4.雪:無を歩く:裏











ユリ、俺だよ、チサトだよ。今どこに居る?
何だか色々あって、お前のこと探しそびれてるよな…
すぐ近くに居ると思ってるから心配してないってのもあるけど。
お前は、俺よりしっかりしてるからね。
俺は、ドリーム島やそこに住んでいる人たちのことを少しずつ知っていってるんだ。
そして、少しずつ
知っていくんだ

”彼ら”――――――――――

―――彼らのことを。



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日時:不明
場所:トーキョーシティ
自分:百里


 百里は、<星>と名乗った青年の腕の中に居る。青年は百里を抱えて、薄暗い通路を走っていた。
星「ここは政府ビル3号館、ダースの本社だ。
奴ら、トーキョーシティの住民の管理は徹底してるけど、進入や脱出されることには慣れてないみたいだな」
 警報の音すらせず、通路は静まり返っている。
百里「…やっぱり、平和ボケしてるなこの街は」
星「あはは、確かに!」
 ちょうどその時、視界が一気に明るくなった。
 そこは、ガラス張りになっている空中の通路になっていた。街が眼下に広がっている。
 ここで百里は初めて、自分がビルの高層に居ることを知った。
 2人は異変に気付く。通路の両側が、水路になっていたからだ。
百里「何でこんな所に…?」
星「催眠ガス作ってるんだってさ」
 ビルの高層に水路が流れている様子を見て、更に…
百里「やっぱり変な街だな」
 もはや慣れた所もある。百里は星に促し、彼の腕から放れて自分の足で立った。
 2人は走り出す。
百里「助けてくれてありがとう。お前も街の外から来て、洗脳されそうになったのか?」
 走りながら話した。
星「いや、”俺たち”も外から来たんだけど、洗脳されそうになったのは数ヶ月前だ。
今日は、データを盗みに来たら2人の人間を洗脳しようとしてるっていう情報を発見したから、ついでに助けたんだよ」
百里「そうか。助かった」
 2人は空中の通路を抜け、再び暗がりに入る。
星「合流場所は、もう少し下の階なんだよな…階段この辺にあった気がするんだけど」
 星は、走りながらキョロキョロと周りを見回した。
百里「合流…私の仲間を助けに行った仲間か?」
星「ああ。それともう1人、データを盗んでいる奴な。今回は3人だ」
百里「今回?」
 その時、ちょうど階段を発見する。
星「俺たち、<星>とダースに呼ばれたメンバーは全員で9人なんだよ。今は情報を集めるために別行動を取っているんだ」
 2人は階段を下り出した。


 階段を下りた先は、薄暗いロビーになっていた。
星「ここで待つか…」
 人目は無いが、2人は目立たないように壁際に寄る。
百里「おい、星。少しまとめていいか。色々なことがありすぎてまた混乱してきた」
星「えっ?ああ、いいよ」
 百里は目をつむってしばらく考え込む。数分後に目を開けて話し始めた。
百里「ダースは政府とタッグを組み、トーキョーシティの住民を洗脳し管理している。
<星>は街の外から来て洗脳を免れたメンバーで構成された、ダースの対抗組織…か?」
 星は首を、少し傾けた。
星「半分正解で半分はちょっと違うな。俺たちは街の外に出る方法を探してるだけで、対抗はしてないつもりだよ」
百里「街の外に出る方法…!?」
 星の肩をがしっと掴む。
百里「私も街の外に出たいんだ。外へ出るのは、データを盗まないとならないくらい難しいのか?」
星「そう。えっと…名前は?」
百里「私は百里だ」
 星は一度咳払いをし、百里の目を改めて見た。
星「街を囲う外壁を見たか?アレは街から港を越えて海の方まで広がってるんだ。9人で調べたけど、どこにも出入りする所が無いみたいだ」
百里「…?海まで広がってる?おかしいぞ。私は港で目覚めたんだ。海からここに来たはず…」
星「お前を街に捕らえる際に違和感を感じさせないように、港で目覚めるようにダースが仕組んだんだろ」
 百里は納得した表情をした。しかしすぐに…
百里「…待てよ。出入りする所が無い訳が無いだろ。無かったらどうやって外から人が来るんだ」
星「その通り。ダースの関係者しかしらないような出入口が必ずどこかにあるはずなんだ。
俺たち<星>は、それを探すためにデータを盗もうとしてるんだよ」
 そこまで聞いて、百里は星の手を取る。
百里「なぁ、私も街の外に出たいんだ。私も<星>に入れてくれないか?」
 それを聞き、星は百里に微笑む。
 暗がりの中に見えた、太陽のような笑顔だった。
星「百里にも大切な場所があって、大切な人が居て、そこに帰りたいよな…いいよ、一緒に街の外に出るために協力しよう」
 百里は彼の笑顔に少しドキッとして、手をぱっと放す。
百里「な、なあ…<星>っていうのはチームの名前なんだろ?お前のことは何と呼べばいいんだ?」
星「俺は…」

 百里はこのタイミングで、少しめまいが再発したのを感じた。
 だが、ぐっと堪える。


星「俺の名前は…」


 めまいは収まった。大丈夫だ。





星「太一」





 赤髪の青年は、”太一”と名乗った。