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兵士たちは、何度攻撃しても攻撃を受け止められ、終わりが見えない戦いに完全に体力と気力を失った。
それと同時に、先程の冷静さを取り戻していた。
「お前は…何者だ?」
兵士の1人が呟く。
カルマは口を開いたが、質問には答えなかった。
「この戦いを仕組んだのは誰だ」
しばらくの沈黙。そして、
「言えない」
答えたのは、人質を取っていた兵士…兵長だった。
カルマは別の質問をする。
「ホウテイは今どうなっている?」
「言えない」
「今からホウテイの兵士たちが一斉に攻めてくるのか?」
「言えない」
「…」
カルマは、ため息をついた。
そして何かを思いついたように、剣を下に置いて両手を上げる。
カルマは言った。
「今、城内に居る人間を、1人も殺さないと約束しろ。約束するなら、私は降参して捕虜になってもいい」
そして…アリアに目をやる。
「もう1つ…彼女の体を城から運んで、民間人に預けろ。丁重に扱えよ」
兵士たちにも、このままカルマと戦っても勝ち目はないことは分かった。
カルマの言葉に従い、カルマは捕虜として地下牢に入れられた。
牢の中で、カルマは考えていた。
先程は、予想外の展開で罪人が関わってきたため、行動が遅れてしまった。
カルマは罪人のことに関して人の命が関わると、判断が鈍ってしまう。
ここでしっかりと戦略を立ててから、行動に移した方が良いと考えた。
そして、考える時間が欲しかったから捕虜になったというだけでは無い。
カルマは考えがまとまったので、すっと立ち上がった。
そして、”例の力”で牢をこじ開けると、机の上にあった自分の武器を腰に下げる。
見張りが居ないことを確認してから部屋を出ると、階段を上がって”天井”へ向かった。
そう、カルマは天井裏に入ることが目的だったのだ。地下牢がこの入り口に一番近いので、牢に入ること選んだのだ。
カルマは話し声が聴こえる場所へ移動し、床に穴を開けて様子を伺った。
そこには、ホウテイの兵士が数人居た。
「…これからどうするのだろう?」
「とりあえず、言われた通りにした…よな?」
「俺たちの意志でここに来たんでは無いか?」
「いや、そうだったはずだけど…」
「とりあえず、ガクリが来るまでこのまま待とう」
それが、会話内容だった。
カルマは場所を移動し、別の場所でも話を耳にする。
「ガトの兵士や大臣などは、王と王妃を人質に取られて動けず捕虜になったようだな」
「俺たちの進入時の戦いで死んだガトの兵士も居るらしいぞ。やりすぎじゃないか?」
「ガクリには皆殺しでもいいと言われていたけど…それは出来なかったな」
「とりあえずこれでいい。後は、ガクリが来るまでじっとしているんだ」
カルマが彼らから得た情報は、”ガクリ”という人物の名。彼らが突入時以上にかなり冷静になっているということ。
そして、彼らの目が呪いから解放されているということだった。
しかし、呪いから解放されたのは全員ではない。
人の声のしない部屋を覗いてみると、呪われた目のまま、ただじっと立っている兵士が何人も居た。
カルマは思った。
罪人の気配を感じてから、まだ日が浅い。だから、まだ呪いはフシンの時ほどではない。
そして今のホウテイ兵は、罪人からはかなり距離が離れている。よって、少しずつではあるが呪いが消えていってるのではないか、と。
カルマはホウテイに行かなければならないが、ホウテイの情報があまりにも少ない。
カルマは彼らから、ホウテイの情報を聞き出したかった。
全員の呪いが解ければ、話が出来るかもしれない。刺激さえ与えなければ彼らは無害だ。
カルマは、全員の呪いが解けるまで待つことにした。
カルマは、牢へ通じる扉を閉じた状態で壊し、牢が確認出来ないようにしていた。
カルマは天井裏の外に通じる通気口に気付き、そこから静かにガトの城を脱出した。
今は、朝方だった。
カルマは、ガトの城の裏にある森林へと向かった。
いつもここに来るのは夜だったのだが、明るい時に見るとそれらは確かに楓の木だった。
そこには”カエデ姫生誕記念”と書かれた立札がある。カエデが生まれた時に、ここに楓の木を集めたのだろう。
カルマは森林に入り、カエデを探す。が、カエデの姿はどこにも無かった。
風が吹く。
カルマは森林から出た。木は風にゆれ、手のように広がる葉は風に飛ばされ、ホウテイ方面の街道へ向かう。
たまたま飛ばされた葉を目で追い、街道がカルマの目に入った。
そうか、街道か…
カエデがここに居ないということは、自分で歩いたか、誰かによって運ばれたということだ。
カルマはひとまず、カエデを探すことにした。
→「気流」