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幸四「あー、またですかー」
2人の戦いを、傭兵一味は興味深そうに見守る。
千秋「ヘェー。ハルが他人に興味持つなんて珍しいねぇー」
夏夜「ハルも利九も、いつもムスッとしているのよね♡」
冬華「あの紫の男の人…すごく強いですね」
幸四「紫の人は、一応女ですよ」
冬華「ええっ、そうなんですか!?」
皆、2人が本気で戦っていないことくらい分かっていた。
ただ、木春の目的はやはり謎。
またかよ…こいつ何なんだ…!!
五月「お前、今日こそは目的を聞き出してやる…何が目的なんだよ!」
木春「…」
五月「何とか…言いやがれ!!!」
ガキン。
ああ嫌だ。何でだ…
こいつと戦ってると…すげえ、気持ちが悪くなって、イライラする。
こいつがウザイとか、そういうことじゃなくて…
…思い出したくないんだ…
何か…そんな気がする。昔のことなんて、全然覚えてないのに
五月「オラァァァッ!!」
五月は、少し本気の一撃を喰らわした。
倒れた木春に、武器を突きつける。
五月「ホラ…これで、言う気になったか…」
すると、木春はまた、前みたいに無表情に戻った。
木春「…この次の部屋は、気をつけた方がいいぞ、利九」
五月「…ハァ!?お前、さっきお前から攻撃してきただろ!!何なんだよ、前も今回も、急に素に戻りやがって…!!」
帽子を被った青年・千秋が歩いてくる。
千秋「仕方ないよー。ハルは記憶喪失なんだからー」
五月「記憶喪失…?」
太一が身を乗り出した。
太一「えっ!?<E>と同じ症状だ。じゃあ、ハルが八重…」
利九「…な訳ないだろ」
一言で一蹴した。
露出の多い女性・夏夜が五月にウインクする。
夏夜「そういうことでいきなり変な行動し出しちゃうのよ、ハルは。紫のお姉さん、許してあげてね♡」
五月「…」
五月が、武器を下ろして後ろを向く。
幸四「…ま、今は許してやるということです」
幸四が適当に説明した。
巳六「なーハル。次の部屋がヤバイって、どういうことだよ」
素に戻ったハルが、さっき言った一言だ。
ゴーグルをつけた少女・冬華が前に出た。
冬華「次の部屋には、”兵器”が出てくるそうですよ、みなさん」
利九「それは知っている。ここの傭兵を倒して、ここにある端末からハッキングしても体力に余裕があったら行くつもりだった」
士季「ヘェ。俺達<L-ナンバーズ>を倒すつもりかぁ?」
キョーダイ全員の顔色が変わる。
太一「<L-ナンバーズ>だって…?」
利九「おい、士季。お前らはただ雇われただけじゃないのか。ナンバーズというのは、どういうことだ」
士季「もちろん雇われただけさ。<L>っていうのは、ただのチームの呼び名だと思うが」
利九は渋い表情をしていた。
利九「…太一たちは、<E-ナンバーズ>だ。色々実験に使われた。
<L-ナンバーズ>という名前が、それと似た意味を持つかもしれない…士季、悪いことは言わない。政府には関わらない方がいい」
士季「もし実験されるようなことがあったらここを出るさ。ま、キモには命じとくぜ。
なんせ、今まで区の傭兵しかしてなかったもんで、政府は初めてだからなぁ。…ところで」
利九「?」
士季「俺達を倒す、って話はどうなった?」
士季はニヤリと笑った。
利九「…ここを、何も言わず通してもらえないか?」
士季「いやいや、そういう訳にはなぁ…」
利九「士季…頼むから」
士季「俺にいい考えがあんだよ。利九、ちょっとここ触って」
利九「…こうか?」
利九が士季の肩に触れた瞬間、士季が吹っ飛ぶ。
士季「ぐわーやーらーれーたーガクリ」
