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日時:不明
場所:不明
自分:不明
いったい何のために 少女がここに来ることになったのか
それは
目が覚めた時、そこは見知らぬ港であった。
意識を失う前、目の前には確かに港があったので、無事に港に辿り着けたということだろうか。
少女は立ち上がった。
周りを見回す。そこには何故か少女が乗ってきた船も、ここまでを共にしてきた人物も見当たらない。
少女「あいつ…勝手に動きやがったな」
少女の口調はとても荒々しかった。
港を一通り眺めてみると、美しい海と立派な船、埋め立てられたであろう綺麗に整理された港であった。
港に面した道路を、若者たちが楽しそうに話をしながら歩いている。
この街の雰囲気は、少女が住んでいる大陸の街によく似ていた。
少女はとりあえず、情報を得るために歩いていた若者たちに尋ねた。
少女「なあ…いや。あの、この街は何という名前ですか?」
若者たちはそれをきくと、互いに顔を見合わせる。
そして、嘲笑しながら少女を見た。
若者「名前って…”トーキョーシティ”に決まってるだろ。何言ってんだよ」
少女は若者の言い方に疑問を抱きつつも、話を合わせた。
少女「あ、そうですよね。すいません」
若者たちが通り過ぎると、ぶつぶつと不満が口からこぼれる。
少女「”決まっている”という言い方は何だ。別の街から人が来ることを想定出来ないのか…全く」
だが、とりあえず街の名前は分かった。少女は”彼”と落ち合うために動き出すことにした。
少女は見回しながら歩き回る。
一体どうやって探せばいいのか…
少女「…船は…」
一番分からないのは、”彼”が居ないだけではなく、船も見当たらないということだ。
まさか船でどこかへ向かったということは、さすがに無いだろうが。
少女は突然頭を押さえた。
少女「うっ…!」
さっきまで気絶していたのだ。頭が痛いのも不思議ではない。
少女はくらくらしながら、雑居ビルの横を通り過ぎようとした。
すると…
??「危ない!!!」
上から男の声が降ってくる。
少女が上を向くと、バケツが落ちてこようとしていた。
まさに一瞬。
少女は持ち前の反射神経でギリギリの所をヒラリとかわす。
バケツは音を立てて地面に落ちた。中に入っていた水が飛び散る。
少女は涼しい顔をしていた。
しばらくすると、ビルの横階段から青年が大急ぎで現れた。
青年「おい、大丈夫か!?」
少女「まあな。下に居たのが私じゃなかったらどうなっていたか…」
青年「ああ、反射神経の良さそうな人で良かった…すまない、バケツを落としてしまったのは俺だ」
聞くところによると、青年は掃除屋のアルバイトをしているらしい。
少女はこの青年にも質問をしてみた。
少女「なあ、ここはトーキョーシティというらしいな」
すると…
青年「ああ。何言ってるんだよ、そうに決まってるだろ」
少女「…」
再びあの若者のような回答。少女はイライラした。
少女「”決まってる”とは何だ?他の街から人が来たことは無いのか?」
青年はそれをきくと、何故かぼーっとし始めた。
少女「…おい、どうした?」
青年は我に返る。
青年「…外…?外に街なんてあるのか?」
少女「…は?」
少女は更にイライラした。
少女「何なんだこの街は!?若者が、世間知らずにも程があるぞ!!」
青年「…え、す、すまない」
少女の剣幕に、思わず謝る。
少女「もういい。私はもう行くからな」
青年「本当に悪かった…」
それは、発言に対してだけでなく、先程のバケツの件を含めての謝罪であった。
少女は歩き出していたので、聴こえていたのかどうかは分からないが。
少女は情報を集めるため、交番を訪ねていた。
