アルトは、ディライトの赤い光を目覚めさせると言った…
アリスはアルトの話を遮るように叫び声を上げた。
「赤い光は危険なのよ…私だから分かるわ。アルトくんにそんな危険なことさせたくない…!皇帝、許可しないで下さい、お願いします!!」
皇帝は、封印される者の願いを叶えると言っていた…アリスの言葉に皇帝は答えた。
「封印される者の願いを叶えましょう」
「…アリスちゃん…」
目を細めてアリスを見るアルトに、アリスは穏やかな表情で言葉を伝えた。
「アルトくん、ありがとう。いつも私のこと気に掛けてくれたよね。今回もそうだよね…アルトくんは私と同じ…適性が高いせいでひどい目に合ってきた…あなたにこれ以上辛い思いさせたくないの」
「それは僕だって同じだ。アリスちゃん、ちょっと待ってて。兵器を破壊したらまた話し合おう。それはダメ?」
真剣な目でそう言ったアルトに、アリスは少し考えてから答える。
「…分かった。みんなが戻るまで、ちょっとだけ待つね…」
アリスが皇帝に事情を説明するために小声で話をすると、皇帝は静かに頷いた。
そこでエンは、小声でラングに耳打ちをする。
「ランちゃん、アリスが早まらないようにそばに居てあげて。アリス、ランちゃんと居る時が一番落ち着くと思うの」
ラングは、確かにアリスを1人にするのは危険だと思った。真剣な表情で、頷きながら「…そうか。分かった」と答えた。
そこで、シャルが居ても立っても居られず話に入る。
「ったく…アリスもアルトくんも。俺たちが黙って2人を犠牲にする訳ねーだろ!?いい加減にしろっての全く…2人とも大丈夫ってことで話はまとまったんだな?」
ムジカも、むっとしながら続く。もちろん、2人を大切に思っているからこその反応だ。
「そうだよ!!6人みんな居ないと意味ないんだから。さあ、さっさと兵器片付けてくるよ!…また後でね、アリス」
ムジカが最後に笑顔に戻ったので、アリスも笑顔でムジカに答えた。
「そうね…ごめんなさい。また後でね、ムジカ」
そのまま、ムジカはアリスをぎゅっと抱きしめる。そこにエンも近付き、抱き締め合う2人を抱え込むようにぎゅっと抱きしめた。シャルはアリスの顔をちらりと覗き、「姫、やっと笑ったな」と笑いながら呟いた。
アリスも、シャルの言葉で自分が笑顔になっていることに気付く…
その時、伝達役の士官が皇帝の元に駆け込んできた。
「皇帝!!レギュレート兵器が政府ビル付近に到達したようです!!」
エン、シャル、アルト、ムジカはエレベーターを降り、すぐに外に出た。
すると…ガシャ、ガシャ、と機械的な足音のような音が聴こえてくる。そして、ついにレギュレート兵器が政府ビルの敷地内に侵入してきたのだった。
奪われたのは兵器の部分のみなのでコアは無いのだが、コアのあった部分には輝煌タンクのようなものが積まれており、兵器はそれを動力として動いているようだった。兵器は暴れ、周囲の門や植木がなぎ倒されていった。
そして、しばらくすると兵器は静かになり、兵器の横に数人のカタルシス国のエンブレムを身に着けた人間と、彼らに囲まれた女性が登場した。
エンたちは、彼女に見覚えがあった。その女性は静かに口を開く。
「こんにちは、私はカタルシス国の代表のジェミニよ」
それに対し、アルトは動じず冷静に言った。
「…まさか…父さんの助手の…」
「そうよ。覚えててくれて嬉しいわ」
何故、アイオラの助手がカタルシス国の代表なのか…皆、どういうことなのか考えを巡らす。そこで、シャルがぼそりと呟いた。
「…スパイか何かだった?」
「そう。このレギュレート・兵器を奪い、ホープ帝国の政府ビルを破壊してカタルシス国に勝利をもたらすために…さあ、レギュレート兵器よ…行きなさい!!」
ジェミニがそう呼びかけて周りの人間と共に後ろに下がると、レギュレート・兵器は再び暴れ出した。
エンはすぐに呼びかける。
「ランちゃんが居ないから、今回は私が指示を出すね。みんな、懐剣展開!迎え撃つ!!」
「了解!!」
皆は答え、懐剣を展開する。
戦いの火ぶたは切られた…
しばらくすると、謁見の間に地響きが響き渡る。またどこかが崩落したのだろうか…
ラングは、うつむいているアリスに話しかけた。
「じっとしてるだけなのもアレだし、アリス、やりたいことは無いか?」
ラングは、アリスが判断を早まらないように4人を待つ間に時間を稼ごうと思ったのだ。
アリスは「そうね…」と答えてから少し考え、皇帝に向かって言った。
「皇帝…父さんと別室で話をさせて下さい。確か後で政府ビルに行くって言ってたから…話す内容とかは特に無いんですけど、心を落ち着かせるために声を聞きたくて。外に出なければいいですよね?」
アリスの質問に皇帝は答える。
「分かりました、願いを叶えましょう。放送で呼び出します」
願いを叶える。皇帝はアリスを封印する前提で話をしている…とラングは思った。
丁度、コーラルが政府ビルまで来ていたようだった。コーラルは指定の場所に移動し、別室でコーラル、アリス、ラングの3人になった。
早速コーラルはアリスに質問をする。
「…話?何の話だ?今レギュレート・コアが政府ビルに向かってるという話で皆バタバタしているようだが…破壊することに決まったという話で私の出番は無いようだがな。その関係の話か?」
アリスは重大な決断を前に父の声を聞きたかっただけなのだが、コーラルの言う通りタイミングがおかしいことと、放送で呼び出したせいで大事になってしまったことでアリスは少し慌ててしまう。
「あの、父さんはどこって聞こうとしただけなのに大事になっちゃって…ちょっとした話なの」
封印のことはコーラルに言えないので、ラングが適当にごまかす。
「…えっと、アリスの記憶が戻る手がかりを探してて…今仲間が兵器と戦ってる。俺たちは貴重な『無情の”壊”剣』使いだから数人は念のために待機してるんです。その間に次長から聞きたいことを聞いておこうと思って。今、いつ何が起きるか分からないから、こんな時だからこそ…」
コーラルはラングの話を理解し、頷きながら答えた。
「…そうだな。アリスの記憶が戻る手がかりか…そろそろ話してもいいか。これは今後も話すつもりは無かったが、知った上でどう生きるか決めることも出来る…」
そしてコーラルは深呼吸をすると、静かに話し始めた。
「アリスの記憶は8年前にジェイド地区の事件の時に失われたと伝えたな。実際は、5年前だ」
これに対し、アリスは冷静に言った。
「8年前でも5年前でもどちらでも違和感ないわ。私、あの数年間の記憶が曖昧になってるのよ。元々病気だと思ってたから特に疑問に思わなかったわ。でも…じゃあ、ジェイド地区の事件の時は失わなかったの?」
「ああ。アリスはジェイド地区の事件の後、自責の念からドリーム島との戦争のための出兵の際に志願したんだ。私も、アリスのためならばとそれを許可した。私は、あの時はまだ…お前が自分にとってどれだけ大切な存在なのか全く分かってなかった…許可してしまったのだ…」
アリスがドリーム島との戦争に出兵した…
これにはさすがにアリスも驚く。予想もしていない話だった。
コーラルは更に衝撃の事実を明かす…