今日は冷えますね。天気もあまり良くない。
こんな日は、雪が降りそうですね。
雪は、昔は大嫌いでした。
今は…どうなんでしょうね。
五月「…つまり、ナンバーズは<E>だけじゃねぇってことだな?」
利九「そうみたいだな。ビルに居たあの…改造された人たちは、<M-ナンバーズ>というらしい。他にも色々なナンバーズが居るみたいだ」
太一たちは、アジトの広間に居た。何とか脱出できたのだ。
その後は、利九が速攻部屋に行って、入手したデータを分析した。
その中には、アンテナの操作方法、八重の居る部屋、そして、ナンバーズの数についてのデータが入っていた。
利九「これからは、チームを2つに分けたいと思っている。八重を取り戻すことと、全アンテナを回ること。
1つ1つ地道に片付けていったら、脱出がいつになるか分からないからな」
五月「…待てよ」
五月がテーブルを叩いた。
五月「あんな…地獄みてーな状況見ておいて、政府を放置して島から脱出する気かよ…!俺は嫌だね。政府をツブさねーと気がすまねえ…」
太一が同意する。
太一「俺もそう思う。このまま放っておいたら、俺達やあいつらのような人たちが、次々と生み出されちまうぞ」
利九が、真面目な表情で言った。
利九「…俺だって同じだ。お前らをさらって、改造して苦しめて。政府の奴ら、正直…全員殺さないと気が済みそうにない」
太一「利九…」
利九「だが、相手は政府だ。俺達数人で何が出来る?俺が優先するべきなのは…お前らを守ることだ」
全員、利九の目に釘付けになる。
五月「そうだ…」
五月が拳を握った。
五月「俺の役割は、キョーダイを守ることだ…お前ら全員。そして八重。何より、それが最優先だ」
英二「悔しいけど、政府は放置するしかないだろうね」
皆、目を伏せる。
巳六「政府はデカイからなあ。人数もハンパねーし」
七々「全員が生きて脱出できたら、それだけでも充分だよね…」
だが、太一は何も言わない。
いいんだろうか。
俺の大切なキョーダイを苦しめている政府を、
この苦しみを次々と生み出している政府を、このまま許してしまって。
すると、さっきまで黙って話を聴いていた幸四が立ち上がって、太一に近づいた。
幸四「太一。1つだけ、政府を倒す方法を知ってますよ」
太一「えっ…!!マジか!一体、何…」
幸四「僕の能力で、政府の人間全員を殺せばいいんです」
幸四は、太一の目をしっかり見て言った。
太一「お前…それは…」
太一の顔が、いつもの優しい顔に戻る。
太一「…それは、ダメだろ、お前。またお前が苦しむだけじゃねーか…」
幸四「皆に”やれ”と言われたら、僕はやりますよ」
太一「絶対ダメだ。お前は、もう苦しんだらダメだ…」
五月「おい、幸四」
五月が近づいてきて、幸四の胸ぐらを掴む。
五月「そんなこと、俺がやらせねえ。俺らが生きてりゃいいって訳じゃねえよ…
キョーダイのうち、1人でも苦しんでる奴が居たら意味がねえ。
第一、どんな能力でも使いすぎるとめまいを起こして倒れちまうんだから、次々と殺していっても政府はツブせねーよ」
幸四が、いつもの読めない感じの笑顔に戻った。
幸四「…知っていますよ。言ってみただけです。太一、政府を潰すということが、どういうことなのか、分かりましたね?」
幸四も五月も、太一の方を向いた。
太一「…分かった。悔しいけど…俺達は、本来の目的を見失わないようにしよう。一番大切なのは、キョーダイ全員が無事であることだ」
苦しいが、何とか話はまとまったようだ。
幸四「さて…本題に入りますか。八重のこと、です」
八重のこと。
他のメンバーが聞きづらい話だと思ったので、幸四が自分から切り出した。
英二「八重のあの能力って、やっぱり…」
幸四「そうですね。…僕と、全く同じ能力です」
巳六「えっ…!?」
巳六は最近入ったばかりなので、幸四の能力を知らない。
幸四「衝撃波、です。目の前の物を、人を、無差別に切り裂く。ですが、問題はそこではないんですよ」
太一「おい、幸四…大丈夫か?」
幸四は笑った。
幸四「ありがとう、大丈夫ですよ。…衝撃波の威力、いえ、衝撃波そのものは、使い手の感情の状態に大きく左右されるんです。
心が不安定な時に使えば、目の前の人は、ほぼ即死ですね」
巳六「…!」
幸四「昔、僕がまだ政府に居た頃。兵士区によくつれていかれました。その頃は、バリアがまだ無かったからでしょう。
よくドリーム島にも、敵国の兵士がうようよ居ましたよ。僕の役目は、その敵国の兵士を、次々と殺すことでした」
太一「幸四…もう、いいから」
幸四「そして、威力を高めるために、僕の心を追いつめていくような環境を政府が次々と用意してくれるんですよ。笑える話です」
巳六が立ち上がって、幸四の肩にポンと手を置く。
巳六「…分かった。もう、いいよ。もう、分かったから大丈夫」
幸四の顔が、優しく緩んだ。
幸四「心配しなくても大丈夫ですよ。もう、”乗り越えた”話ですから。僕が言いたいのは、八重も全く同じ能力かもしれないということです」
巳六「…なあ、何で感情で能力が左右されんだろ?みんなもそうなのか?俺は違うんだけど」
ビルで、皆は巳六の能力を初めて見たのだが、巳六は飛び道具を使っていた。巳六の能力は「動体視力強化」だった。
利九「感情に左右されるのは、幸四の能力だけだ。この前のデータには”バグ”と書かれていた。このバグをうまく利用していたみたいだがな」
七々「バグってことは…八重ちゃんに能力をつける時は、もちろんバグは取り除いたんだよね?」
幸四「いえ、僕の活躍に魅力を感じて、バグをわざと付けたまま八重に手術を施したという線が有力でしょうねえ。
ビルで八重の表情や様子を見たんですけど、とても苦しそうでした。あの頃の自分を思い出しますよ。
さっきは八重の能力が未知数だったから逃げましたけど、色々分かったので今度は言葉で説得してみてください。
僕の時と同じように」
幸四が平気そうな顔で次々と話すので、太一はたまらなくなって話を無理やり打ち切る。
太一「分かった。とりあえず、もう寝るか!ゆっくり休んどけよみんな」
利九「明日のチーム分けは、明日俺が発表する。取り合えず決まっているのは、俺が造船区班で太一が政府ビル班ということだ」
英二「えっ?ビルに利九無しで大丈夫なの?」
利九は、束になった資料を太一に渡した。
太一「…何だこれ?」
利九「アンテナのマーキングは、難解すぎて俺にしか出来ない。太一はビルのセキュリティと、八重の部屋についてを、明日までに頭に叩き込んでおくように」
太一「ええーーーーー!??こんなにかよ!!」
英二が笑いながら、肘で太一のわき腹を小突く。
英二「太一、今夜は寝れないねえ」
太一「うっせーな!」
皆、笑ってその様子を見守っていた。
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