ラングとエンが目配せをし、2人が懐剣を展開すると4人もそれに応じ懐剣を展開した。
皇帝は…完全に6人を道具だと思っている。時々優しい言葉をかけてきたこともあったが、要は「大切な道具」だったのだ…ホープ島を救うのに6人の存在が必要不可欠だとは思っているだろうが、皇帝にとって6人の人としての身の安全などどうでもいいのだろう…と、6人全員が思った。
皇帝の周囲に控えていた兵士が6人を取り押さえようと攻撃を仕掛けてくるが、6人は『無情の”壊”剣』を振るい相手を怯ませ、出口に向かって一気に走り抜けた。
「反逆だ!!追え!!!!!」
皇帝はいつになく厳しい口調で周囲の兵士に告げた。これが彼の本性なのだろうか…
政府ビルの外に出るとサイレンが鳴る。恐らく6人が逃げたからだろう。
エンは走りながらラングに聞いた。
「どうする?もう極夜に逃げるって言っても…」
ラングは頷きながら答える。
「…ああ。もうどこに逃げても意味が無い。崩落が止められなかったら俺たちだっていずれ死ぬんだ…だから…皇帝から逃げながらジェイド地区のエネルギーを止める」
アリスもそれに同意するように言った。
「…そうね。結局、エネルギーを止める以外の道は無さそうね」
アルトはラングの方を見ながら「レギュレート兵器…どうするんだろう」と呟く。そういえば、カタルシス国がレギュレート兵器を携えて政府ビルに向かっていると皇帝は言っていた…
ラングは少し考えた後、皆に告げた。
「折角ならレギュレート兵器も破壊しよう。その2つを叶えれば皇帝にも分かって貰えるはず…そうすれば、きっと6人で穏やかに暮らせるようになるんだ」
それを聞いたシャルは苦笑しながら言った。
「はは、分かってくれるかねえ?」
それに対し、ラングは笑いながら言った。
「そうしたら…また極夜に逃げようぜ」
極夜の名前を聞いたムジカが、はしゃぎながら「賛成!」と答える。
6人は、政府ビルの周囲を徘徊する皇帝直属の兵士を避けながら、一気にビルから離れていった。
ラングたちは、レギュレート兵器が政府ビルに到達する前に撃破するために、政府ビルとイーストシティのカタルシス本部を繋ぐ道を駆け抜けた。
すると…ガシャ、ガシャ、と機械的な足音のような音が聴こえてくる。そして、ついにレギュレート兵器が6人の前に姿を現したのだった。
奪われたのは兵器の部分のみなのでコアは無いのだが、コアのあった部分には輝煌タンクのようなものが積まれており、兵器はそれを動力として動いているようだった。兵器は暴れ、周囲の建物がなぎ倒されていった。
そして、しばらくすると兵器は静かになり、兵器の横に数人のカタルシス国のエンブレムを身に着けた人間と、彼らに囲まれた女性が登場した。
ラングたちは、彼女に見覚えがあった。その女性は静かに口を開く。
「こんにちは、私はカタルシス国の代表のジェミニよ」
それに対し、ラングは動じず冷静に言った。
「…あなたは、元帥の助手の…」
「そうよ。覚えててくれて嬉しいわ」
ラングは以前、アリスをレギュレート兵器から救出した際にもジェミニと話をしている。
何故、アイオラの助手がカタルシス国の代表なのか…皆、どういうことなのか考えを巡らす。そこで、シャルがぼそりと呟いた。
「…スパイか何かだった?」
「そう。このレギュレート・兵器を奪い、ホープ帝国の政府ビルを破壊してカタルシス国に勝利をもたらすために…さあ、レギュレート兵器よ…行きなさい!!」
ジェミニがそう呼びかけて周りの人間と共に後ろに下がると、レギュレート・兵器は再び暴れ出した。
ラングはすぐに呼びかける。
「やっぱり、あの時に破壊しておくべきだったんだ…みんな、懐剣展開!迎え撃つ!!」
「了解!!」
皆は答え、懐剣を展開する。
戦いの火ぶたは切られた…
ラングは作戦を告げる。
「今回はコアは無い。全力で行くぞ。アリスとアルトが前衛、俺とシャルが援護する。エンとムジカは隙を見てどんどん射撃してくれ」
レギュレート兵器の勢いは凄まじかった。過去に戦った機械兵の比では無い…だが、チーム:ミモザとして長い間共に戦ってきた6人のチームワークはほぼ完ぺきであり、『無情の”壊”剣』の威力も相まって徐々に確実にレギュレート兵器にダメージを与えていった。そして…
肩で息をするラングたちの前に、破壊されたレギュレート・コアの破片が煙を出して散らばっていた。破片の側でへたり込むジェミニに、ラングはそっと近づく。ジェミニはうつむきながら呟いた。
「…そういえばラングに、コアと分離したら兵器の破壊をお願いしてたわ…」
以前アリスをレギュレート兵器から救出した際、ジェミニはラングにその話をしたことを思い出した。あの時は、いずれ兵器を奪うためにラングを騙したつもりだったのだが。
ジェミニは顔を上げ、再び呟いた。
