俺には分かるよ…
このドリーム島、穴が空いているんだ。
欠けているんだ、重要な何かが。
それが何なのかも、俺には分かる。
そして、俺が何のために…ここに来ることになったのかも…なあ…そうだろ
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日時:不明
場所:トーキョーシティ
自分:百里
6人が製鉄所の外に出ると、既に日が暮れかけていた。
先程のホテルへ戻るために、走り出そうとした時…
太一「利九!?」
物陰から、利九が現れる。
利九「話は移動しながらだ。とりあえず、こっちだ」
利九は後から皆に追いつき、6人が出てくるのを物陰で待っていたという。
皆は利九に従い、彼の示した路地裏へ入った。
利九「目的の場所へは、こっちの道から行く」
メンバーは7人になった。7人は、路地裏を歩きながら話を続ける。
五月「どこに向かってんだ?ホテルとは方向が違うよな」
利九「今回のデータを解析して、おおよそこの街の地理が分かった。後は外壁の図面だ。
街の地図と壁の図面。この2つを合わせれば、この街を脱出するために向かうべき所が洗い出せる」
つまり…
利九「作業は1日あれば終わる。脱出まであと少しだ。だから、<星>の別行動を取っているメンバーと合流する」
それをきいた<星>のオリジナルメンバーは、皆頷いた。
幸四「アジトにしている第6電波塔前のホテルですね」
そこで百里は、首を傾げる。
百里「電波塔って、洗脳の電波を発してるのか?」
利九「そうだ」
百里「何でそんな所をアジトにしてるんだ?電波が強い所なんじゃないのか」
<星>だって、百里たちと同じように洗脳を免れたいはずだが。
太一「百里、例の地下室だよ。だから大丈夫。そして、ダースは電波塔の近くに電波を恐れる<星>が居るはずがないと思ってる。盲点なんだよ」
百里「なるほど…」
百里は更に考察した。
百里「アジトである地下に何人か残しておけば、そのメンバーは洗脳されない。
外で行動しているメンバーが洗脳されそうになっても、<星>の中で1人でも洗脳されていない人が居れば、目を覚ますきっかけはある…ということか」
利九「そういうことだ。ダースも、自分たちまで洗脳されないように使っている方法だ」
百里の考察は、正に当たっていた。
第6電波塔へは、それなりに距離がある。7人は小さな宿で、数時間だが素泊まりした。
朝になると、ダースに嗅ぎつけられないようにすぐに宿を出る。
利九「幸四と巳六。体力に不安があるなら、地下のあるホテルを経由して行くが…どうする?」
幸四「大丈夫です、時間の面では足は引っ張りませんよ」
7人は歩いてアジトを目指す。長距離を、しかも安全な路地裏だけを選んで行くのだ。長期戦になるだろう。
歩きながら、最後尾に居た百里に葵が話しかけた。
葵「…やっぱお前は、頭が切れるな」
百里「何だよ突然。気持ち悪い」
昨日の考察の件のことだろうが。
葵「俺ももっと、しっかりしないとな…」
百里「…チサトは」
百里は突然、チサトの話を始めた。
百里「抜けててどんくさくて、兄さんか私が居ないと何も出来ない奴だった…なのに、ある日突然、旅に出たいと言い出したんだ。
あいつがあんなにはっきりと意見を言うなんて思わなかった。あいつは変わろうとしていた」
百里は別に、チサトを褒めるつもりで言った訳では無い。
これは遠回しなメッセージだった。
葵「…そうだな…俺もいい加減、自分のことを決めないと。百里、これを見てくれ」
葵は、製鉄所で拾ったフロッピーディスクを懐から取り出す。
百里「それか。あの時、歴史のことが書いてあるって言ってたな…」
あの会話を、百里もきいていた。
葵「なら話は早いな。俺はこれを見て、真実を知ってから決めるよ。お前たちと共にトーキョーシティを脱出して、故郷を探すか。