少女「…ということで、知り合いが船ごと居なくなったんだ…居なくなったんです」
警官「なるほど」
警官は、メモを取りながら少女の話をきいていた。
警官「キミ、名前は?」
少女「名前?私は…」
咳払いをする。
少女「ユリ、です」
少女の名前はユリ。赤褐色のポニーテールが特徴だ。
警官「外からの船で…なるほど…珍しいこともあるもんだ」
警官の「珍しい」という言葉を、ユリは聞き逃さなかった。
警官「船は、不振な物だとして政府に回収された可能性もあるな。その中に誰かが居たら、そいつも連れていかれたかもしれん」
ユリ「…そうか。政府の所在地はどこにあります?」
警官は地図を机の上に広げる。
警官「ここだよ。トーキョーシティの中央1区にあるビル群さ。外に出て眺めてみれば分かるよ、他のビルより高いビル群だからね」
ユリ「分かった、ありがとう」
ユリは一礼をし、交番を出て行った。
外に出ると、日が暮れかけていた。
ユリは景色を見回す。すると…確かにある。一際目立つビル群。
5、6軒ほどの背の高いビルが、1ヶ所に密集していた。
じっと見つめていると、また頭に痛みを感じる。痛み…というよりは、くらくらする、といった感じだろうか。これは”めまい”か。
ユリは自分の体調と時刻のことを考え、一晩止まる場所を探すことにした。
再び交番を訪ねようと、後ろを振り返ろうとすると…
ドン。
と、誰かにぶつかった。
ユリ「痛っ…!す、すまない…」
??「…あっ」
ユリ「あっ」
思わず声が揃う。
ぶつかった相手は、先程のバケツの青年であった。
青年「大丈夫か?ぼーっとしていた様に見えたが…」
ユリ「だ、大丈夫だ」
ユリは、何となくこの青年に弱みを見せたくなかった。
ユリ「おいお前、この辺りに泊まれる…」
話を逸らそうと、交番で聞こうと思っていたことをこの青年に尋ねてみる。
が…
ユリ「…うっ…」
めまいが悪化した。
よろけたユリを、青年が両手で支える。
青年「おい、しっかりしろ!!」
ユリは息を切らしながら耐えた。めまいは少しずつ治まっていく。
青年「…大丈夫か?」
ユリ「…大丈夫…だ…」
ユリは青年の手から離れ、何とか自分1人で立つ。
ユリ「何だか…夢の中に居るみたいだ。この街に来てから…」
青年「何言ってるんだよ?夢じゃないぞ。本当に大丈夫かお前…」
ユリは、暗くなりつつある街を再び見回す。
様々な建物、ビル、そして政府のビル群。
よく見ると…港がある方向以外は…外壁?かなり遠くではあるが、地平線に該当する辺りに、外壁のような物が見えた。
ユリ「…この街…外壁に囲まれているのか?」
青年「ああ、言われてみればそうだな」
ユリ「戦争でもしてるのか?外壁があったり、外から人が来ることを想定していないようだし…」
そう考えれば、つじつまが合う。だが。
青年「いや、戦争なんてしていないぞ」
ユリ「…???」
更に混乱した。
ユリ「…うっ…」
混乱と連動するように、めまいが再びユリを襲う。
青年「待ってろ、病院に連れていくからな」
ユリ「いや…いい」
青年の目を、ぼやけた目で見つめる。
ユリ「…あまり、目立った行動は、取りたくない…」
青年「そんなこと言ってる場合か!」
ユリ「あいつ…私が居ないと何も出来ないんだ…早く迎えに行ってやらないと…」
そこで青年は初めて、少女が誰かと会おうとしていることを知った。
青年「分かった、とりあえず病院に一泊しよう。めまいを治す薬か何かを貰って、次の日にそいつを迎えに行こう。いいな」
ユリ「…」
ユリは、ようやく頷いた。
ユリ「分かった、そうする」
青年「病院まで付いていってやる」
病院の場所が分からないユリは、青年の意見に素直に従った。
ユリとは一体、何者なのだろうか。
いったい何のために ここに
→2.風