7.幻:自分の中にだけ:裏











自分の心を見つめてみたい


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日時:不明
場所:トーキョーシティ
自分:


 足元がふらつく。
 真っ暗闇の中、
 百里は、さまよっていた。
葵「百里…大丈夫か」
 第6電波塔の暗闇を探索する自分が、自分の心境と重なる。
 昨日は、めまいがしなかった。もう体が慣れたのだろう。
 何に慣れたのだろうか。クローンに、か?
太一「…百里?百里と葵か?」
 目の前に、太一たちが現れた。
百里「あっ、タイチ…」
 なあタイチ。お前、もし自分がクローンだとしたら、どう思う?
 百里は首を横に振り何とか我に返った。
 百里は窓の外を見る。随分高くまで上がってきたらしい。別のことで頭がいっぱいで、全く意識していなかった。
五月「悪いな、ここまで来させちまって。動力のある場所見つけるのに時間食っちまって…なあ、三琴、七々」
 そこには、”三琴”と呼ばれた緑髪の女性と、”七々”と呼ばれたオレンジ髪の女性が一緒に居た。
七々「でも、無事見つかって良かった。この電波塔を壊すのに力を節約出来れば、2つ目は通りすがりでも全ての力を使って一瞬で壊せるよ」
三琴「全ての力を使っても、支えてくれる人が居るものね」
 真っ赤になった七々を見て、<星>の皆が笑う。
 百里も何のことで笑っているかは分からなかったが、その空気に釣られて嫌なことを忘れようと努力する。
 その時。
三琴「ねぇあなた…顔色悪いけど、大丈夫?」
 それは、百里に向けての一言だった。百里は突然そう言われ、硬直する。
 見抜かれた。
三琴「…あなたも、彼女のこと、ちゃんと支えてあげてね」
 そしてこれは葵に向けられた言葉だ。
葵「ああ。任せてくれ」
 葵は即答した。即答しなければいけない気がしたから。
英二「今は結構遅い時間だしね。みんな疲れてるだろうし、早く帰ろう」
太一「だな。みんな帰ろう。百里、歩けるか?」
 太一が、あの時と同じ笑顔で話しかけてくる。

 やっぱダメだ

 今は…その笑顔を見るのが…つらい

 百里は再び首を横に振る。
太一「歩けないか?」
百里「ち、違う!そういう意味じゃない。歩ける、行くぞ!」
 百里はずんずんと歩き出した。
 いつも通りの百里…に戻ったのだろうか。
葵「…」

 脱出までにあと必要なのは、最後のデータ解析と皆の体力だ。
 メンバーは、1日だけ休む時間を与えられた。
 その、”考えごとをしやすい”長い1日が百里と葵にもたらした物は…なんだったのだろうか。


 朝。充分に体を休めた皆は、同じ部屋に集合していた。
太一「みんな、データの解析も終わって、やることはあと1つだ」
 ここは太一が指揮を執る。
太一「トーキョーシティ脱出作戦だ。俺たちが目指す場所は…街のはずれにある”風の聖堂”」
 皆、少しだけぎょっとした顔をした。
幸四「聖堂…この街にそんな意外なものがあるんですね」
巳六「逆に怖ぇーわ」
 この街の奇天烈さは、相変わらずである。
 利九は、一枚の簡易な地図を広げた。
利九「チームを2つに分ける。1つは電波塔を破壊しながら聖堂に向かうチーム、
もう1つはダースの目を分散させながら聖堂に向かう撹乱チームだ。メンバーは…」

破壊:七々、巳六、幸四、五月、利九
撹乱:太一、英二、三琴、八重、百里、葵

 地図には、各チームの移動経路がペンで書かれている。
利九「この後、この近くにある第6電波塔を破壊したら作戦を開始する。街が大騒ぎになり、ダースも出てくるだろう。
皆、それぞれ作戦通りに動いてくれ。聖堂前で全員落ち合えたら、中に入る」
 太一は皆を見回した。
太一「みんな…俺たちの目的は、ただ1つ。”あの場所”に帰ることだ…この街で何が起こっているのか、俺たちには分からない。
この街のことは、この街の人に任せて、俺たちは自分たちの目的だけを見つめ続けよう」
 百里は、「俺たちは街の外に出る方法を探してるだけ」という太一の言葉を思い出した。
 そう。<星>の9人も、百里も、巻き込まれただけであって、この街のことなどどうでもいいはずなのだ。
 でも…百里は、知ってしまった。
太一「みんな、行こう!!」
 皆、太一の呼びかけに返事をする。百里も葵も返事をしたが、心ここにあらずだった。

 皆が第6電波塔の前に集まっている頃。
 利九は、1枚のカードを葵に手渡す。
葵「これは?」
利九「ダースのデータを全て消滅させる破壊コードが入った、カードキーだ」
葵「!??」
 今…とんでもない物が葵の手に渡っていた。
利九「さっき太一が言ったように、俺たちはこの街には大きくは関わらない。
だから、これはこの街の住民であるお前にやる。使うのか破棄するのかは、お前が決めろ」
葵「…」
 利九はそれだけ言い、他のメンバーの元へ行ってしまう。
 葵はカードをぎゅっと握りしめた。
百里「…お前…それ、どうするんだ?」
 2人の会話を、百里も聞いていた。
葵「…考えないといけない…なぜ俺が…なぜ俺に…」
 葵は1人ごとのように呟く。そして、カードを懐にしまうと百里の方をようやく向いた。
葵「行こう、百里。俺は俺で、ちゃんと段階がいくつかを知る方法を考えておくから。お前は街の外に出ることを考えろ。
もしかして俺だけ途中から別行動になるかもしれないが…必ず、結果をお前に伝えられるように考えておくからな」
百里「街の外に出て…私は、どこに帰ればいい?」
 百里は思わず、ぽつりと本音を口にする。
百里「いや。何でもない。そろそろ作戦が始まるぞ」
 葵に背を向けた百里の背中を、葵はただじっと、見つめていた。


 ドォン。

 七々の、”何らかの力”によって電波塔の動力が破壊される。
 と同時に、周辺に大きな警報が響き渡った。
 パニックになる住民。
 響き渡る、警報や放送。
太一「みんな、行くぞ!!」
 作戦は始まった。
 チームは2手に分かれて走り出す。


 撹乱チームである百里と葵は、大きな通りを目立つように走った。
 そして、1つの交差点で止まる。暗躍している破壊チームがもう1つの電波塔を破壊するまでは、この辺りでダースの気を引くのだ。
??「ねぇ…葵だっけ?」
 金属の棒の武器を手に取って待機していた葵は、<星>の少女に話しかけられた。
葵「お前は…えっと」
??「八重、だよ」
 赤い毛先を持つ少女は、”八重”と名乗った。
八重「あなたは、これからどうするの?」
 なぜ八重にこんなことを聞かれたのか、葵には分からなかったが、なぜか全てを見透かされているような感覚を覚える。
葵「…俺も、決めないといけないことがあるんだ。考えないといけないことがある」
 八重の質問に、しっかりと答える。そして。
葵「八重たちは、ちゃんとした目標があるもんな。俺も見習わないとな」
 八重はそれをきいて、微笑んだ。
八重「そう、帰らなきゃならないんだ。約束したから」
 それは、誰かに向けられた言葉だった。
八重「必ず帰るよ。たとえ別の姿になっても、意識だけの存在になっても」