思わず声を上げた。
そして、呆然としているグゲンの手を引っぱると、アカネと共に森の茂みへと身を隠す。
「危ねーぞ、こっちに隠れてようぜ」
「…あ、ああ…」
アサヒに言われたように、グゲンも身を隠した。
そうは言っても、カルマとクライムの戦いの様子は気になる。アサヒ、アカネ、グゲンは、茂みから戦いの様子をうかがった。
カルマの重い一撃。クライムの重い衝撃波。
2人の戦いの激しさは、過去のそれよりかなり増していた。
クライムは力を蓄え、カルマは戦略を練って来たのだ。それはそうだろう。
しばらくは、2人は何の言葉も発すること無く戦っていた。
そして…先に口を開いたのは、クライムの方だった。
「…カルマ。人間とは、不思議だな」
「…?」
2人はバッと離れ、肩で息をした。
クライムは続ける。
「グゲンと言ったか…?奴は凄い精神力だな。なぜか、中々呪いにかからない。カルマ、人間とは一体何だ?」
カルマはクライムに攻撃を仕掛けた。クライムはそれをガキンと受け止める。
カルマは、クライムを睨み付けながら言った。
「知るか。私は人間では無いからな」
その後は、再び2人とも喋ることなく戦いが続いた。
「すげえ…」
アサヒは2人の戦いを見て、畏怖と共に感動を覚えた。
カルマは長い間、このような戦いを繰り返して来たのだ。彼女の偉大さを改めて感じたのだった。
横に居るグゲンも2人の戦いを見つめる。既に、正気を取り戻していた。
「…クライムは、文献にあった罪人だったんだな。私は…呪われかけたのか…やっと納得した」
「戻ったのか。良かったな」
グゲンはアサヒの言葉に微笑み、再び2人の戦いに目を戻し、言った。
「カルマさんは、このような激しい戦いから、長い間人々を遠ざけようと努力してきたんだな。
そしてギルドは、カルマさんの力になるために生まれた…」
「…そうだろうな。長い目で見て…そうか」
アサヒはグゲンの言葉に、何かを感じたようだ。
2人は、カルマとクライムの戦いを、じっと見つめ続けた。
夜の闇に包まれた草原を、カルマとクライムは戦い続ける。
どれだけ経っただろうか?2人共、既に虫の息だった。
次の一撃。喰らった方が負ける。2人共、立っているのがやっとだったからだ。
「…カルマ」
再び、クライムがカルマに話しかけた。カルマは、クライムから目を離さずに答える。
「何だ…クライム」
「俺も、目的を見つけたよ」
クライムは、カルマを見ていなかった。見ているようで、目が泳いでいる。既に限界だった。
「…俺は…俺のやり方で…この大陸を呪って…呪って…滅ぼしてやる…必ず…覚悟しておけよ…業、カルマ…」
カルマは、隙だらけのクライムに大きな一撃を喰らわせた。
すると、クライムの体は空気中に溶けて消えてしまった。
「…」
今回も、終わらなかった…
カルマはその場に倒れた。カルマの体も既に限界だったのだ。
「カルマ!!!」
茂みからアサヒが飛び出してカルマの横に座った。
「カルマ!!カルマ!!!」
泣きそうに叫ぶアサヒに続いて、グゲンもカルマの横に座り、脈を測る。
そして、安堵してため息をつき、言った。
「…気絶しているだけだ。大丈夫、生きてる」
「…!」
アサヒも安心し、はぁ…とため息をつく。
そして、カルマを見つめたままグゲンに話しかけた。
「なあ、どっかで休ませた方がいいよな?どこに連れてくか…」
「そうだな…随分、都心から離れてるしこの状況で宿に行ったら、騒ぎになる。…君は、アサヒ、だっけ?君の家はどの辺だ?」
「あーうちは…遠いな…この時間じゃ電車が間に合わねーかも」
アサヒは少し考え、何かを思い付いて言った。
「アジトなら、家よりは近いけど…まてよ、電車使うにしても、ここから駅までかなりあるよな?」
アジトとは、以前カルマに色々な話を打ち明けた廃屋のことだ。
そこで、しばらく2人の会話を聞いていたアカネが口を開いた。
「私ガ、カルマさんヲ抱キ抱エテ走リマス。2人ハ、私ト共ニ、走ッテ下サイ」
アサヒは指を鳴らす。
「いいぞアカネ!それなら電車間に合うかも!」
「すぐに出発しよう」
グゲンも同意し、アカネはカルマを抱き抱え、3人は走って駅へ向かった。
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