「…恐ろしい兵器だったもの…これで良かったのかもしれないわね。これを望んでいたのかも…」
そしてジェミニは立ち上がり、懐剣を展開しながら後ずさる。
「…兵器なんて無くてもいい。まだ諦めない…!!非情な皇帝…!あいつを屈服させるまでは…」
非情な皇帝…恐らく、何かがあって皇帝に恨みでもあるのだろう。皇帝のやり方は確かに恨みを買いそうだと皆思った。
ジェミニとカタルシス国の人間はそのまま走り去ったが、こちらも戦闘でかなり消耗しており、後を追うことは出来なかった。
その時…
「居たぞ!!」
ジェミニたちが走り去ったのと同時に皇帝直属の兵士たちが後方に現れた。
ムジカが顔をしかめながらぼやく。
「何~?兵器破壊してあげたのに…」
「うまく撒いて列車に乗る。みんな、ついてきてくれ」
ラングの呼びかけに皆頷き、ラングの後を追い走り出した。兵士に追いつかれることなく何とか列車に乗ることができた。
6人は列車を降り、ついにジェイド地区に到着する。
皆すぐに懐剣を展開した。瓦礫、深く立ち込める霧…ジェイド地区の様子は以前と同じに見えた。だが、恐らく輝煌石が更に消耗し地形は以前とは変わっているだろうと思われた。
そこで、再び地響きが聴こえる。またどこかが崩落したのだろうか…
「さあみんな、あと少しだ。がんばろう!」
ラングの呼びかけに皆頷き、ジェイド地区を歩き出したのだった。
相変わらず機械や機械兵が多い。だが、以前と違い今回は6人全員居るのだ。皆、難なく敵を倒しながら前に進んだ。
そこでラングは異変に気づき、足を止める。ラングは周囲を見渡しながら呟く。
「…待て。人の声がする…」
しばらくすると足音が聞こえた。
そして…何と、目の前に皇帝直属の兵士たちが現れたのだ。
ラングは舌打ちをして「…先回りしてたのか」と呟き、エンは思わず「そこまでする…?」と漏らす。
ラングは仕方なく皆に告げた。
「別に帝国と敵対したい訳じゃないのに…仕方ない。正当防衛だ、倒して走り抜ける!」
「了解!!」
6人はラングに答えると懐剣を構え、同じく懐剣で斬りかかって来た兵士に応じた。
正直、兵士だけだったら『無情の”壊”剣』使いのラングたちの敵では無かった。だが…兵士たちは、ここで小型の機械兵を放ったのだ。皇帝が、兵士だけでは6人を捕らえられないと分かっていて機械兵を差し向けたのかもしれなかった。
6人は兵士と複数の機械兵に囲まれた。ラングは必死に考える…そして、作戦を告げた。
「みんな、体勢を立て直そう。俺とシャルが盾と光の玉を展開した時だけ攻撃を…」
しかし敵は待ってくれない。さっそく機械兵は、複数でアリスとアルトを襲い出した。
ラングは咄嗟に叫ぶ。
「俺がアリスに付く!!シャルはアルトを…」
その時…
「…!!だめ…!!!!!」
アリスが叫び声を上げる。ラングが「アリス、どうした」と声をかけるのと同時に、ラングは見た。
アリスの懐剣の刃が、一瞬にして赤い光に変わったのを…
そのままアリスは目の前の兵士を斬り倒し、膝をついてしまう。
アリスが再び覚醒してしまった…しかも、今回は刃の光の色が完全に赤くなっている。
「…こんなところで…ごめんなさい…」
そう声を漏らしてうずくまるアリスに、ラングはすぐに”懐剣:サドネス”の結界を使い、小声で囁く。
「サドネスがある。だから心配いらない」
エンも駆けつけ、アリスにそっと話しかけた。
「そうだよ。それに、誰にでも覚醒する可能性はあるんだからアリスのせいじゃない。私たちがちゃんと支えるから安心してね」
アリスの体は結界で楽になり、微笑みながら小声で「…ありがとう」と呟いた。
シャルとムジカが「こっちは任せろ!」「アリスはあたしが守る!」と叫び敵に応じる。そのまま兵士も機械兵も、アルト、シャル、ムジカが片付けた。3人もすぐにアリスに駆け寄り、アルトが「大丈夫?」と声をかけると、アリスは先程よりも落ち着いた様子で「…大丈夫」と答えた。
ラングが結界を解除すると、アリスはすっと立ち上がる。懐剣の光は赤いままだが、アリスは落ち着いているように見えた。アリスは穏やかな表情で言った。
「…何だか以前と違う。気持ちも体も楽なの。ううん…楽になった、のかしら?覚醒すると、心も体もどっちも辛くなったはずだもの」
エンはアリスの背をそっと支えながら言った。
「サドネスのおかげかな?みんなが声をかけたからかな?」
「多分、どっちもあると思うわ。前も、みんなのことを想い出しただけで楽になったもの」
アリスはそう答え、穏やかな表情のまま皆に告げた。
「さあみんな、行きましょう」
ラングは頷きながら答える。
「…ああ。何かあったら言ってくれ。いつでも結界を使う準備はしておく」
「分かったわ。ありがとう、ラング」
そして6人は、再びジェイド地区を歩き出したのだった。