13.想い出して

13.想い出して

 同時刻…
 ラング、エン、ムジカの3人はイーストシティ外れのスラム街でレギュレート兵器と対峙している。
 そしてシャル、アルトは元帥執務室でアイオラと対峙していた。

 元帥執務室にて…奥にアイオラ、入り口側にシャルとアルト。2間を区切る透明のシャッター。アルトとシャルは目配せをする。すると、アイオラによって閉められたシャッターをアルトはディライトで攻撃し始めた。
 すると、先程まで冷静だったアイオラはわなわなと肩を震わせ始め、アルトに対し強く激昂した。
「まだ反抗を続けるのか…!?アルト、お前は兵器である以前に”ホウプの子孫”だろう!?リマインド・コアのことを忘れたのか。お前の運命は既に決まっている、何をしても無駄だ」
 シャルは、以前アルトが「リマインド・コアで眠りにつく」と話したことを思い出した。しかしそれはアルト自らが否定したはずである。
「…」
 アルトはうつむき少し考えた後、顔を上げてアイオラのことをまっすぐ見ながら言った。

「確かに選択肢は少ないかもしれない。でも…どれを選ぶのかは僕が自分で決める」

 アルトとアイオラは、睨み合いながらしばらく見つめ合った。
 その時。
 何かを知らせるサイレンが鳴る。それに反応するようにアイオラがモニターを見ると、モニターのレギュレート兵器の持つ双剣の光が赤く光ったのだ。
 アルトは青ざめた。
「…アリスちゃん…?」

 ――アリスと”懐剣:ラブ”が、ついに覚醒したのである――

 それを見て、アイオラは笑い狂った。
「ついに…ついに赤い光が目覚めた…!!この時を待っていた!!!!!」
 アルトはモニターの様子をじっくり観察する。暴れ回るレギュレート兵器…だが、双剣の光は、まだ青緑と赤が混じりあっているような状態であった。アルトは声を絞り出す。
「まだ完全じゃない…赤い光が完全に目覚めたら大変なことになる…」
 シャルはモニターを見ながら「どうすりゃいいんだ!?」と叫んだ。
 するとアルトは何かを思い出したのか、はっとする。シャルの方を振り向きながら言った。
「…サドネス…?そうだ…ラングに連絡しなきゃ…!!」

『…アイオラ』

 その時、アルトが喋り終わるのとほぼ同時に、部屋に突然声が響き渡った。
『レギュレート兵器の試運転、無事に済んだわね。アイオラ、あなたはもう用済みよ』
 アイオラは周囲を見回しながら声の主に話しかけた。
「…誰だ?」
 スピーカーからの音声である。声が加工されていて誰なのかは分からない。シャルとアルトも周囲を見回した。
『本当はあなたにも最後まで見ててほしかったけど、あなたが居ると計画が狂うのよ。悪く思わないでね…あら、”兵器”の子たちも居るの…丁度シャッターが閉まってるわね、じゃあ大丈夫よね。ちゃんと逃げてね』
 どこからかこの部屋を見ているのか、シャルとアルトのことも見えているようだった。
『さようなら、アイオラ。あなたの才能は認めるけど、人間としては最低だったわ。ああ、恐ろしい恐ろしい…』
 その一言に、アイオラは何かに気付いたのか、目を見開いて絶叫する。
「…お前…まさか…!!!!!」

 刹那。

 元帥執務室は、爆発物が仕掛けられていたのか四方八方から爆発した。
 爆発は10秒ほど続いた。
 あちこちに破片が飛び散り、部屋は煙に包まれる…
 シャルとアルトはシャッターのお陰で助かったのだが、シャッターにひびが入って破片が飛び散り、爆発による揺れで落ちた天井の破片が2人を襲い、シャルは衝撃で動けないでいるアルトを背中で庇った。
 シャルが振り返ると、シャッターの奥は瓦礫でめちゃめちゃになっており、アイオラの姿を確認することは出来なかった。シャルは「何が起きたんだ…?」と呟くと、すぐにアルトに呼びかけた。
「アルトくん、とりあえずここから離れよう…アルトくん?」
 するとアルトは、目を見開いて呆然と立ち尽くしていた。

