「類似」





 カルマ、ホウプ、ライク、ドリームの4人は、ギルドのギルド長の部屋に居る。
 カルマとホウプは、これまでのことをライクとドリームにも話した。
 4人は話し合った。
「…あたしたち、バースを倒さなきゃならないんだね…」
 ドリームは、小声で呟いた。
 放たれるであろう魔物に対しては、既に対策がしてある。
 後は、恐らくその日に再び現れるであろうバースとクライムを倒すだけだ。
 ホウプは、怒りや悲しみでまだ混乱していた。
「バース…何であんなとんでもない考え方を持っちまったんだ…?
あんなに残忍だったか?どうすれば説得できる?倒さなくてもいい方法は…?」
 ホウプは、いつまでも考えをまとめることが出来なかった。
 彼は基本的にリーダーシップがあり、どんな時でも慌てふためくこともなく、長年ギルドを引っ張って来た。
 それは信頼できる仲間が居たからだ。しかし、今はその信頼できる仲間が自分の敵になってしまったのだ。
 混乱しているホウプを、ライクは黙って見つめていたが…
「…ホウプ。ちょっと僕の考えを聞いて」
 全員がライクのその一言を聞き、彼に視線を集中させた。
 ライクが自分の意見を言うことなど、ほとんど無いからだ。
 ライクは言った。
「僕には、自分の考えという物が無いんだ。別にやりたいことも無いし、目標も無い。
だから、ずっと羨ましかったんだよ。バースや、ホウプや、ドリームみたいに、大きなことをやりたい、って目標を持っている人が。
でも僕はある日、とあることに気が付いたんだ。目標に向かって突き進んでいる3人を見るのが楽しいな、幸せだなあってことにね。
僕は、そんな3人が好きだ。3人のために生きることがことが僕の目標だ。3人の目標は、僕の目標だ」
 そしてライクは、ホウプに近付いて続けた。
「バースは、呪われた人々で国を作ることが正しいと信じてるんだよ。そして、新たな仲間となったクライムも救うことが出来ると信じている…
僕は…バースと敵対するのは辛いけど…バースの決意だけは否定したくない。
僕たちとバースは敵対している。じゃあ、バースにしてあげられることって何?答えを出してよ、ホウプ!」
 ライクの中ではきっともう、答えは出ている。しかし彼は、ホウプの口からそれと同じ答えを出して欲しかった。
「…」
 ホウプは、先程まで混乱していたとは思えないぐらい、冷静な表情をしていた。
 ホウプは口を開いた。
「ホウテイのギルドとして、この件に立ち向かう。魔物から人々を守る…ギルドはそのために立ち上げたからな。
バースが自分の目標のために敵対するなら、こっちはこっちの目標のためにそれに答えよう。そうだ…これが答えだ」
 微笑んだライクとドリームにホウプも微笑み返す。
 そして、ホウプの話には続きがあった。カルマの方を向いて、話し始めた。
「カルマ、1つ気になることがあるんだが…バースは”永遠の命を手に入れて”と言っていたな。
それは、バースがカルマやクライムみたいになるってことか?そんなことが可能なのか?」
 カルマは首を捻った。
「クライムそのものが、私の中では予想外なのだ。私の知らない秘密を奴が持っていても、不思議では無い」
「…そうか」
 ホウプは、3人を見回した。
「バースが自分の選んだ道を正しいと思っているなら、俺たちも自分の道を突き進み、正々堂々と戦う。
だが…永遠の命。それだけは話が別だ。なあ、カルマ」
 カルマは、ホウプをじっと見つめる。
 ホウプは続けた。
「人々が呪われるべきかどうか、それはどちらが正しいのかは何とも言えない。俺は呪われるべきではないと考えたい、それだけだ。
だが、1人の人間が永遠の命を手に入れ、人々を支配する。それはただの”人外の力”による、人々への支配だ。
それだけは絶対に許さねえ。元々ギルドは、カルマの考えと俺たちの考えが共鳴して生まれたんだ。カルマの目標は、ギルドの目標だ」
 ホウプはカルマの肩をポンと叩き、再び3人を見回した。
「さて…橋も完成したかな?いつ攻めて来るか分からねえぞ。備えようぜ」
「うん!」
「分かったー!」
 ホウプの掛け声に、ライクとドリームは答える。
 4人は、いつでも出撃できるように準備を始めた。


 そこは、薄暗い密室であった。
 上にある小窓から、かすかに光がこぼれている。
 そこに居たのは…
「明日になったら、夢が叶う…どんな気持ち?」
 バース。そして…
「…気持ちも何も無い。俺には、心が無い」
 クライムだ。
 彼の一言を聞き、バースはクライムの頬に手を伸ばした。
「心…私と一緒に居れば、心がどういう物か、きっと分かるわよ…クライム…」
 そう彼に話したバースの表情は、笑顔にも見えるし、冷徹にも見えた。
 そしてバースは、再確認をした。
「私がいずれ魂だけの存在となった時、あなたの一部をその魂と結び付ければ…私もあなたのように、永遠を手に入れられるのよね?」
「…そうだ。俺は霊体だ。お前も霊体になるだけだから簡単だ。
お前が俺の願いを叶え、呪いの国を作ってくれるのなら…俺はお前の願いを叶えよう」
 それを再確認できたバースは顔を輝かせて、クライムの頬に触れていた手をぱっと話し、天井を仰いだ。
「私の手で、人間にとって正しい姿である1つの国を作る…これよ。このくらい大きなことでないと、私の心は満足出来ないの。
これは私のためでもあるし、人々のためでもあるし…それに、クライムが1人ぼっちにならないで済む。完璧よ、完璧すぎるわ!!」
「…」
 まるで神にでもなったかのような、心ここにあらずな様子のバースを、クライムは何かを言いたいような表情でじっと見つめていた。










→「誕生」