私にとって、彼らは生きている命そのものだった
生まれた瞬間から1人の人間として歩き出し
1度生まれた彼らを、完全に消し去ることなんて不可能なんだろう
生きている、ここで、どこかで、私の中で、誰かの中で、記憶の中で、
見えなくなっても
2001年 某日。
小さな村の宿でサトリとカルマが休んでいる中、サトリはデバイスをチェックした。
新たな高レベルの依頼が入っているようだ。
『ガトのソーシ村に、高レベルの魔物が出現。ギルド隊だけでは抑えるのがやっとです。強力な賞金稼ぎの助っ人願います』
ソーシ村。
カルマには、聞き覚えのある名前だった。
「サトリ…すぐ行こう」
カルマは呟いた。サトリが頷こうとすると、カルマの様子がおかしいことに気付く。
「…カルマ…どうした?」
サトリに顔を覗き込まれ、憔悴していたカルマは我に返る。
「あ…いや…ごめん。私が戦う訳じゃないのに。ソーシ村は…昔行ったことがあるんだ。心配なだけだ」
「…」
サトリは、すぐに依頼を承諾した。
そしてカルマに笑いかけ、
「行くぞ」
と優しく囁く。
カルマに見つめられながら、サトリは準備を始めた。
ギルドの依頼の欄に”解放の糸”の名前が書かれた時、ギルド隊や村の人々は、かなり心強く感じただろう。
サトリは有言実行、言葉に行動が伴い、カルマの目にもとても心強く、逞しく映った。
2人は、ソーシ村にやってきた。
ソーシ村はガトとホウテイを結ぶ街道沿いにあるが、この街道は旧道と呼ばれ、使用している人間は少ない。
結果的に、ソーシ村も大きく発展することは無く、とはいえマイペースに、古き良き村としてここに存在し続けていた。
サトリはすぐにギルド隊に加勢する。サトリが投入されたことにより、形勢は一気に逆転した。
村の中を見張っていた大人たちは、サトリの活躍を見て歓声を上げる。
カルマは、ソーシ村を少し見回してみた。
建物などは昔と全く違ってはいるが、やはり昔の面影は、どことなく残っている。
そう、ここは…カエデとキリュウと、ソクラの話を聞いた、あの村だ。
そういえば無邪気な子供たちも居た。今ここに居る大人たちは、あの子供たちの子孫なのだろうか?
カルマは長い時の流れを感じ、ここに来れた嬉しさと、切なさで涙が出そうになった。
苦しい…大切な物が増えれば増えるほど苦しい。
自分は一体、どうすればいいのだろうか。
やっぱり、全てが終わった後、この手で―
その時。戦いを終えたサトリが戻って来た。
体は傷だらけだったが、彼はまたカルマを見るなり、
「よーカルマ。終わったぞ」
と、さり気ない笑顔を作って言うのだ。
ギルド隊はまだ外を見張っている。サトリには休息が必要なので戻って来たのである。
サトリも、マモルもヒナギクもそうだが、今回の魔物の凶暴化は、この3人の手を借りないとどうにもならない現場がかなりあった。
よって、この3人の体力はもはや限界で、定期的に休息を入れないととてもじゃないが持たないのだ。
それでも3人は涼しい顔で、周りの人を心配させないように努めていた。
涼しい顔で、何でもやってのけてしまう…
カルマは神の遣いで、不老不死で、特殊な力を持っている。普通の人間には到底手の届かないような救いようの無い存在である。
でもカルマは…この3人なら、本当に自分を守ってくれるんじゃないかという気がしていた。
とても心強く、頼もしく、満たされる…
この3人に囲われて死ねたら本望だ。
サトリに…優しい目に見つめられて死にたい。
それなら、自分はクライムを倒した後、幸せに自害できるんじゃないかと思った。
「サトリ」
カルマは、傷だらけのサトリに駆け寄った。
「早く宿に行こう。私が手当てをする」
「…うん。手当はした方がいいか」
2人はすぐに、宿に行った。
「いてっ…痛…くない!痛くない…」
「うそつけ。痛いくせに」
宿の室内で、カルマは手際よく、サトリの体に包帯を巻いた。
カルマは包帯を巻きながら、サトリに見つめられていることに気付く。
カルマは聞いた。
「…何、見てるんだ?」
「いや…可愛いなーと思って」
「!?」
カルマは思わず、サトリを突き飛ばしてしまった。
「いてて…」
痛がるサトリを見てカルマは我に返る。
「あ…っサトリ…!ごめん、私は何を…」
「いや、今の俺が悪いから」
サトリも、先程の言葉は思わず口から出てしまった言葉だった。今更我に返って真っ赤になってしまう。
手当を再開したカルマを見て、サトリは呟いた。
「…カルマも、そういう反応するんだなあ」
「サトリ、どこが痛む?」
サトリの目を見ないように手当をしているカルマの表情を、サトリは見た。
カルマは…。
「…サトリ、今日はここで、ゆっくり休め…」
「…え?ああ、うん、そうだな…」
カルマは手当を終えると、後ろを向いてしまった。
救いたい
…この子を救いたい…
何とかしないと
俺は
俺が
絶対に、
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