ドリーム島を知ることとは、ドリーム島の景観や風習を知ること。
それだけじゃない。そこにはどんな人たちが居るのか…
その人たちが、どんな人たちなのか。
何を求めているのか…
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日時:不明
場所:トーキョーシティ
自分:百里
百里と葵は、寮のコンパクトに整理された葵の部屋で、床にしゃがみ込んでいた。
カーテンは既に閉めてある。
葵「…まず、何から話すか…」
百里「色々ありすぎて、何から話せばいいか分からん」
百里がトーキョーシティに来てから、本当に色々なことがあった。
俯いた百里を見て、葵は深呼吸をする。
葵「とりあえず、まとめてみるか」
こめかみに指を当てて、考えながら話した。
葵「街の外から来た百里にとって、この街はおかしい。この街にとっては、百里が…おかしい?
そして俺は…何故か外から来たことを完全に忘れていた。その後に2人で、この街がおかしい、という話をしたな」
百里「それだ!」
百里は急に顔を上げた。
百里「私たちがこの街の異様さを口にしたから、それが何かまずかったんじゃないか?」
葵「うーん…しかし、別にこの街は政府や街に口答えしただけで罰せられるような、堅苦しい街じゃないぞ?」
2人は再び黙り込む。
百里「なあ…葵」
先に沈黙を破ったのは、百里。
百里「お前、いつごろ、どこからどうやって来たのかは思い出せるか?」
葵「…思い出そうとすると、また”めまい”がするが…何とか」
葵は再び、こめかみに指を当てて考え始めた。
葵「7、8歳くらいの頃…どこか…こことは全く違う。屋敷か?両親が居たな。何だか、船に乗って移動中に、はぐれた気がする」
百里「船か」
百里も、船に乗っている時にチサトとはぐれていた。
百里「これは偶然なのか?船、めまい。私たち2人が追われていること」
その時、外の方から人の声が聴こえてくる。
百里はカーテンのスキマから外を覗いた。ここは2階なので、見下ろす形になった。
百里「…まずいな。奴らだ」
葵「!?もう…!?何でここが分かったんだ?」
黒スーツの男たちは、何やらモニターを覗き込んでいる。
百里「私たちは顔を見られている。お前の顔を見て個人データを調べたんじゃないか?」
葵「それで住んでいる所がバレたのか…くそっ」
百里は黒スーツの男たちが警棒のような武器を持っているのを確認し、服の中から武器のような物を取り出しす。
葵「ちょ、ちょっと待て!!政府の人間と戦う気か!?」
慌てる葵を横目に、百里は冷静に戦う準備をしていた。
百里「少し考えてみたんだが…奴らが政府の人間だと何故分かる?
私たちが政府に行く話をしているのを盗み聞きして待ち伏せしていた、何かの目的を持った族かもしれない。
政府に追われる心当たりも無いんだろ?奴らを退けて政府ビルに保護してもらおう」
葵「…それは、そうかもしれないが…」
葵は少し考えた後、壁に掛けてあった金属の棒を手に取る。
葵「いけるか…」
百里「戦えるのか、お前?」
葵は、型の取り方を復習しながら言った。
葵「一応、学校で習うからな。俺の成績はまあ…パッとしなかったが」
百里「そうか。じゃあ、何かあったら私の後ろに隠れていろ」
葵「いや、さすがに女の子に後ろに隠れるのは…」
トントントン…
外階段を上る足音が聴こえてくる。
百里「…来るぞ。敵が動けなくなったスキに走れ」
動けなくなる、状況に出来ることが前提の話だが。
葵「分かった」
葵には、そう言うことしか出来なかった。
ドンドンドン!!
葵の部屋の扉が強く叩かれる。やはり、奴らの目的はこの2人だ。
扉を叩く音は、徐々に強くなっていった。恐らく蹴り飛ばそうとしているのだろう。
葵「2階じゃなくて1階だったら、窓の外から脱出できたのにな…」
百里「1階だったら窓からも侵入されて、四面楚歌になっていただろう。2階で良かった」
葵「そ、そうか…確かに」
やはり百里の方が一枚上手だ。
扉もそろそろ限界だろう。2人は武器を構えた。
ドカッ!!
大きな音と共に、扉は打ち破られた。
黒スーツの男たちが侵入してきた刹那…
百里が動き出した。指し棒のような武器を伸ばして展開し、男たちの胴体をピシッピシッとそれで叩く。
すると男たちの体は痺れ、動けなくなった。
葵「それは…?」
百里「敵の体を痺れさせる武器だ。今がチャンスだ葵」
2人は外へ向かって走り出す。
入口から外へ出た瞬間、まだ1人が外に居ることに葵は気付いた。
葵は武器を構え、咄嗟に黒スーツの男を殴り倒す。
2人は外階段を下り、政府ビル群へ向かって走った。
百里「1人倒したじゃないか。偉いぞ葵」
葵「お前が数人で俺が1人…何か情けないな…」
2人は走りながら話す。
葵「百里、政府ビルに向かって本当に大丈夫なのか?奴らが政府の人間じゃない証拠は無いぞ」
百里は、展開していた武器を服の中にしまう。
百里「黒スーツの奴らは隠密行動している様に見えた。
政府が犯人を捕まえようとするなら、交通規制なりニュースになるなり、もっと大事になっているはずだ」
葵「なるほど…」
武器をぎゅっと握りしめた。
百里と葵は、数時間前に居た政府ビル群の、一際高いビルの前へ再びやってきた。
葵「よし…誰も居ない…!」
2人は正面玄関からビル内へ入る。百里は、受付に居た男に話しかけた。
百里「すみません、私たち、怪しい人たちに追われていて…えっ…?」
百里の言葉はそこで途切れた。
なぜなら…
ロビーの奥の方から、黒スーツの男たちがぞろぞろと出てきたからだ。
男「怪しいのは、お前たち2人だ」
百里「…政府の人間だっただと…そんなバカな!!」
男たちは、じりじりと2人に詰め寄る。入口は閉められ、脱出することは出来ない。
男「政府の人間ではないよ、”正確には”な。2人に質問だ。お前たちは、トーキョーシティの外から来たのか?」
1人の男が質問する。百里と葵は、武器に手をやった。
百里「ああ、そうだよ。それがどうした?」
葵「…俺も、幼少の頃に外から来たようだ」
それをきいた男は、他の男たちにすぐに指示を出した。
男「捕らえろ!!洗脳ルームへ連れて行け!」
洗脳ルームとは…?さらっと恐ろしい単語が飛び出す。
百里「葵、スキを作って逃げるぞ。洗脳とか明らかにヤバそうだしな」
葵「くそっ…どうなってるんだ一体…」
2人は戦闘体勢に入ろうとした。だが…
プシュッ、と音がして、2人の周囲に煙が広がる。
百里「これは、催眠ガス…!?まずい…!!」
煙を振り払おうと手で仰ぐが全く意味がなかった。
最初に葵が崩れ落ちる。
百里「葵!!!」
そういう百里の体からも、徐々に力が抜けていく。
百里「く…そ…」
崩れ落ちた百里は、もうろうとした意識の中で、最後にこちらに近づいて来る黒衣の男を見た。
そこで百里の意識は途切れた。
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