全員ポカンとした。
英二「…ナニソレ」
冬華「すごくいい案ですね!」
冬華が前に出た。
冬華「さあ利九!私を人思いに倒して下さい!」
利九「あのな…」
夏夜「いやっ利九~私を倒してよ♡♡」
千秋は、七々の側へ行く。
千秋「俺、どうせならカワイイ子に倒されたいなー」
巳六「!!七々は俺のだっつーの!!来んじゃねえ!」
幸四は、それらの様子を楽しそうに眺める。
幸四「見て下さい太一。三角関係が2組ですよ」
太一「お前なあ…どんな時でも動じないなあ幸四は」
幸四「…誰のおかげだと思ってるんですか」
太一「?」
幸四「さ、僕達も適当に加わりますか。一応次の階に行くための案みたいですし」
太一「あ、ああ」
恐怖の政府ビルの中とは思えない。いい気晴らしになったのかもしれないですね。
これから起きることを、考えると。
次の部屋に来た。
士季たちを”倒すことが出来た”ので、その部屋にあったデータも入手することが出来たし、体力も充分だった。
利九がハッキングをスタートさせる。
太一「…何も無いじゃんな」
英二「バカ。無数に隠しカメラがくっついてるんだよ」
太一「!!そういうことか。じゃあ今、政府に筒抜けなんだな」
何となく声を潜ませて喋る。
英二「”兵器”が出てくるって言ってたよね。このカメラに侵入者が映ったら出てくるってことだろうね」
利九「…ハッキング完了だ。さあ、すぐに脱出する…」
ドォン。
太一「来たな…」
全員身構えた。
利九「相手によっては、隙を見て脱出するぞ」
ドォン、ドォン。
何と、壁に穴が開いた。
巳六「…何か、ヤバめじゃね?」
七々「壁が…一体どんな兵器なの…?」
開いた穴から、人が出てくる。
一体どんな兵器なのだろう。
しかし。
出てきたのは…1人の少女だった。
手に何も持たない。小柄の少女。
利九「…ヤエ…八重だ…」
利九の一言に、全員が利九を振り返る。
太一「八重…!?え、兵器って…」
ドォン。
それは、少女―八重の力で発されているようだった。
目が、白く光っている。
これは…まさか…
ドォン。また一撃。
太一「おい…幸四、この能力ってまさか…」
幸四「…その、まさかかもしれませんね。だとしたら、かなり危険です。みなさんすぐに脱出を」
五月「おい!!八重はどうすんだ!ほっとくのかよ!!」
幸四「今は仕方ありません。八重、また必ず迎えに来ます…さあみんな、すぐに脱出を」
ドォン。
来た道を、潰されてしまった。
利九「…仕方ない。少し危険な道だが、こっちだ。八重…必ず迎えに来る」
7人は、小さなダクトシュートへ飛び込んだ。最期の1人となった幸四が、少し八重を振り返る。
八重「…」
幸四「…!…目を見ると、能力が発動しない。そんなところも同じなんですね…」
幸四もすぐに皆に続いた。
利九が「危険」だと言っていた道だった。
そこで、太一たちは地獄のような光景を目撃する。
人なのか、モンスターなのか。
どういう形で「危険」なのか、利九ですら知らなかった。
暗闇の中には、何人もの「人」が居た。
そう、改造された人だった。
太一たちを襲ってきたのだが、元が人なので殺す訳にもいかず。
もしかしたら…
…もしかしたら、彼らも、僕達と同じナンバーズかもしれない…僕達と同じで、研究に巻き込まれた人たちなのかもしれない。そう思うと、攻撃なんて出来ないでしょう?
見た目は、完全にバケモノである。
八重の能力も”僕の能力”も、考え方によっては、バケモノですよ。
僕を「人」だと言ってくれた太一たちのように、僕も彼らを「バケモノ」だとは思いたくない。
政府…これで目に見えて分かりました。これが政府、なのだと。
→「雪」