それとも、洗脳を受け入れて、俺を家族の1人として育ててくれた家族と共に暮らすのかを」
百里「そうか」
百里は改めて、葵をじっと見つめた。
百里「葵…私はお前に謝らなければいけないんだ。私と出会わなければ、お前は悩むこともなく幸せに暮らし続けられたかもしれないのに」
葵は百里を見つめ返す。
葵「違うよ百里。お前は俺に、選択するチャンスをくれた。
俺がこの街に居ることも生活していることも全て、誰かが決めたことだ。今度は俺が自分で決めるよ」
百里は葵にじっと見つめられ、慌てて目を逸らした。
百里「フロッピーディスクは私も一緒に見る。じゃあ後でな!」
そう言うと、メンバーの最前列の方に足早に行ってしまう。
葵は何となく、笑ってしまった。
ただでさえ長距離なのだが、電波に晒される時間を少しでも減らすため、7人は時々地面より低い場所で待機したりしていた。
時間をかけてじっくり前に進んでいく。
気が付くとすっかり夜になっていた。
路地裏を抜けると、そこには大きな電波塔があった。その周辺にあるいくつかの建物の中の1つが、地下室をアジトとして借りているホテルである。
7人はホテルに入る。すると、利九が以前のホテルの時と同じように、フロントで「”E”だ」と告げた。
7人はすぐに地下へと通された。
太一「ここでは、常にいくつかの部屋を借りているんだ」
太一が百里と葵に教えてくれる。
巳六「もう寝る…もう限界だ…」
太一「もう少しガマン!」
眠気で静かにしていた巳六が太一に諭される。
7人は、一室に入った。
太一「英二、どうだこっちは?」
そこには、”英二”と呼ばれた帽子の青年が1人で居た。
英二「みんなお帰り。ここに来たってことは、何か伝えることがあったってこと?」
太一や利九は、百里や葵のことも含めてこれまでのいきさつや、これからのことを英二に話した。
利九「明日になったら、他の皆にも同じ話をする」
今はもう夜中である。
英二「それはいいんだけど、まだあの2人が帰ってなくて…大丈夫かな。今寝てるのは八重だけなんだよ。
三琴と七々は今、電波塔を見に行ってるんだ」
五月「?何でこんな時間に。危ねぇな」
五月はいつになく、心配そうな表情をしていた。
英二「七々、”破壊”する前に1回見ておきたいって言ってた。能力使う時にどこに意識を集中すればいいか知りたいんだって。
警備員が居ない夜中に行ったんだよ。俺はアジト守らないといけないから動けなかったんだけど」
百里「…破壊?電波塔を破壊するのか?」
知らない名前ばかり出てきていたので静かに聞いていた百里だが、ここはさすがに口を出した。
英二「脱出する時は、全員が電波に晒されることになるからね。全7基ある電波塔のうち、2個ぐらい破壊しておけば少しは弱まると思う。
騒ぎになると思うけど仕方ないよ。9人全員が洗脳されたらアウトなんだ」
確かにその通りだ。全員が洗脳されれば、洗脳を解くきっかけは無くなる。
五月「俺、三琴と七々を迎えに行ってくる。2人だけじゃ心配だからな」
太一「利九はここに残るよな?じゃあ俺と英二も迎えに行ってくるよ」
部屋を出ようとした五月に、太一と英二も付いていった。
巳六「七々を…頼む」
幸四「あまり暴れないで下さいね」
幸四と巳六の2人は、体を休めるために別室へと消えていく。
そこには、百里と葵と利九の3人が残った。
葵「なぁ…あんたが使う以外のパソコンって、どこかの部屋に無いか?」
葵は利九に聞いた。例のフロッピーディスクを見るためである。
利九「この部屋を出て、右側の奥の部屋にある」
葵「そうか。ありがとう」
百里と葵は、早速パソコンのある部屋へ向かった。
例えば、その中身が、知らない方が幸せなことだったとする。
それを知ってしまったとして…
その時は…
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