「茜」

・あか‐ね【×茜】

アカネ科の蔓性(つるせい)の多年草。

2 1の根からとった赤色の染料。

・あかね‐いろ【×茜色】

アカネの根で染めた色。沈んだ黄赤色。「夕陽が西の空を―に染める」






 1926年 某日。

「…親父…おふくろ…ごめん」
 朝、クオンとミクリヤに出迎えられたアサヒは、うつむいて2人に謝った。
「…!」
 ミクリヤは、思わずアサヒを抱き締める。
「アサヒ、ごめんね。ごめんなさい」
 クオンも、アサヒの肩に手を置いて言った。
「アサヒ、不器用な親ですまない。僕たちは、お前が居ないと寂しいよ」
 アサヒは赤くなって「…何いってんだよ」と呟いた。
 カルマは、この場は席を外した。

「じゃあカルマ、いつでも来てくれよ!」
「カルマ、体に気を付けてね」
「…じゃあな」
 クオン、ミクリヤ、そしてアサヒと別れのあいさつをして拠点に戻ったカルマだったが、またすぐにクオンの家に行くこととなる。
 なぜなら…


 カルマはまず、ホウテイのギルドに電話をした。
「ギルド長のグゲン3世と面会をしたいのだが…部屋に籠っている…?そうか…」
 カルマは電話を切ると、すぐにギルドに行くために出発する。


 電車に乗り、カルマはギルドの手前まで来た。
 そして、ギルドの内部だけに範囲を絞って意識を集中する。

 居る…クライムだ。

 そう。カルマは、レーダーの地図のホウテイ内に、ポツリと現れた光の点に気付いたのだ。
 このレーダーは凄い。”気”が人間的な動きかどうかだけでなく、地図のどのあたりに居るのかが、はっきりと分かるからだ。
 街の中に光の点が1つだけ現れたとしたら、それはクライム以外の何者でも無いのである。
 そしてその光は…ギルドの建物の中に現れたのだ。
 レーダーは進化していて、地図を拡大できる。お陰で、すぐにクライムの居場所を特定できたのだ。
 クライムの出現を早期発見することが出来た。今なら、大きな被害が出る前に何とか出来るかもしれない。
 そして早く何とかしなけれなならない。何故なら、今クライムが一緒に居るのは…多分、グゲン3世だろうから。
 グゲンがクライムの呪いにやられるか、もしくはバースの時のように意気投合でもしてしまったら、どうなるのだろう。
 ギルド長がギルドをめちゃくちゃにしたら、魔物はどうなる?
 カルマはここまで考えた。クライムが、わざとグゲンに近付いたのではないかとすら思った。
 カルマは考えなければならない。今のうちに、出来ることを。


 そうしてカルマは、クオンの家に行くことになった。
 カルマには、案があった。
「やあ、カルマ!」
 クオンがいつもの流れで飛び上がったが、カルマの目には奥の机で勉強をしているアサヒが目に入った。
 アサヒもカルマに気付いたが、すぐに目を読んでいる本に戻す。
 アサヒはカルマの前で号泣してしまったことを思い出し、カルマの目を見ることが出来なかった。
 カルマは勉強をしているアサヒに納得し、クオンに向かって本題に入った。
「クオン、頼みがある。グゲンが罪人にそそのかされるかもしれない。オトリを使ってグゲンと罪人をおびき寄せたい」
「…へえ、すごい状況だね」
 さすがのクオンも、事の重大さを感じて少し真面目な表情になった。
「で、何をすればいいんだい?」
 クオンの質問に、カルマは答える。
「まだ罪人が現れたばかりだから、グゲンが正気を保っているかもしれない。
クオンからグゲンに、”ロボットをギルドに提供する”という嘘を付いてほしい。グゲンと共に罪人を人気の無い所におびき寄せたい」
 ギルドの内部でも、街中でもクライムとは戦いたくない。人間を巻き込むかもしれないからだ。
 そして、出来れば自然に彼らをおびき寄せたかった。カルマの影をちらつかせるのはタブーである。
 カルマの話に納得したクオンは、電話に向かった。
「分かったよ、カルマ。早速ギルドに連絡するよ」
 クオンがギルドに電話を掛ける。
「あ、もしもし。ギルド長は…ああ、部屋に籠ってる、ね。言付けを頼めるかな?
ロボットの大量生産に応じようかと思ってるって、今伝えて欲しいんだけど」
 しばらくの沈黙。電話の相手が、グゲンと話をしているのだろう。
「…あ、はいはい。え?実物を持ってこい?うーん、分かったよ。じゃあまた」
 そしてクオンは電話を切った。
 実物を持ってこい、とのことだった。
 カルマは考え込む。
「…実物か。難しいな…ロボットは、封印してしまったんだろう?」
 カルマのその一言に、クオンはあっけらかんとして言った。
「え、難しくないよ?封印を解けばいいんだし」
 それを聞いたカルマは、更に考え込む。
「…いや、もし実物を持っていって、奪われてしまったら…恐ろしいことになるかもしれない」
 ロボットはカルマの存在がきっかけで作られた。奪われ、大量生産が現実のものになってしまっては困る。
 しかしクオンは、首を横に振って言った。
「ロボットはカルマを模して作ったから、戦闘能力は相当高いよ。人間なんかに捉えられて分析されるなんてことは、まず無いと思うけど」
 それは本当だろうか。それなら…。カルマは考え込む。
 クオンはカルマの返答を待たず、アサヒに向かって言った。
「アサヒ。契り廃工場までカルマを案内してやってくれ」
「!?」
 アサヒは、びっくりしてひっくり返りそうになる。
「何で俺なんだよ!自分が行けっつーの!!」
「いやー、僕、魔物と戦ったこと無いから」
「俺だって数回しかねーよ!!」
 案内というのは、その場所へ連れて行くだけでなく、カルマの代わりに魔物を倒すということも含まれていた。
 クオンは、カルマに言った。
「君、確か使命のせいで魔物と戦えないんだよね?
ロボットが封印してあるのは契り廃工場なんだけど、大昔に魔物のせいで滅んだ”契”っていう村にあるんだ。
今はもう誰も住んでないから魔物も出ちゃうかもしれない。アサヒに守ってもらいなよ」
「いや、いや俺、倒せるか分かんねえし!?」
 慌てて答えたアサヒに、カルマが近付く。
「安心しろアサヒ。魔物が出たら、私がお前を担いで逃げる」
「はあ!?」
 アサヒは更に慌てた。これ以上、カルマに失態を見せる訳にはいかない。
「お前に担がれなくても戦うっつーの!!」
 アサヒはそう言うと、すぐに出発する準備を始めた。
 クオンが、準備をしているアサヒの背中に話しかける。
「ロボットのこともちゃんとエスコートして可愛がってねー」
「ああ、する、する!!」
 アサヒはイライラして適当に答えた。
 そして、
「早く来いって!行くぞ!」
 と言って外に出た。
 クオンは、首を傾げているカルマの肩をポンと叩く。
「…カルマは、アサヒを言いくるめるのが上手いね」
「…?…あいつが勝手に怒ってるだけだが」
 無意識の産物である。
 アサヒとカルマは、契り廃工場へと出発した。