 そう…アイオラは、恐らく死んだのだ。あっけなかった。

 アルトは、父の死に悲しんでいいのか、束縛からの解放に喜んでいいのか分からなかった。
 頭の中ですぐに処理することができず、完全に思考停止してしまっていた。
「アルトくん!!しっかり!!!」
 シャルが両肩を掴んでがくがくと揺らしても、アルトは反応しなかった。シャルは周囲を見回す。
(休ませないとまずい…)
 部屋もいつ崩れるか分からないし、人が集まる可能性もある。シャルはアルトの背中を押して歩かせ、廊下を歩いて別の小部屋に移動した。
 とりあえずアルトを椅子に座らせ休ませる。アルトはぼーっとしており、うつむくような形になった。2人とも、破片を浴びて怪我をしていた。シャル自身も2人で休んだ方がいいと判断した。
 安全を確認し、状況と情報を伝えるためにラングに電話する。丁度レギュレート兵器から避難していたラングが電話に出た。
『シャル、どうした?』
「ラング、とりあえずこっちの状況だ。まずは、2人とも消耗してるから合流は難しそうだ」
『元帥はどうなった?』
「…何か知らない奴に爆破されて…多分、もうダメだ」
『…!!…そうか…』
 ラングは、確かに色々な人に恨まれていそうだ、と少し思った。シャルは続ける。
「そっちの状況はモニターで見た。で、情報なんだけど…レギュレート兵器は『無情の”壊”剣』でのみ破壊できるんだって。アリスに当たらないように何とか出来ないかねえ?」
『…なるほど。確かに他の人の攻撃は効いてなかったな…でも暴走している状態でアリスに当たらないようにしないといけないんだな…どうしたらいいんだ…?』
 そこで、ぼーっと座っていたアルトが突然ばっと立ち上がり言い放った。
「…シャル、電話かわって!!」
 会話はシャルがデバイスの音声を切り替えていたのでアルトにも聞こえていた。アルトはシャルからデバイスを取ると、すぐに電話に出た。
「ラング、赤い光で感情がおかしくなってもサドネスで抑制できるって確かガネットおじさんが言ってた。アリスちゃんを抑制したら兵器の暴走が止まるかもしれない…」
『ああ、確かに言ってたな。でもどうやって抑制するんだ…?』
「…うーん…たとえば…結界で包むとか…?」
『他に案は無いんだ。ちょっとやってみる。アルトはもうゆっくり休んでいいからな』
 アルトの息が上がっていることにラングは気付き、そう声をかけた。
「…うん…気を付けてね、ラング…」
 アルトが答え電話が切られると、シャルは肩で息をするアルトから、デバイスをそっと受け取り再び座らせた。
「はい、アルトくんはここまで。お疲れ様。後はラングたちに任せようぜ。大丈夫、あいつらならうまくやってくれる…」


 イーストシティ外れのスラム街。
 ラングは電話の内容を踏まえ、作戦を考えた。デバイスの音声を切り替えていたので会話はエンとムジカにも聞こえている。ラングはエンとムジカに見守られる中、口に出しながら考えをまとめる。
「結界は兵器を包む大きさには出来ない…包むならコアだけだな…結界は至近距離じゃないと作れない…兵器の手を攻撃して無効化できるか…?」
 考えのまとまったラングは2人に告げた。
「レギュレート兵器の手に、エンのメリーとムジカのアイラで攻撃してくれ。2人の懐剣は遠距離だから出来るはずだ。兵器が怯んだ隙に結界を使う」
「了解」
 2人は同時に答え、すぐにレギュレート兵器の元へ戻った。

――暗くて苦しくてよく分からないわ。全部破壊したら楽になるのかしらね

 しかし、再びレギュレート兵器と対峙すると兵器は暴走し動き回っており、2人は構えたまま攻撃を仕掛けることが中々出来なかった。建物の破片が3人を襲う…
 エンは構えたまま呟いた。
「だめ…動きが早くて狙いを定められない」
 下手に攻撃して、コア…アリスに当たってしまったらと考えると踏み切ることもできなかった。
 ムジカはコアの窓を見る。アリスは目を閉じていて、こちらの様子は見えていないだろうとムジカは思った。実際は機器の影響で少し見えているのだが、ほんの少しで確かに個人を判断できるほどでは無かった。
 ムジカは少し考え、小声で呟いた。
「…アリス、私たちの声聞こえないのかな?」
 それを聞いたラングは頷きながら言った。
「…何でも試すしかない。アリス!!!聞こえるか!!??」

――声…声が聞こえる…誰?

