「茜」

・あか‐ね【×茜】

アカネ科の蔓性(つるせい)の多年草。

2 1の根からとった赤色の染料。

・あかね‐いろ【×茜色】

アカネの根で染めた色。沈んだ黄赤色。「夕陽が西の空を―に染める」






 1999年 某日。

 アカネと過ごし始め、カガリと会ってから、3年の月日が流れた。
 結局、グゲン5世と会談をすることは出来なかった。
 中々会談に辿り着けない理由は、ギルドのセキュリティ以外にももう1つある。
 カルマが直接ギルドに行ってカルマの名を名乗り、グゲンに会うように仕向ける、といった作戦が使えない。
 何故なら、今は情報社会なのだ。ギルドに神の遣い・カルマが現れたと他人に知られれば、そのことはすぐに大陸中に広がってしまうだろう。
 カルマは、目立った行動は極力避けたいのだ。

 カルマとアカネは、拠点で毎日を過ごしている。
 2人で勉強し、調べ物をし、宝石を作り。そういった日常が定着していた。
「あー楽しいなあ」
 アカネは本を読みながら、大きな独り言を言った。
「こんな日常が、これからもずっと続けばいいのにな」
「…」
 調べ物をしていたカルマは、アカネを見て言った。
「いや、ずっとは困る」
「ああ、そっか。全て終わらせなきゃいけないですもんね!」
 アカネは苦笑しながら、頭を掻いた。
 カルマは、いつものようにデバイスをチェックする。
「…ん?」
 カルマは、1つだけポツリと現れた光の点に気付いた。
 それが街中だとしたら、クライムなのだろうが…
 その光は、人が住んでいない、魔物も居ないような大陸の端に現れたのだ。
「カルマさん、どうしました?」
「…この光は、クライムなのか違うのか、どっちだろうな。見に行きたい気もするが…」
 アカネの質問にカルマはそう答えると、顔をしかめた。
「この場所だと、道中に魔物と遭遇しそうだな。私たちは魔物と戦えないからな」
「戦えますよ?」
 アカネのその一言に、カルマは更に顔をしかめる。
 しかしアカネは、カルマが言葉を発する前に、その理由を言った。
「殺さないように倒すんです」
 そして、アカネは服の中から金属のワームを取り出すと、それを左手に装着する。
「これで遠くに投げ飛ばします。そのうちに私とカルマさんは逃げる!こうすれば、魔物が居る所にも行けますよ。
私がカルマさんの元に駆けつけた理由は、これにもあります」
 カルマは納得がいった。アサヒがわざわざアカネを生かしてカルマの元に送った理由は、ここにもあったのだ。
「私は、心臓部にある”核”さえ破壊されなければ、死ぬことはありません。どんどん頼って下さいね」
 アカネはカルマを見つめながら、そう言った。カルマもアカネを見つめ返す。
「分かった。すぐに行く」
「はい」
 カルマの一言にアカネも答え、2人は光点を目指すために小屋を出た。


 光点が現れたのは、ガトの国の端だ。
 ガトは昔、一番最初に魔物が現れた国だからなのか、今も昔も魔物の数が多い。
 マイオウギは田畑などで国土の広範囲を有効に使え、ホウテイは鉱山に魔物が住み着いてしまう例があるくらいで、
 基本的には街に侵入されないように魔物退治をする。
 しかしガトは、他国に比べ国土の森や草原に多く魔物が住み、昔、村が滅んだこともある。
 今でも手付かずの森や草原が多く、常に国の自衛軍やギルド隊、賞金稼ぎが駐屯していた。
 カルマとアカネは、ガトの国の端を目指して、魔物の出るといわれる草原を歩いていた。
「カルマさん、下がって!」
 そしてやはり、魔物は出た。
 カルマがアカネに言われた通り下がると、アカネは手に付けたワームで魔物を掴み、遠くへと投げ飛ばした。
 そのスキに2人は走り、その場を離れる。
 この方法で、この場は乗り切れそうだった。

 何体かの魔物をこの方法で退け、光点の場所に近付いていく。
 カルマはデバイスを使わなくても、意識を集中しなくても、その気配を感じ取り始めていた。
 しかし、カルマは”気”を気配で感じても、その正体を確定することが出来ずにいた。

 気配は、クライムなのだ。だが、殺気が全く感じられない…

 ぼんやりしているのだ。今までの、まだ名前の無かった頃の罪人や、クライムと比べて考えると、より一層それを感じる。
 カルマが走り続けると、ガトの端の崖が見えてきた。そしてそこには、1つの人影が。

 クライムだ。間違い無かった。

 カルマは剣に手をかけ、先制攻撃を仕掛けようとする。
 すると、クライムはこちらをちらりと見るなり、空気中に溶けて消えてしまったのだ。
「!?」
 カルマは手と足を止め、周囲を見回した。
 そして、意識を集中する。やはりクライムは、空気中に逃げてしまっていた。
「…」
 少し遅れてアカネも駆けつける。アカネはカルマを見るなり、周囲をキョロキョロと見回した。
「…あれ?カルマさん、クライムは?あっ、違ったんですか?」
 アカネの質問に、カルマは冷静に答えた。
「クライムだったが、消えてしまった。また何か、新しい技でも使ったのか…」
 罪人…クライムが予想外の動きを見せたことは何度でもあった。カルマは今回もそれだと思い、割と冷静でいられたのだ。
 アカネは考えながら言った。
「カルマさんから逃げたってことですかね?それとも、見られたくないことでもしていたのか…」
「…なるほど」
 アカネの疑問は中々鋭かった。クライムの行動には、何か理由があるはずだ。
「また同じように、どこかに現れるかもしれない。とりあえず帰るぞ、アカネ」
「はい…そうですね」
 クライムが逃げてしまった以上、ここに居ても仕方が無い。2人は、拠点に帰ることにした。


 数日後。
 再び、別の場所に謎の光点は現れた。
「カルマさん、やっぱり…」
「…ああ」
 そう、クライムと思われる光点は、また人が住んでいない、魔物も居ないような大陸の端に現れたのだ。
 カルマは、出発の準備をしながら言った。
「すぐに行く」
「カルマさん、イタチごっこみたいになりませんかね?」
 アカネのその質問は最もだが、カルマには考えがあった。
「とりあえず、試してみる」
 2人は、すぐに出発した。