「朝日」





 カルマは、久々にギルドを訪れた。
 外装もそうだが、内装も数十年前からあまり変わっていない。
 それは、この建物が元から頑丈に造られていたことの表れだった。
 カルマは、ギルド長の部屋に招かれた。
「カルマさん…!初めまして、グゲン3世です」
 グゲン3世と名乗った若い青年は、椅子から立ち上がりカルマを迎え、手を握った。
「私は、カルマだ。よろしく、グゲン」
「よろしくお願いします。お会い出来て光栄です」
 2人はあいさつを交わし、椅子に座った。
 カルマは早速本題に入る。
「クオンの作った人型ロボットを大量生産したいようだが、頼む。諦めてほしい」
 グゲンはカルマから改めてその話を聞き、顔をしかめて言った。
「…人型ロボットがあれば、きっと魔物退治が効率良く、なおかつ安全になるんです。
ギルドは人々の税金に助けられている。私は人々に恩返しがしたい…どうか、分かって頂きたいんです…人々の安全のために」
 グゲン3世は20歳で、最近2世からギルド長の座を引き継いだばかりだった。彼なりに、人々のためにどう役に立とうか考えているのである。
 カルマは、それを確認できただけでも良かった。
「グゲン。あなたの気持ちは良く分かった。だが、聞いてほしい。実は、クオンの作ったロボットには私の存在が関わっているのだ。
ロボットをギルドに起用してしまうと、ギルド創設の際の精神に反することになってしまう」
「!!」
 グゲンは、はっとした。
 そして、何かを思い出すような表情をする。
「…”カルマの目標は、ギルドの目標…”」
 グゲンのその呟きに、カルマは微かに反応する。
 グゲンは言った。
「我々の一族、いや、ギルドに伝わる言葉です。カルマさんの使命のジャマだけは出来ない…分かりました。ロボットの件は、諦めます」
 カルマはすぐに立ち上がり、グゲンに握手を求める。
「グゲン3世。あなたがギルド長で良かった。これからも、ギルドをよろしく頼む」
 カルマの言葉を聞き、グゲンもすぐに立ち上がり握手に応じた。
「ギルド創設に関わるカルマさんから勿体ない言葉を頂き、痛み入ります。お会い出来て良かったです」
「私にこそ、その言葉は勿体ない。凄かったのは、ギルドの創設者とあなたの祖父、父だ」
 そして2人はあいさつを交わし、カルマはギルドを出た。


 夜。カルマは、結果の報告のために再びクオンの家を訪れた。
「やあ、カルマ!来てくれたんだね!!」
「そのくだりはもういい」
 毎回同じように顔を輝かせるクオンを、カルマは慣れた口調で制した。
 そして、クオンとミクリヤに報告をする。
「ギルド長と話が付いた。もう、ロボットを求めてここに電話してくることも無いだろう」
 クオンは目を潤ませる。
「カルマ、ありがとう…僕のために、ここまでやってくれて…」
「いや、お前のためじゃない」
 カルマは無表情で答えた。
 報告も済み、レーダーも手に入れた。カルマは拠点に帰ることにした。
 ミクリヤはカルマに微笑んで言った。
「カルマ、また来てね。…にしても、アサヒ遅いわね。またどこかで遊んでるのかしら。カルマにあいさつして欲しかったのに」
 カルマは、アサヒのことなどどうでも良かった。
「じゃ、失礼する」
 そう言って帰ろうとしたが…
 クオンの次の一言で、カルマの気持ちが大きく変わることになる。
「でもカルマ。アサヒには、僕の”気”のレーダーの進化や管理を引き継ぎたいんだよねえ。
反抗期が終わればって思ってたけど、19歳になってアレだからグレすぎててまずいんだよね」
 既に背を向けていたカルマはクオンを振り返り、彼の目を見て、
「…あいつが継ぐのか?」
 と、眉をしかめた。
 レーダーの後継者が居るのは、かなり有難い。なぜなら、クライムとの戦いがいつまで続くのかカルマにも分からないからだ。
 だが、あのアサヒという少年にそれが出来るようには到底思えなかった。
 カルマは2人に告げた。
「今からアサヒと話をしてくる」
 クオンとミクリヤは、顔を見合わせる。
「…連れてきてくれるのかい?」
「そこまでカルマにやって貰うのは申し訳ないわ」
 カルマは、少し考えた後に答えた。
「いや…無理矢理つれてくる…ということは、しない。私が強引にアサヒの行動を変えるのは気が引ける。
とりあえず話をしてみる。アサヒがクオンを継ぐのか継がないのかはアサヒが決めればいい」
 カルマは、魔物に関することでは人間に干渉することに決めている。とりあえず話をしてみようと思った。
 カルマは夜の街を、アサヒを探すために歩き出した。