「アリス!!!!!アリス、俺だ!!!!!」

――…ラング…?

 その時…レギュレート兵器の動きが一瞬止まった。
 3人は咄嗟にコアの窓のアリスを見る。表情は変わらない。だが…
 エンはアリスの顔を見ながら声を漏らした。
「…まさか…声が聞こえてるの?」
 それを聞いたムジカは「アリス」と呟き、ぼろぼろ泣きながらアリスの名前を呼んだ。
「アリス!!!!!アリス!!!!!」
 兵器はがくがくとうごめいている。

――みんな…みんなに会いたい…

 そして再び動きを止めた。

――不思議。みんなのこと想い出したら少し楽になった…

 そしてついに…攻撃が完全に止まった。
「今だ!!」
 ラングが叫ぶとエンとムジカは攻撃を仕掛け、2人の攻撃は兵器の手に当たった。
 動きを完全に止めた兵器にラングが走り寄り、コアの部分に結界を張った。すると兵器の懐剣が解除され、兵器はその場にしゃがみ込むような姿勢になった。サドネスの光でアリスが落ち着いたようだった。
 ラングは結界を解除するとすぐに駆け寄り、コアの側面にある蓋のようなところをいじるとコアが音を立てて開く。中には、黒い無数のケーブルに繋がれた、気を失ったアリスが居た。

 この様子を見てラングは思い知る。封印とは何なのか…ただレギュレート・コアに入れられてる訳では無い。がっしりと繋がれ完全に一体化していた。だから”封印”と呼ばれているのだ…

 ラングは無数のケーブルをしばらく引っ張ったりしたが、全く外れなかった。ラングは焦りながら叫んだ。
「どうすりゃいいんだ…!!」
 その時…ラングの元に謎の女性が走って来る。
「貸しなさい!!私に任せて!!」
 女性はそう叫ぶとケーブルを一本一本丁寧に外し、アリスの体はやっと自由になった。アリスが両手に持っていた懐剣は既に解除されていた。ラングがアリスを抱き上げて兵器から下ろすと、すぐにエンとムジカも駆け寄った。そしてラングは、腕の中に居るアリスに呼びかける。
「アリス。アリス。しっかりしろ」
 アリスは、ゆっくりと目を開けた。

「…ラング…?」

 アリスは、ラングの名前を呼んだ。ラングとアリスの目が合う。意識がある…
 ラングが近くにあったベンチにアリスを座らせると、アリスはしっかりとそこに座った。
 ムジカは、涙を流しながらアリスをそっと抱き締めた。
「…アリス…遅くなってごめんね…」
「…ムジカ…?」
 アリスはまだぼーっとしているが、ムジカの名前もしっかり呼んだ。エンは涙を流しながら、抱き合う2人を包み込むようにそっと抱き締める…

 こうして、やっとアリスを取り戻すことが出来たのだった。

 ラングが3人を見て、ふう…と息を吐くと、先程の女性がラングに話しかけてきた。
「良かった…まさか元帥がここまで危険なことをするなんて…やりすぎだわ…」
「あなたは…」
「私は元帥の助手のジェミニよ。レギュレート・コアと兵器の開発に協力していたわ。だけど、こんなつもりで協力したんじゃない…」
 そういえば、アイオラの近くに居る助手の女性をラングは何度か見たことがあった。言われてみれば見覚えがある。
 ラングが周囲を見渡すと、先程まで広がっていた霧は晴れていた。ラングが「あの霧は何だったんだ…?」と小声で呟くと、それにジェミニが答えた。
「あの霧も、私が開発させられた装置”輝煌フィールド”によって発生させていたの。輝煌石が無くても霧を発生させることが出来るのよ…『無情の”壊”剣』を覚醒させるためだったのね。これも後ほど破棄するわ」
 ラングはレギュレート兵器に近付いた。確か『無情の”壊”剣』なら破壊できるとシャルが言っていた。ラングが兵器の前でサドネスを展開すると、そこでジェミニが出てきて止められる。
「ちょっと待って、破壊する前に兵器とコアを分離したいわ。コアは本来は平和のためのものなのよ。分離したらあなたたちに兵器部分の破壊をお願いすると思うわ」
 ラングは少し悩んだが、彼女のお陰でアリスを助け出せたのもある。
「…分かりました」
 ラングはジェミニを信じそう答え、懐剣を解除した。
 ジェミニが兵器をいじったりデバイスで電話をかけたりし出したので、こちらは彼女に任せることにした。ラングはシャルに報告するために電話をかけることにした。
『ラングか、どうなった!?』
 シャルは現状モニターを見ることが出来ないのでこちらの様子を知らない。
「シャル、姫はちゃんと助けたぞ。意識もある」
『そうか。信じてたぜ、ラング』
「アルトはどうだ?」
『だいぶ落ち着いてきたかな。今はちょっと、眠そうだしな』
「そうか、良かった。とりあえずアリスを念のために病院に連れて行こうと思う。そこで合流しよう」
『了解、リーダー』

