←
4兄弟は政府庁へ向かい、カルマも少し離れた所から4人の様子を伺った。
政府庁で4人は数時間待たされた後、首相との対談を許された。
対談はすぐに始まる。そんなりと話が通ったのは、話が魔物に関する物だからであろう。
首相は言った。
「魔物に関しては、数がどんどん増えてきて、ただひたすら倒すことしか出来ないのが現状です。いい案があれば、話だけでも聞きたい」
「分かった」
ホウプは代表として、先程ドリームが出した具体案を首相に話した。
首相は何度も頷きながら、ホウプの話を聞いていた。
そして、対面している様々な問題について話し始める。
「…なるほど。私たちは、魔物が増えていることもそうですが、国が管理していない所で依頼が発生していること自体に不安がありました」
「依頼って、国の無許可でやってたのか」
ホウプの質問に首相は頷いた。
「依頼主は、国を通さずに自分で依頼主になっています。ホウテイは他の国よりも魔物が多い上に地形が入り組んでいる関係で、
軍隊だけでは対処しきれずに、乱立する依頼を分かっていて放置するしかない。依頼のお陰で助かっているからです。
ですが、軍隊と依頼と賞金稼ぎの連携が全く取れずにいる。効率が悪く、どんどん状況が悪化しているんです」
ホウプは、首相の話から色々と察した。
「なら、俺たちの作る組織で、依頼主を1つにまとめよう。国は軍隊で手いっぱいだろ?
依頼は依頼で、軍とは別の組織として存在すればいいんだ」
「私もそう思いました」
そして首相は、書類を取り出しながら言った。
「ホウプ各位の組織作りを認めます。では、具体的な話をしましょう」
政府庁には入らずにいたカルマだが、組織作りが認められることは予想できていた。
カルマは政府庁の庭にある塀の上に腰かけ、考える。
自分は、人間と深い関わりは持てない。人外の力を持つのは、自分も同じだ。
だが、人間がいずれ自分たちだけで歴史を紡げる日が来るまでは、罪人の力に対抗するために人間の力を借りることは避けられないだろう。
そうした上で、人間の運命が大きく変わらないように努力をしよう、とカルマは誓った。
数時間後。4人が政府庁から出て来た。
ホウプとドリームはすぐに、塀の上に居るカルマの元へ向かう。
「おいカルマ、許可下りたぞ!!さっそく作るぞ!!」
「支援金も貰えたんだよ~!楽しみだねっ!」
2人は、「イエー!!」と言いハイタッチをした。
そしてホウプは、カルマに背を向けて話しかける。
「すぐに酒場で話し合いだ。見てろよ、カルマ」
そう言うと、すぐに走り出す。ドリームもそれに続いた。
やれやれと歩きながら後を追うライク。しかし彼らとは違い、バースはカルマの元に残った。
「あら、何だかスッキリした顔してるわね」
「…?」
カルマは、常に無表情である。表情など、ほぼ無いのだが。
「そんな気がしただけよ。大体、女の心なんていうのは読める物じゃないわよねえ。あなたも、私もね」
バースは意味深な言い方をして、カルマに背を向ける。
「この大陸で、大きなことをやってみたいのよ、私。今回のことで、願いが叶うといいんだけど」
そしてバースは、手をひらひらさせながら歩いて皆の後を追った。
カルマも、自分は意見は言えないまでも、どのような組織が出来るのかは知っておくべきだと思った。
4兄弟の様子は、注視していくことにした。
約1ヶ月後。
使われなくなっていた工場を改装し拠点とした組織、「ギルド」が発足した。
ギルド長はホウプ。幹部にバース、ライク、ドリームを置いた。
バースがギルド長になる話もあったが、バース自身が「ホウプの方が向いている」と、断ったのだ。
ギルドの仕事は、当初の目的通り、魔物化していない獣の”聖域”と名付けられた秘境への運搬。
そして、依頼の管理。軍の手の届かない所に魔物が発生したら、国民は自分で依頼をするのでは無く、ギルドに報告する。
それを依頼としてギルドが依頼板に張り出し、賞金稼ぎがそれを見て依頼を承諾する、という内容だ。
ギルドは少しずつ軌道に乗り始めた。
カルマは、時々4人の様子を見に来ていた。
今日はギルド長の部屋で、資料をまとめているホウプの様子を見ていた。
ホウプはまとめに区切りがつくと、カルマの横に座る。
そしてカルマに話しかけた。
「どうだ、なかなかだろギルド」
「…そうだな」
カルマも、そこは素直に認めた。
ホウプには、気になっていることがあった。
「なあカルマ。お前、最近は何をしてるんだ?」
カルマはこれにも、素直に答える。
「私がやろうとしていたことを、お前たちがやってくれている。私は、自分に出来ることを考えた。
今は、まだ途中だったホウテイの歴史と地理の勉強を再開しながら、
魔物の”気”の中からでも罪人の”気”だけを感じ取れる方法を探している。
魔物は呪われた人間と違い、自らも”気”を帯びているんだ。あちこちに気配が散って、このままでは罪人の気配を感じることが出来ないんだ」
「んー、やっぱな」
ホウプには、カルマに感じていたことがあった。
「お前、本物のカルマだろ。ドリームはあだ名っつってたけど。
俺も気になって文献読んだんだけど、お前はカルマそのものにしか見えねーんだよな」
「そうだ。私は神の遣い、業・カルマ」
カルマも、もう話すつもりで居たのだ。ギルドと罪人の”人外の力”は、深い繋がりを持ってしまっている。
自分がカルマだと知ってもらっていた方が、何かがあった時に話が通りやすいと思ったからだ。
ホウプは、カルマの肩をポンと叩いて、言った。
「だから自分の手で魔物を斬れないんだな。自分の”人外の力”で命を左右できないから。
よし、後は俺たちに任せろ!カルマは、自分の使命のことだけ考えてろ」
「…」
カルマは、ホウプの目をしっかり見ながら答えた。
「…ああ。ありがとう、ホウプ」
ホウプには、カルマが少しだけ笑ったように見えた。
ギルド。カルマ。
それぞれが、お互いにやるべきことのために動き出したのだった。
→「夢」