リーダーの少年と、盾の少年少女。そしてシャルとムジカ。
臨時で組まれた名も無きチームは、崩壊したジェイド地区に到着した。建物は爆発により半壊・全壊しており、そのまま放置されたからなのか風化し始めていた。爆発後はエネルギーが常に噴き出しており輝煌の濃度が高いので、あちこちで機械や機械兵が動き回っている。霧が立ち込める…とにかく濃度が凄い。懐剣を展開していなければ数分で失神してしまいそうな勢いだ。
リーダーの名前はトーラスである。トーラスはシャルとムジカに言った。
「2人は俺たち3人が守る。安心して案内してくれ。…故郷だもんな。少し心苦しいけど…」
「了解了解。俺らなら大丈夫。道はこっちだ」
シャルはそう答え、案内を続けた。
知っているが変わり果てた道だ。シャルは、出来るだけ心を無にしながら案内した。時々、ムジカが笑いながら「あっちじゃない?」「こっちじゃない?」とシャルをアシストした。
大きな交差点のような、開けた場所に到着すると、複数の機械と機械兵に囲まれた。
トーラスはメンバーに告げた。
「全員懐剣展開!!俺が片付ける。盾2人はシャルとムジカをしっかり守ってくれ。シャルとムジカは余裕がある時に援護してくれれば大丈夫だ」
シャルは、前に立つトーラスの背中に話しかける。
「…あんた、優しいな」
「2人に何かあったら、ラングに申し訳ないからな」
「ラングと知り合いか。なるほど。頼りになるな」
シャルとムジカは出来るだけ戦闘に参加した。正直、何かをしている方が気が楽だった。
道の説明は、ほぼシャルが行った。というのも、ムジカは案内としてチームに入ったのだが、あまり道に詳しくないようだったのだ。ムジカはきょろきょろと見回しながら、笑顔で言った。
「不思議。故郷なのにあんまり道が分かんないや。孤児院変えてばっかりだったし仕方ないね~」
「…実家の場所は?」
シャルの質問に、ムジカは答える。
「それも分かんないの。えへへ、ごめんね」
「…そっか」
ムジカは幼少の頃に両親を失っており、その後は孤児院を転々としていたのだ。同じ場所に留まっていなかったので道に詳しくないのである。
しばらく歩いていると、シャルは足を止めた。そして、瓦礫となった街の景色を眺める。
「…」
そう、ここは…シャルが住んでいた家の側なのである。
記憶が蘇ってくる…
少し体が悪かったけれど明るかった父さん、力持ちでいつも豪快だった母さん、
シャルは蘇ろうとする記憶を強引に心の奥に押し込めた。
胸がえぐられるような気持になった。これは悲しみだ。やっぱり、悲しいのだ。
『…その時のこと…昔は立ち直れなかったけど、今は正直、よく分かんねーんだよな…もう考えたって無駄だし。何か現実じゃなくなってきてるっていうか。乗り越えたとか、この悲しさを糧に、とか言えたら良かったんだけどねえ。よく分かんねーんだ…もう…』
これは先日、ラングに言った言葉である。
(よく分かんないというか、悲しすぎてもう忘れたいんだろうなあ、俺)
「…シャル」
「…ん?」
突然話しかけられ、シャルははっと我に返る。景色をぼーっと見つめていたシャルに、ムジカが話しかけてきたのだ。
シャルは無意識に感情を読み取られないよう、苦笑しながらムジカに答えた。
「あーちょっと…懐かしいと思って」
「家?」
「…ああ」
他のメンバーもそれを察しており、全員立ち止まってシャルを待っていた。シャルは笑いながら皆に呼びかける。
「あーみんなごめん。さあ、行こうぜ」
皆が静かに頷いて歩き出そうとすると、ムジカはシャルの顔を覗き込み、こう聞いた。
「…もうちょっと居たい?早く離れたい?シャルの好きにしても大丈夫だよ!」
シャルはムジカの目を見つめ、真剣な眼差しで答える。
「…お前だって辛いだろ」
「…あたしは平気なの。あたしは家族と別れた記憶が無いから…覚えてる方が辛くて悲しいんじゃないかって思ったの」