 ラングたちは救急車を呼び、シャルとアルトは騒ぎの隙をついて脱出しそれぞれ病院へ向かった。
 アリス以外の5人も怪我をしていたので手当を受ける。
 アリスは検査の結果、衰弱していたが異常なしだった。しばらく入院して体調を整えることになった。

 5人で病室に入ると、そこにはベッドに穏やかな表情で座っているアリスが居た。
 アリスは皆に気付き驚いた表情をすると、「…みんな…ごめんなさ…」と謝りかける。しかし途中で止め、笑顔を作りながら言った。
「…みんな、ありがとう」
 それを聞いたムジカは涙ぐみながら呟く。
「えへへ…アリス、ちゃんとありがとう言えたね」
 アリスは頷き、穏やかな様子で続けた。
「父さんも怪我をしていたけど無事だったって。政府ビルに軟禁されてたけど助け出されたみたい。みんなのおかげよ…ありがとう」
 ラングは笑顔で「そっか、良かった」と答えた。思い出せば、事の発端はコーラルが人質にされたことだったのだ。コーラルはたまたま部屋の近くを通りかかった政府関係者の手により助け出され、怪我はしていたが命に別状は無かったとのことだ。
 ムジカはアリスの手を取り、笑顔で言い放った。
「よし、こういう時は手を繋ごう!」
 ラングは苦笑しながら「え、また?」と言ったが、皆迷うことなくすぐに手を出し、6人はほぼ同時に繋がった。病室で大声が出せないので掛け声を出す訳でも無く、アリスを始め皆思わず笑ってしまう。アルトもきょとんとしていた。
 シャルは笑いながら言った。
「はは、今回手え放すタイミング分かんねーな」
「じゃあこのまま6人で帰ろう!」
 ムジカがそう言い放ったので、エンも苦笑しながら言った。
「ふふ、確かにアリスも連れて帰りたいけど、まだダメだよ。ね、アリス」
「えー!!」
 このやりとりにより、6人の緊張が一気に解ける。皆は笑いながら、名残惜しく思いながらもそっと手を放した。

 ――やっと6人で再会できたことを実感する。皆笑っていたが、内心泣きそうになっていた。

 しばらくして、頭に包帯を巻いたコーラルが入室してくる。
「…アリス」
「父さん…」
 コーラルはすぐにアリスを抱き締める。2人は涙を流しながら抱き締め合う。
 5人は、抱き締め合う2人の様子を見守りながら、そっと部屋を後にした。


 病院を出てすぐに、5人は何と、ホープ帝国の皇帝に直接呼び出された。ラングのデバイスに直接連絡が来たのだ。
 5人はすぐに政府ビルへ急いだ。

 5人は政府ビルの最上階にある、皇帝の居る謁見の間に入室した。
 そこには…白髪の穏やかな表情をした男が立っていた。彼が「レオ皇帝」である。ホープ帝国で最も偉い、軍の中でも元帥の上である、最も高い地位である大元帥である。年齢は60代、ラングたちが生まれるより前から20年以上は皇帝の座に君臨しているという。5人とも、こうして皇帝と直接会うのは初めてだった。
 皇帝は並んでいる5人を見回すと、ゆっくりと頭を下げた。皆、驚いて「えっ」と声を上げてしまう。エンは「そ、そんな、やめて下さい」と慌てて言った。
 皇帝は頭を上げてから、申し訳なさそうに言った。
「ホープ帝国の元帥である立場の人間が独断で行動を起こし、結果的に学生に対し任務とは全く関係の無い、不必要な怪我をさせました。謝っても謝り切れません。申し訳ありません」
 皇帝の話によると、今回のアリスを巻き込んだ行動はアイオラが独断で起こしたことで、レギュレート兵器は危険だと判断され研究は打ち止めになったとのことだ。
 皇帝は皆を再び見回し、真剣な表情で言った。
「アイオラが遺体で発見されたそうです。アイオラは危険行為とコーラルの軟禁の罪では死亡のまま書類送検ということになりました」
「…」

