1875年 某日。
開拓4兄弟がギルドを立ち上げてから、10年の月日が流れた。
転区:ホウテイでは、ギルドの存在はすっかり定着していた。
魔物化していない獣を捕獲して聖域に送り出す作業、そして人間を積極的に襲う魔物を退治するシステム。
ホウテイと承区:ガトは、もはや長年戦争をしていないので、共に軍隊は”自衛軍”と名を変え、国や市町村を守るための軍となった。
ホウテイの軍は、主に人が住む場所に魔物が入って来ないように警備をすること、市町村の周辺の魔物を退治すること。
そして、入り組んだ場所や大型の強い魔物、住民が気付いた魔物等はギルドに依頼を出し、賞金稼ぎが退治をする。
それが定着していた。
ギルドは、ガトの軍だけでは手が足りない時にはガトに手を貸したり、
マイオウギの軍がフシンに対し警戒を強めている際に、マイオウギ軍の代わりに魔物を退治しに行ったりと、多方面で活躍している。
ギルドは、大陸中の対魔物のプロフェッショナルとなっていた。
魔物への対処を管理できるようになり、各国は更に経済を発展させた。
そして、開拓4兄弟によって外の国の様々な技術が伝わる。それらは、電気や機械をより効率良く使う術であった。
結果この10年だけで、映した物を映像にすることが出来るようになったり、移動に列車が使われるようになっていった。
そんなある日。
カルマは、ホウテイでの勉強を終えてからは各地を回っていたため、ホウテイに数ヶ月ぶりに現れた。そして、ギルドの様子を見に行く。
ギルドの様子は相変わらずだった。人々が行き来をし、忙しい日々を感じさせる。
そしてカルマはギルド長の部屋に入った。
そこには、ホウプが居た。
ホウプはカルマを見るなり、手にしていた紙を机に置いてすぐにカルマの側に寄る。
「カルマ!!久々だな!」
「ああ」
あれから10年。ホウプは35歳で、あの頃より貫禄が付き、ギルド長にふさわしい風貌だった。
そしてカルマは…19歳の見た目のままだった。
しかしホウプは、
「ドリームにも会ってやれよ。カルマに会いたいって言ってたぜ」
カルマの見た目のことは特に気にしていなかった。
ホウプはカルマに会えたことが嬉しくて、笑いながらカルマを迎えたのだが…
彼には、カルマに話さないとならないことがあった。
真剣な表情になったホウプは、カルマに言った。
「…バース。居なくなっちまった。フシンに行ったかもしれない」
「…?どういうことだ」
ホウプたちの姉が居なくなった、ギルドの幹部が居なくなった、というだけでは無い。
フシンに行ったかもしれない、というところがカルマは気になった。
ホウプは、棚に置いてあった小型テレビをカルマに見せた。
スイッチを入れると、白黒の映像が流れる。
―そこは、山道だった。
バースが現れる。
彼女は、山道を奥の方へと歩いていった。―
そこで映像は終わった。
ホウプは巻き戻して再び同じ映像を流し、カルマに説明する。
「フシンとホウテイの間には、大きな鉱山がある」
聖域があるのとは別の鉱山だ。
「簡単に行き来できないから、2つの国は交流も無いし戦争も起きない。
でも、単独ならその気になれば、鉱山を登ってフシンに渡ることは出来る。…魔物の様子を探るためのカメラに、バースが映ってたんだ。
この映像でいうと、バースが向かったのはフシンの方角だ。行ってからもう数週間経ってる」
ホウプは立場上、姉への心配よりもギルドのことを優先して話を続けた。
「ギルドの活動に影響するようなことになったらまずいよな」
フシンはマイオウギと敵対している。マイオウギとガトとホウテイの仲は良好だ。
つまり、フシンはホウテイにとって敵でもある。
「…そうだな」
カルマは一瞬、罪人のことが頭をよぎった。
「ホウプ、フシン側の鉱山のカメラの台数を増やそう。私は…罪人の”気”を探る」
ホウプは眉をひそめてカルマに聞く。
「罪人?罪人が絡んでるのか?」
「可能性の1つだ。調べておくことに越したことは無いからな」
2人は、すぐに動き出した。
カルマはギルドの屋根に登り、意識を集中させる。
カルマはこの10年で、”気”を探る訓練をしていた。無数に存在する、気配…その1体1体の”気”の動き方を感じる。
魔物の”気”の動きは不規則だ。それは、呪われている元が獣だからである。
カルマが過去に罪人から感じ取った”気”の動きは、人間的であった。それは、憑りつかれている元が人間だからだろう。
無数に存在する気配の1体1体の”気”を探るとなると、相当な体力を消耗するので、
カルマは1週間置きに各地で”気”を探るという方法で、罪人の出現を待っていた。
前回の探りは3日前で、まだ体力に不安はあるが、少しだけなら”気”を探れるだろう。
カルマは、意識を集中し続けた。
そして…
「…!」
微かにだが、人間的な気配を感じた。
「…うっ」
体力が限界に達し、カルマは意識を失い倒れそうになる。
そんなカルマの体を、誰かが両手で支えた。
「カルマ!大丈夫!?」
ドリームだった。
出会ってから10年経ち、すっかり大人の女性の風貌になったドリームの腕の中で、カルマは意識を取り戻した。
「…ドリーム…ホウプのカメラ設置は終わったか?」
「もう、それはこっちに任せて!カルマは休みなよ。久々に会ったのに相変わらずなんだから」
ドリームは真剣な表情だったが、すぐに笑顔になった。
「…でも、カルマ居るとやっぱ安心するな。バースのこと、あたしたちだけじゃどうすればいいか分かんなかったし」
「…罪人が絡んでしまえば、私が居なければどうにもならない。確かにそうだ」
「違うって。気持ちの問題だよ」
カルマはドリームに支えられながら、ギルドの医務室へ向かった。
恐らく、罪人は現れた。しかし、どちらにしろ今は体力を回復させなければならない。
後は、罪人とバースが絡んでいるか…それが知りたかった。
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