『父さん…!!!!!母さん…!!!!!』
「…」
確かにそうかもしれない、とシャルは思った。想い出が多ければ多いほど辛いのかもしれない。
ならムジカの辛さは自分より少ないのか。それも全く違う。ムジカには、また別の苦しみがあるのではないかとシャルは思った。ただ、それが何なのかと言われるとよく分からなかった。
シャルとムジカは同郷として気持ちを共有できる部分はある。だが、所々違う所もあり、お互いそこに興味を持ち、そこを知りたいと思い、探り探り話をしているのかもしれなかった。
輝煌石がある場所に近付くにつれ、地面が崩れている場所が多くなってくる。どんどん近付くにつれ悪化していった。
シャルは途中で異変に気付いた。地形が明らかに知っている物と違う。そこは崖になっており、道は途切れていた。シャルは辺りを見回しながら言った。
「こんな所に崖は無かった。崩れたのか…?」
「大きな爆発があったもんね」
ムジカはそう答え、崖の下を観察する。
「この崩れ方…新しい?」
その時…
ドォン。
崖下の、この場所とほど近い場所が爆発した。輝煌石があった場所までまだ辿り着いていないはずだが…シャルが崖下を覗き込むと、瓦礫と土の隙間から輝煌石の光が見えた。シャルは呟く。
「まさか…地層が崩れているのか?」
そして、崖下から更に大きな爆発が起きる。盾使いの2人が「危ない!!」「隠れて!!」と叫び、爆風から盾を使ってシャルとムジカを庇い、爆風に押されて派手に倒れた。
「おい、大丈夫か!?しっかりしろ!!!!!」
シャルが2人に呼びかけると、再び爆発が起こる。すると、盾使いでも何でもないトーラスが、背中でシャルとムジカを庇ったのだ。爆風を直に受けたトーラスは、派手に怪我をして倒れた。
「おいトーラス!!!何で…」
シャルがトーラスを抱き起す。すると…ムジカは倒れるトーラスの横にしゃがみ込み、ガタガタと震え出した。
シャルは必死に考えた。
(どうする…?まずはムジカを安全な所に行かせて、そしたら1人1人安全な所に運び込むか…)
再び爆発が起きる。最初の爆発に誘発されたのか、爆発は止まらない。シャルはトーラスからそっと手を放し、ムジカを庇うように抱き抱え爆風を背中で受けた。
シャルは、腕の中にいるムジカにそっと話しかけた。
「ムジカ、大丈夫か?」
「…もう嫌…もう嫌…もう嫌…」
「…ムジカ…?」
ムジカは…目を見開き、咆哮した。
「何であたしばっかりこんな目に合わなきゃいけないの!?あたしが何したっていうの!?もう嫌!!もう嫌!!!!!もう消えたい…!!!!!」
「…」
これは、シャルが一番恐れていた状況だった。ムジカがムジカでなくなる…
そんな状況がいつか来るのではないかと微かに思ってはいた。
彼女は、乗り越えた、乗り越えたと繰り返し言っていたが、本当はどうだったのだろう。
ムジカは泣き叫び、完全に我を失っていた。
このままでは再び爆発が起こる。シャルはムジカに呼びかけた。
「ムジカ!!しっかりしろ!!とりあえず逃げるぞ!!!」
「…」
ムジカは突然泣き叫ぶのをやめた。ぼーっとしており、目の焦点は定まっていなかった。
そして彼女は、こう呟いた。
「…寂しいよ。寂しいの。私」
寂しい。
シャルは、やっと理解することができた。
寂しい。
これがムジカの本音である。
(…そうか。寂しいのか…家族が誰か分かんないんだもんな…悲しむことも出来ないのか…)
再び爆発が起こる。シャルは、再びムジカを庇う仕草をするが…
(…なんで自分ばっかりこんな目に…本当にそうだ…)
気付いたら、シャルもムジカも”懐剣:アニムス”と”懐剣:アイラ”の展開を無意識に解除していた。
そして…シャルの表情も、知らぬうちにぼーっとしたものに変わってしまっていた。
(…何か…もういいや…)
2人は爆風に巻き込まれる。シャルとムジカの意識は、そこで途切れた――
