5.月:影が落ちる:裏











そう、きっと俺は、気になって仕方ないんだ。
この島のことと、そこに住んでいる人たちのことと、そして…
今はうまく説明できないんだ…
何でこんなに胸がむしゃくしゃするんだろう。
俺にはなんだか、この島でやらなきゃいけないことがある気がするんだ…



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
日時:不明
場所:トーキョーシティ
自分:百里


 次の日。
 5人は再び、同じ部屋に集まっていた。
利九「今日は4人に、4番街製鉄所跡に行ってもらう」
 それをきいた太一と五月が、はっとする。
太一「そういえば…あの2人、どうなったんだろ?」
五月「迎えに行けってか?」
 2人の言い方だと、既に仲間の2人が向かっているらしい。
利九「ああ。1日経っても帰って来ないのが気になったからな。あそこはもう可動していないはずだが、何かあったのかもしれない」
五月「4人で行くってことは…利九、お前1人になるじゃねえかよ」
 利九は涼しい顔をしていた。
利九「俺はここでデータの解析を進める。何も無いと思うが、何かあっても戦うより1人でこっそり逃げた方がいい。ここは街中だからな」
 太一と五月は、百里と葵の方を見る。
百里「安心しろ。私は戦いの方には自信がある。ただ、葵は戦いには慣れていない。3人で葵を守るように戦えばいい」
葵「…情けないが、返す言葉は無いな。よろしく頼む」
 4人は頷き合った。


 太一、五月、百里、葵は、4番街製鉄所跡と呼ばれた場所へ向かうために街を移動していた。
 道は極力目立たないよう、出来るだけ路地裏などの道を選んだ。
 電車などの施設は利用出来ない。徒歩では30分かかる所であった。
葵「ここが…製鉄所?」
 そこは、高層ビルであった。
百里「製鉄所がビルだと?どうなってるんだよ」
太一「仕方ないよ。変な街なんだから」
 そう言われると、何となく納得してしまう。4人は、正面玄関へ近づいて中の様子を伺った。
五月「…何か、焦げ臭えな…」
太一「まさか、動いてるんじゃないか?」
五月「バカか。もう可動してないはずだぞ」
 次の瞬間。4人は咄嗟に正面玄関から離れ、物陰に隠れる。
 中に、人の気配がしたからだ
葵「…黒スーツじゃなかったか…?」
 中に居た人物は、黒い服を見ているように見えた。
百里「スーツ着て作業してるってか。そんな奴居たら頭おかしいとしか思えないぞ」
太一「黒い作業着なんじゃないか?よく見えなかったけど」
 4人は、どこか侵入出来そうな所を探すために、外周を回りだす。
百里「ここは、何を製鉄していた所なんだろうな」
 ”跡”ということは、何かを製鉄してその役目を終えたということだ。
太一「この街の外壁だよ。ここは外壁を作るためだけに作られ、全ての外壁はここで作られ、外壁が完成した後閉鎖されたそうだ。
手に入れたデータの中にあった情報だよ」
五月「今は動いてるけどな」
 確かに、その情報が正しいなら、動いているはずがない。
太一「正しい情報だと思うんだけどな。この街の情報って、何か作られたとか、そういうのばっかりなんだよ。少ないんだ、”歴史”に関する情報が」
百里「…本当か」
 百里をはじめ、太一と五月も、住民である葵の方を見た。
葵「歴史の勉強は、したよ。この街が出来るまでのことや、先祖とか色々…
でも、この街が政府とダースに洗脳・管理されてると知った今では、学んだこと全てが洗脳するためのウソだったんじゃないかって思える」
 この街に歴史があるのだとしたら、”政府とダースが先住民や連れてきた人々を街に閉じ込め、洗脳・管理するようになった”が正しいのか。
五月「葵…だっけお前?お前、ちょっと勘違いしてるぞ。この件は全て、ダースがやってることだ。政府も洗脳されてんだからな」
葵「な…んだと!?…そうだったのか…」
 葵は何を思ったのか。手を、ぐっと握り締める。
葵「ダースさえ居なくなれば…」
百里「葵、どうした?」
 葵は我に返った。
葵「いや、何でもない。あっ…3人とも、ここはどうだ?」
 4人は侵入口を探している最中である。葵が見つけたのは、止まったエレベーターの割れた窓であった。
太一「エレベーター…使えるのか?」
葵「製鉄所が可動しているから、電力も通っているのかなと…」
 百里と葵は、侵入して様子を伺おうとする。
五月「おい、危ねーぞ。俺らが見るからお前らは…」
百里「見るだけなら、誰が入っても同じだろ」
 百里と葵が中に入った丁度その時…

