「罪」





「カルマ」
 夜、宿屋のベッドに座っているカルマに、サトリは話しかけた。
「…何だ」
 カルマは、今度はちゃんとサトリの目を見て答えた。
「…」

 サトリは、ずっとカルマを救う方法を考えていた。
 そして1つ、これならカルマを救えるんじゃないかという考えが生まれた。
 それをカルマに伝えようと思った。

「カルマ、聞いて」
 サトリは優しい口調でそう言うと、カルマの横に座った。
「…」
 カルマに、じっと見つめられる。
 2人は見つめ合った。
 サトリは、長い、長い話を始めた
「カルマ、俺は…」





 話が終わった。
 カルマは、サトリの腕の中で泣いていた。
 サトリはカルマを抱きしめながら、
「…カルマ、どう思う?この方法でいいかな…?」
 と、小さな声で囁いた。
 カルマは、泣き声を押し殺す。
 そして…
「…うん…」
 と、呟いた。

 この方法が示されると、もはやこれ以外の道なんて存在しない、と2人は思った。

「…なあ、カルマ」
 サトリの話は、終わっていなかった。
 カルマは、サトリの腕の中でサトリの話に耳を傾ける。
「カルマ、俺…ずっと思ってたんだ」
 サトリは、はっきりとした口調で話をした。
「カルマは、人間が好きなんだ」

 …。

「カルマは、早く使命を終えて楽になりたかったから使命をやっていた訳じゃない。
カルマは生まれた頃から人間が好きで、人間のために自分が出来ることは何かをずっと考えていた」

 …そうか

「カルマは人間を愛し、人間の歴史を愛した。だから、人間のために働ける”神の遣い”という自分の立場を誇りに思っていた」

 そうか

「そして、カルマと出会ってきた人々はみんなそれに気付いた。
カルマのこと、救いたいって気持ちと同時に、カルマの手助けをしたい、支えたいって、みんな思ったはずなんだ」

 カルマの中で、何かが弾けた気がした。

「サトリ」
 カルマは顔を上げた。
 サトリの目を、じっと見つめた。
 サトリの目に映ったカルマの表情は、強さと優しさと気高さが入り混じっていて、これまでに見たことが無い表情だった。
 いや…いつも無表情ではあった。だが…みんながカルマの無表情から潜在的に感じ取っていたのが、この表情なのかもしれない。
 カルマはサトリを見つめながら、
「サトリ…ありがとう」
 と、はっきりとした口調で言った。
 サトリは微笑んで、カルマに伝えた。
「カルマは1人じゃない。みんなが付いてるからな」
 みんなとは、カルマが出会ってきたみんなのことだ。
 カルマは頷いた。
「サトリ、明日もがんばろう。私も、自分がやるべきことを考えなくてはならない。クライムと会う方法を考える」
「…うん。がんばるぞ、カルマ!」

「私は、”神の遣い、業・カルマ”。私が今までやってきたことは、きっと無駄では無かったはずだ…」


 それから、サトリとカルマはいくつかの村を回る。
 厳戒態勢が敷かれてから、3週間ぐらいが経った頃。
 皆のデバイスに、2通のメールが入った。

『凶暴化した魔物の退治は、ほぼ終わりました。厳戒態勢を解き、引き続き魔物に警戒して下さい』
『起区:フシンがマイオウギに降伏しました。終戦に向けて調整していくとのことです』

 長い戦いは終わった。


 カルマとサトリは、拠点に戻って来ていた。
 サトリは疲労で、カルマのベッドでよく寝ている。
 カルマは壁際に座り、目を閉じて意識を集中している。
 クライムの”気”を探っている…のでは無い。

 …クライム、聞こえるか?

 カルマは、クライムに呼びかけていた。

 …クライム、どこに居る?