それから数時間後のこと。
寮で待機していたラング、エン、アルトの元に、ジェイド地区で爆発が起き、臨時チームが行方不明になったことが知らされた。
ラングは「くそっ!!!!!」と叫びながらゴミ箱を蹴飛ばし、エンは床に座り込み呆然としていた。
ラングは待機している間、士官から情報を集めていたのだが、士官たちも今回の任務のことはよく分からないという。むしろ彼らも戸惑っているようだった。その中でやっと入ったのが行方不明になった情報だったのだ。そして…捜査は、危険だからという理由で打ち切りとなったのである。
ラングが必死に脳内を整理していると、アルトがデバイスをラングに向け、こう言った。
「…ラング、父さん繋がった」
「…!?」
ラングはすぐにアルトからデバイスを受け取る。ラングは、「元帥…?」という言葉を、何とか絞り出した。
それに対し、アイオラ元帥の声は冷静で、冷ややかであった。
『…ラングか。どうした?』
「…どうしたじゃねえ…捜査打ち切りってどういうことだ…」
ラングは怒りのあまり、敬語を使うのも忘れていた。
元帥は動じる様子も無く続ける。
『ジェイド地区は、エネルギーが常に噴き出ている状態だ。それに対しいつかは対処しなければならない。今回の調査は賭けでもあった。危険なことは分かっていたのだ。だが、もうこれ以上の危険を犯す必要はない。次は他の策を講じよう。皆、貴重な懐剣使いだった…』
「…ふざけんな…ふざけんじゃねえ!!!!!」
ラングは激昂した。ほぼ涙声だった。
「危険だと分かってて何で無理矢理行かせたんだ…!?もう次ってか。おい、何で最初に任務断ったのか分からなかったか…!?滅んだ故郷に行くんだよ!!言わなくてもそれで大体分かるだろ!?当時すげえ事故だったんだろ。その中せっかく生き残ったのに!!あいつらを道具みたいに扱うんじゃねえ!!!!!」
ラングは、顔面蒼白となった2人の顔を忘れることが出来なかった。
「俺は助けに行くからな。待機命令?俺の行動が気に入らなかったら退学にでも何でもしろよ!!」
そしてラングは、アイオラ元帥の返答を待たずに電話を切る。やるべきことは決まった。任務は一度受けた場合、途中で放棄することは許されていない。つまり、今から命令違反をするのだ。
エンはラングの怒りの声を聞き、何とか立ち上がることが出来た。気力を取り戻したエンは優しい声で言った。
「…行くんだね、ランちゃん」
「…俺が助ける…」
「うん、絶対助けようね」
出掛ける準備を始めるラングとエンに、アルトも一緒に準備を始める。何度も元帥に電話をしてくれたり、言葉は無くてもアルトの気持ちはラングとエンに充分に伝わっていた。
その時…エンのデバイスにアリスから電話がかかってくる。エンはすぐに電話に出た。
「アリス!?アリス、無事なの!?」
『エン…!遅くなってごめんなさい。デバイスを没収されてたの』
やはり、ただ事でないことが起こっている…エンはそう感じた。
『私も本当は2人の後に付いていくはずだったのに、危険だからと父に閉じ込められたの。何が起きてるのか私にも分からない…ねえエン…シャルとムジカを助けに行きたいけど出れないの…!!』
「アリス、大丈夫。私たちが今から2人を助けに行くから」
『臨時チームは通った後に印を付けているはずよ。その後を辿ればいいはず…今から私も行くから待ってて!!』
「アリスが向かったら、またお父さんが心配するよ。大丈夫、後は任せてね」
巻き込まれそうになったアリスは折角安全な場所に居るのだ。エンはアリスの返答を待たずに電話を切る。アリスの声を聞いていたラングも頷き、3人はすぐに外に出た。
ラング、エン、アルトの3人は、列車でジェイド地区に向かっていた。
乗っている間は、誰も言葉を発すること無く、ひたすら沈黙が流れる。
そして、最初に言葉を発したのは、ラングだった。