 これで、アイオラが死んだことが証明された。
 アルトを始めとして、皆、どういう反応をすればいいのか分からなかった。
 確かにアイオラのせいで散々な目にあった。
 だが、改めて冷静に考えると、理由がどうであれ、6人が生まれたのはアイオラのお陰でもあるのだ…
 シャルも、アルトがアイオラへの想いを捨てきれずにいた気持ちがほんの少しだけだが理解出来てしまった。これは、好きとか嫌いとか、そういう次元の話では無い。

 皇帝は最後に、穏やかな表情をしながら言った。
「全員、アイオラが原因で怪我をしてしまいましたね。特例としてしばらく在学したまま休養に入って下さい。任務をこなさなくても減点はしません」
 ラングは帰り際に、皇帝に気になることを聞こうとした。
「…皇帝…その…」
「何ですか?」
「…いえ、何でもありません」
 だが、ラングは少し考え今回は見送ることにした。


 5人はとりあえず寮に戻ることにした。アリスがまだ帰って来ていないが、5人は一旦男性陣のリビングに集まった。
 ラングは皆を見回しながら言った。
「色々予定が変わりすぎたし、ちょっと今後のことを考えるか…」
 シャルはラングに質問する。
「アイオラももう居ないし寮にも戻れたな。退学は無しってことでいいのかな?」
「うーん…アリスが帰ってくるまでは寮で現状維持だな。退学するかどうかは改めて考えよう」
 そこでムジカが話に入る。
「極夜楽しかったし、あたしは退学でもいいけど」
 それに、シャルも同意した。
「俺も退学の線は捨てない方がいいと思う。アイオラが爆破された時、謎の声が聞こえたんだ。あれは誰だったんだろうな…アイオラが居なくなったら平和になるのか?俺は正直怪しいと思う。それに…皇帝を信頼していいのかも微妙だ。レギュレート兵器とかコアとか、皇帝はどこまで知ってたのかねえ…」
 シャルが続けた話にラングも同意する。
「それは俺も思った。さっき聞こうか迷ったくらいだ。もし何か知っていたとしたら怪しまれると思ったから結局聞けなかったけどな。怪我が完治するまでは下手に動けないし…」
 ここで、エンが話をまとめた。
「どちらにしろしばらくは極夜に戻れないよね。一応母さんに電話するね。連絡しそびれたし。今…出るかな?」
 エンが代表として、心配しているであろうメノウに電話をした。
「母さん、とりあえず安全になったから寮に戻れることになったよ。急でごめんね」
『ニュースで見たわよ。アイオラのことよね…』
 メノウは多くは語らなかった。レギュレート兵器のことはニュースで報じられなかったが、アイオラが爆発に巻き込まれて死亡したことは報じられたのだ。
「うん。今後のことは分からないけどしばらく寮で過ごすと思う。ちょっと極夜での生活も名残惜しいけどね」
『みんなが元気ならそれでいいわよ。また遊びに来てね』
「うん、分かった。落ち着いたら6人で行くね」
 そこで、横からムジカが電話に話しかけた。
「お母さん、また会いに行くね!」
『あら、ムジカ。楽しみにしてるわね』
 エンは電話を切ると、ふう…と息をついて皆に言った。
「退学するかどうか決まるまではこれでいいよね。変な心配かけたくないし」
 ラングは頷きながら答える。
「そうだな。しばらくはおとなしく休養するか…今日はゆっくりしよう」
 そして今日はすぐに解散となった。

 久々に寮に戻ってくると、まるで何も無かったかのような…全てが夢のように感じられた。皆、今日は頭をからっぽにして、ぐっすりと眠った。

>>14.花言葉