あの時、彼女の目の前で彼が死ななければいけなかったのは何故ですかね。
あの時、あの子があの人を刺さなければいけなかったのは何故ですかね。
…一番悪かったのは、一体誰なんでしょうか。
何が原因なのか。忘れてはならない。
一番、罰せられるべきなのは…
エレベーターが、最上階に着いたようだ。
4人は、静かにエレベーターから降りる。そして、まだ続く通路を歩き出した。
列の先頭は幸四。ただ、黙ってスタスタとどんどん前へ行く。
列の後ろは五月。悲しむ様子も怒る様子も見せず、無表情で歩いていた。
その2人の間に、巳六と七々が横に並んで歩いていた。
七々「…ねえ、巳六くん」
七々が、小声で巳六に話しかけた。
七々「もしかして幸四くん、怒ってる?」
巳六「あー…」
幸四の怒りは、次第に目に見えるものになってきていた。
巳六「五月とハルのことかな、やっぱ」
七々「うん、それもあるだろうし、あと…私もアジトに途中から入ったから聴いただけなんだけど、
幸四くん昔色々あったみたいだから、色々ボスに対してモヤモヤしてるものがあるのかもね」
巳六は、幸四の背中を見た。
巳六「俺、幸四って、もう全ての迷いを断ち切った奴だと思ってんだけど。何だろ…怒ってんのって、結構単純な理由なんじゃねーの?」
七々も幸四の背中を見つめた。
七々「そっか。そうだよね」
巳六「それより七々」
七々をじっと見つめる。
巳六「お前…今からボスに会うけど、怖くねーか?」
七々はハッとした。
七々「…そっか。時雨に私を殺せ、って命令したの、ボスだっけ」
巳六「もし怖かったら、手え繋いでてやるよ」
笑って手を差し出す。
七々「!!」
七々は真っ赤になった。慌てて手をぶんぶん振る。
七々「だ、大丈夫!怖いとか、無いから、ホント」
巳六「そうか?」
七々「う…うん…!」
巳六は手を引っ込めた。
それを七々は少し名残惜しそうに見ていたが、すぐに我に返る。
七々「み、巳六くんこそ、前にビルに居ると嫌だって言ってたじゃない。巳六くんは大丈夫なの?」
巳六「あーそれな。もう慣れた」
七々「…え」
巳六はさらっと言った。
巳六「多分、最近何回も来てるからだと思うけど」
商業区の時と同じだ。いつも通りの表情。
そんな巳六の顔を、七々はじっと見つめる。
七々「…そっか…巳六くん、色々なことがありすぎて、体が何でも慣れちゃうようになっちゃったんだね…」
巳六「かもな。まあ、すぐ慣れる体になって良かったよ」
七々はうつむいて、小さい声で呟いた。
七々「…全然良くないよ。そんなの良くない。巳六くんに今度、何かあったら、今度は私が…」
巳六「…?」
七々「…」
七々は顔を上げた。
七々「わ、私…五月ちゃんが心配だから、ちょっと側に行ってくるね」
巳六「…?…そうだな。俺も、幸四に歩くの早えーよって言ってくるかな」
巳六は早歩きになって、七々より前に出た。
その時。
…え…
消えたように見えた。
巳六の背中が。
七々「…巳六くん」
気が付いたら、巳六の服の端を引っ張っていた。
巳六「どーした七々?やっぱ怖いか…?」
七々は我に返った。
七々「…!…あ、ううん、違うの。ごめんね、何でもない」
パッと手を離す。
巳六は、七々の顔を覗き込んで微笑んだ。
巳六「…ボスの部屋に着くまで、そばに居てやるから、な?」
七々「…うん」
七々も笑顔を作ってみせる。
…さっきの、何だろ。
何で巳六くんが消えた気がしたんだろ。
何か嫌…この先、何も起きませんように…
しばらく歩いていると、何人かの兵士が現れる。
兵士「止まれ!」
兵士「お前たちは…<E-ナンバーズ>…!!」
幸四が、ピタリと止まった。
兵士「捕獲せよ」
兵士達がじわじわと近づいてくる。
幸四は、無表情で兵士達を見ていた。
そして。
ドォン。
兵士達が居る、後ろの壁。
爆発して、一部が粉々になった。
兵士「…!?何だ…」
幸四の目は、青白く光っていた。
幸四「そこ、どいてくれませんか?」
兵士「何を…」
幸四「ジャマだと言っているんです。そこ、どいてくれませんか?」
一歩、前に出た。それに合わせて、兵士達が一歩後ずさる。
幸四「早く…目の前から、消えて下さい。あなた達を、殺したくないんです。お願いします」
ドォン。
幸四の能力によって、再び兵の居る後ろの壁が、爆発した。
幸四「…今、イライラしてるんですよ。制御できないかもしれないです。次はあなたたちに当たるかもしれません」
幸四がもう一歩前に出ると。
兵士「…い、いったん引き上げる…!」
兵士達は、慌ててバラバラと逃げて行った。
幸四「…」
幸四は、能力を解く。
静かに見守っていた巳六が、幸四に近づいてきた。
巳六「幸四…お前、大丈夫か?」
幸四「…はい…大丈夫です」
それは、無理やり作った笑顔に見えた。
4人は、再び歩き出した。
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