「…エン」
ラングは、頬杖をついて窓の外を見ながら、エンに、ぽつりと話しかけた。
「俺の判断は正しいと思うか?」
「…」
エンはうつむき、少し考えてから、ラングに、こう答えた。
「ランちゃん、私思ったんだ。軍の判断は、帝国の軍としてはもしかしたら正しいのかもしれないって…軍って、こういう時非情にならないといけないのかなあ、って。私たち、まだ子供だから分かってないのかなって。でも…私は、自分が人間であることを手放したくない。自分の感情を否定したくない」
ラングはエンの方を見る。2人は見つめ合った。
ラングは言った。
「…そりゃそうだ。人間じゃなくていい、感情が要らないなら機械に全部やらせればいいんだ。でもそれに失敗したから、あちこちで大昔の機械兵が暴れ回ってんだろ。結局人間が懐剣を使ってんだ。だから…俺たちはきっと間違ってない」
「…うん」
2人はそこまで話し、ラングは再び窓の外を眺め、エンはデバイスを見たり準備を始める。
「…」
アルトは、話をする2人の横顔をずっと、じーっと見ながら話を聞いていた。
その表情は、無表情ではなく、ぼーっともせず、目も、うつろでは無かった。
3人はジェイド地区に辿り着いた。瓦礫、濃度が高すぎて深く立ち込める霧…ラングとエンは、こんな状態の場所に臨時チームが向かったのかと思うとゾッとしてしまう。
3人は周囲の濃度を下げるために懐剣を展開し、アリスからの情報の通り、臨時チームが付けたと思われる印を辿って進んだ。とにかく機械と機械兵が多い。3人はそれらを退治しながら瓦礫の中を進んだ。
しばらく歩いていると、開けた場所で複数の機械に囲まれる。地上に数体、空中に数体だ。ラングはまず、エンに呼びかけた。
「エン、頼む!」
「了解!撃ち落とす!!」
エンは答え、空中の機械を一体ずつ撃ち落としていく。そして全て撃ち落とし終えた時…
「…うっ…!!ごほっ、ごほっ!!!」
エンは、激しく咳込みうずくまってしまった。ラングははっとすると、冷静にすぐにエンの側にしゃがみ込み呼びかける。
「エン…!!」
そして、しゃがんだままアルトに呼びかけた。
「アルト、頼む!!」
「…うん」
アルトは答え、残った機械を”懐剣:ディライト”で斬りつけ始めた。
ラングは、顔を上げたエンの顔を覗き込んだ。エンは肩で息をしながら呟いた。
「…ごほっ…ランちゃんごめん…」
ラングはこの事態を”知っていたかのように”、冷静に囁いた。
「結界を使う。懐剣解除しても大丈夫だぞ」
「…うん…ごほっ、ごほっ…待って、お薬飲むから…」
これは、エンの持病の、呼吸器系の発作であった。
ラングの”懐剣:サドネス”の盾は、広げると人間2人くらいを囲う事ができる。ラングはこれを”結界”と呼んでいる。基本的に盾のままの方が動作が早いので、結界は必要に応じて使用している。
ラングは自分とエンを結界で囲み、エンの周囲の輝煌の濃度を下げた。エンは懐剣を解除して薬を飲むと、ふう…と深呼吸する。少しだけ落ち着いてきたようだ。苦笑しながら小声で呟いた。
「…最近調子良かったのになあ。こんな時に足手まといになってごめんね…」
それに対し、ラングは真剣な表情で答える。
「輝煌だけじゃなくて粉塵も多いからな。あと、足手まといじゃねえよ。俺とアルトは空中の機械を撃ち落とせないからな」
「…確かに。ランちゃん、ありがとう」
2人でそう話すうちに、エンもだいぶ落ち着いてきたようだ。
その時、ラングはアルトが汗だくになっていることに気付く。ラングは叫んだ。
「アルト、交代だ!!」
そしてそのままエンに話しかける。
「エン、懐剣展開できるか?」
「うん、行ける」
エンがそう答え、”懐剣:メリー”を展開するのと同時にラングは結界を解く。そして、こちらに走ってくるアルトと走って交代した。