 ガクン。

 エレベーターに振動が伝わる。
 刹那、エレベーターは凄い勢いで上昇を始めた。
太一「百里!!!葵!!」
 下から太一の声が聴こえた。エレベーターは止まらない。
百里「…葵、念のために戦闘準備しておけ」
葵「ああ…ワナなのか、コレ…?」
 しばらくすると、エレベーターはガクンと音を立てて止まった。表示は50F…最上階だろうか?

 ピンポーン…

 と、静まり返った中に不気味な音がこだました。ドアが開く。
 目の前には、2人の青年が武器を構えていた。
 だが、どちらも動き出さない。
 お互いが、相手が敵なのかどうかを判断出来ずに居た。
 なぜなら…
??「…何か、思ってたのと違うんだけど」
??「ですね…誰ですか、あなたたち2人は。ダースなら叩くつもりだったんですけどね」
 お互いが、ダースと敵対しているらしい。しかし、相手の見た目があまりにもダースのイメージと違うので、動き出せなかった。
百里「…私たちはダースじゃない。お前たちは?」
 青年2人は、武器を下ろす。
青年A「僕たちもダースじゃありません」
青年B「エレベーターが凄え勢いで回り始めたから、ダースが攻めてきたのかと思ったわ」
百里「私たちも、ダースの仕業でエレベーターが急に動き出したのかと思っていた」
 これで確実に分かったのは、お互いの共通の敵がダースということで間違いない、ということだった。
青年A「敵じゃないということは分かりました。なら…あなたたちは何者ですか?」
 百里と葵は、この2人が何者なのか、何となく分かってきていた。自分たちが何のためにここに来たのかを考えれば…
 だから百里は、
百里「私たちは<星>のメンバーだ」
 と名乗ってみる。
 すると、やはり…
青年B「<星>?メンバー増えたのか!何だ、そういうことかよ」
青年A「僕達の帰りが遅いから、助け船が出たってことですね」
 本当はもっと、話すべきことが色々あったのだが、横槍が入ってしまう。
??「そこまでだ!!」
 4人が振り返ると、そこには黒衣の男と、背後には黒スーツの男たちが武器を持って立っていた。
葵「おい、百里…あいつ」
百里「ああ。正面玄関に居た奴だろうな」
 百里と葵が太一たちと外周を回っている間に、上の階に上がってきたのだろうか。彼の目的は、この2人の<星>の青年であった。
 そしてこの黒衣は、洗脳ルームで見た師走の黒衣と酷似している。
 つまり、ダースだ。
青年A「あなたは、会ったことありますね。神無月でしたっけ?」
??「神無だ神無!」
 黒衣の男は、神無(カミナ)というらしい。
 ダースと<星>は、結果的に対抗し合っている。彼らのやり取りは、その道中を物語っていた。
神無「4番街製鉄所跡が動き出したという情報が入ったと思えば…やはり<星>だったか」
百里「何?ダースが動かしたんじゃ無いのか?」
 百里は、2人の青年の方を見た。
青年B「まあ、詳しいことは後で」
 そう言うと青年Bは、百里と葵をぐいっとエレベーターの中に押しやる。自身もエレベーターに乗り、青年Aもそれに続いた。
 走り出した神無たちを尻目に、エレベーターのドアは閉まる。
 エレベーターは下へ向かって動き出した。