すれ違い際にラングは「アルト、遅くなってすまない」と囁き、アルトは「…平気」と答えた。
アルトはすぐにエンの元へ駆けつけ、傍にしゃがみ顔を覗き込む。エンは、肩で息をするアルトの顔に手を伸ばし、涙声で言った。
「…アルトくん、こんなに汗だくになって…体力が少ないのに。無理させてごめんね…」
「…ううん。平気。エン、大丈夫?」
アルトは、エンに対して、そう答えた。エンの顔を覗き込むアルトの表情…目をしっかりと開き、いつものぼーっとした表情では明らかに無かった。はっきりとはしてないが…感情がある。エンを心配している。それだけは分かった。それは、エンが初めて見るアルトの表情だった。
エンは、この状況だが思わず微笑んでしまう。
「ふふ、アルトくんに心配して貰えて嬉しい。ほら、それだけでこんなに元気になったよ」
2人が話す間に、ラングが全ての機械を片付けたようだ。ラングはすぐにエンの側に戻ると、しゃがんでエンに話しかけた。
「エン、調子はどうだ?」
「うん、もう大丈夫。ランちゃんとアルトくんのおかげだよ。ありがとう」
エンはそう答えるとすっと立ち上がり、うーんと伸びをすると笑顔を見せる。ラングが戦っている間にアルトの体力も多少は回復したようだ。
ラングは2人に呼びかけた。
「エン、アルト、行けるか?」
「うん!行ける!」
「…うん」
3人は再び瓦礫の中を進み始めた。
ラングは周囲を見渡し進みながら、エンとアルトの様子も定期的に確認する。
危険な場所だ。エンとアルトの体力も相当消耗している。元々3人という少人数で来るような所ではない。早くしなければ。それと同時に、こんな恐ろしい所にシャルやムジカたちが取り残されているのかと思うと余計に焦るのだった。
しばらく歩いていると、崖が崩れかかっている場所に到着する。ここで行き止まりのように見えるが…
ラングは周囲を見渡しながら叫ぶ。
「シャル!ムジカ!トーラス!」
ラングは友人であるトーラスがリーダーとして向かったことも後で聞いていた。
エンは「5人とも助けないと…」と呟く。他に2人居ることも聞いた。
道はもう無い。崖の下は瓦礫と土で埋もれていた。
「…そんな…どうしたらいいの!?」
エンはそう言ってその場にへたり込んでしまう。ラングは崖を降りようとするが、エンに止められる。ラングはエンの腕を振りほどき、再び崖を降りようとしたので、エンはラングの腕を掴んで懇願した。
「だめ、ランちゃんダメ、無理しないで…」
「でも…!」
「お願いランちゃん。ランちゃんにも何かあったら私…!」
「…エン…」
「そこに誰かいるのか!?」
その時、聞き覚えの無い男の声がした。暫くすると、懐剣を展開した体格のいい男が姿を現した。男はラングたちの姿を確認すると驚いた表情をし、強い口調で言った。
「こんな所で何をしている…!?危険だ、早く避難しなさい」
「仲間を助けに来たんだ」
ラングの返答を聞くと、男は顔をしかめながら言った。
「仲間?君たちは…軍学校の生徒か。生徒を何人もこんな目に…軍の人間は何を考えているんだ…!?」
その時、少し遠い場所で爆発が起こる。男は爆発を確認すると、驚いているラングたちに言った。
「こうして定期的に爆発しているんだ。エネルギーが常に噴き出しているから地層の輝煌石が消耗してどんどん崩れて行ってる。早く、こっちだ」
「でも仲間が…!!」
「ああ…そう言ってたな。仲間は…」
狼狽するラングに男は答えようとしたが、再び遠くで爆発が起こる。男は叫んだ。
「話は後だ、早く!!!」
ラングは男に引っ張られる。エンとアルトも、まだ逃げる気持ちになれずにいた。
ラングは涙声で男に訴えた。
「俺が助けないといけないんだよ…!!あいつらは俺が…」
見かねた男はラングの肩をがっしりと掴む。爆発音が再び聞こえた。
男は、ラング、エン、アルトに対し、言い放った。
「彼らは無事だ!!だから早く脱出するんだ!!!!!」