「光」

寄り添う日だまり











弱音を吐き出せない人は
黙って涙を流せばいい
それを、言葉を聞くように、
弱音を聞いてあげるように、
寄り添って見守る誰かが居てあげればいい



 9人は、政府ビルの正面玄関まで来た。
 やはり様子がおかしい。

 ドォン。

 爆発音が聞こえた。
太一「…思ったよりヤバそうだな…」
 入り口は、人々が出たり入ったりしていた。
利九「おい、何があった」
 その辺に居た人に聞いてみる。
人「研究長が…暴走して次々と機械を破壊している…」
太一「!!」
 全員、顔を見合わせる。
幸四「データを消去されて、頭がおかしくなったんですかね?」
五月「とにかく、行ってみようぜ」
 9人はすぐに中に入った。


 中は、更に慌ただしかった。
 人々があっちに行ったり、こっちに行ったりしている。
英二「どこに向かえばいいの?」
 利九は、周りの様子をうかがった。
利九「…あっちの方が一番慌ただしいな…」
八重「…!」
 利九が見た方向は、前に八重の居た部屋の方向だった。
太一「研究長ってことは、研究室に居る可能性が高いよな。行ってみよう」


 あの部屋に近づくにつれて、人々の人数は減ってきた。
 そして、煙と金属片。
 9人は立ち止まらず、走り続けた。
 ついには、誰も居なくなる。誰も居ない、煙と金属片だらけの通路をひたすら走る。
 そして。
 八重が居た研究室”だった”所に着いた。
 もはや壁すら無かった。まるで、大爆発でも起きたかのような…
 いや、実際起こったのだろう。
太一「これは…一体何があったんだ!?」
 その時、めちゃめちゃになった部屋の中心に、人が居ることに気付く。
 1人の、中年の男だった。
 そして…太一たちには、少し見覚えのある顔だった。
太一「…お前が、研究長…」
 見覚えがあったのは、こいつがナンバーズの研究の長だからだろう。実験の時にそこに居たのかもしれない。
研究長「…ククク…」
 不気味に、笑った。
利九「お前…何をした」
 研究長の目は、焦点が定まっていなかった。
研究長「今まで…コツコツと溜めてきたデータが、全部消えてしまったから、全て破壊してしまおうかと思っているのだよ」
太一「!!」
 太一が一歩前に出た。
太一「お前、だからってこんな…」
幸四「…待って下さい、太一」
 幸四が手で太一を制する。
幸四「彼はマッドサイエンティストタイプですね。このまま勝手に研究に関する機器を全て破壊してくれれば、
とても好都合です。そうすれば、二度と研究を再開出来ませんからね」
太一「…!!そうか…!」
 太一は皆を見回した。
太一「じゃあ、とりあえずビルの中に居る人たちを避難させよう。爆発の影響でビルが崩れないとも限らない…」
『繭野』
 突然、息吹の声が聞こえてきた。
 肉声ではない。放送だった。
『繭野、お前、何をしている』
 繭野(マユノ)とは、おそらく研究長の名前だろう。
繭野「…もうデータも無いから、研究の全てを壊そうとしているのだよ…ククク…」
 息吹の反応は、
『…そうか』
 それだけだった。
 三琴が、皮肉めいた表情で上を見上げる。
三琴「あら、止めなくてもいいのかしら?あなたの研究の成果が全て無くなっちゃうわよ?」
『それもそうだが』
 息吹の声は、全く慌てる様子も醸し出さなかった。
 ゾッとするくらいに。
 息吹は言った。
『私は、詩帆を連れて、ライク島に向かおうと思っている。ドリーム島はここで捨てる。データが無くなったからな。
ライク島へ行って、詩帆が死んだら私も詩帆と共に死ぬ。詩帆が助かったら、私はライク島のボスになる。
それで私と詩帆の理想は実現するのだ』
 9人は全員、黙ってしまった。
 何といえばいいのか。

 呆れ。

 それが一番大きかったのかもしれない。
三琴「…詩帆と、何を約束したの?」
『私の研究により、島を発展させる。私の研究の成果を見せられれば、場所はどこだっていい』
 三琴は鼻で笑った。
三琴「それに賛成しただなんて。詩帆は、よほどの悪女だったんでしょうね」
 三琴の皮肉に対し、息吹は愛おしそうに返す。
『キミは…私を、愛していたからな。私の言ったことは、何でも信じてくれた』
三琴「…」
 うつむいてしまった三琴を見て、太一は息吹に向かって声を荒げた。
太一「テメエなんかに、三琴は渡さねえよ!!俺達は今からここの人たちを避難させて、そのままアジトに帰るんだ…」
繭野「どこに逃げたって、誰も助からないんだぞ?」
 その場に居る、全員が押し黙った。
繭野「なぜなら、自爆装置を発動させたから、ドリーム島は3日後に消滅するんだからな」
 何を言っているのだろう。
 一瞬、誰もが繭野の言っていることを理解出来なかった。
太一「…何だって…?」
 太一は利九を見る。
利九「…政府のデータ内に、そんなものは無かった」
 繭野はいやらしい笑い方をした。
繭野「当たり前だよ…私がこっそり作って、こっそり息吹にあげたシステムなんだからなあ…だが、今回は息吹の許可無く発動させてしまったけど!フフッ…」
 三琴は顔を上げ、上を向いて叫ぶ。
三琴「お願い息吹、今すぐ止めて!!」
 全員は、息吹の反応を待った。
 息吹は。
『…いや。私は今からライク島のボスになるかもしれない。その場合、ドリーム島は脅威になるから、ジャマになるだろうな。好都合だ』
 もはや、9人には怒りすら生まれなかった。
五月「じゃあ、今からテメーに会いに行って、無理やり止めさせてやるよ…!!」
三琴「ええ。息吹、今から行くから待っててちょうだい」
 息吹が、嬉しそうに声を上げる。
『ああ。待っているよ、詩帆』
 そこで放送は途絶えた。
巳六「なあ、とりあえず、色んな人を避難させねえ?」
七々「…そうだね。そうしたら最上階に向かおう、太一くん」
繭野「待ってくれ」
 すっかり忘れ去られていた繭野を、全員が振り返った。
 手には、大きい機械銃を持っている。
繭野「…キミたち、ウィルスとは何か知っているかな?」
 ウィルス。最近、嫌ってほど目にした文字だ。
繭野「この銃の中に、沢山入っているとしたら…どうする?」
 今ので、利九は全てを悟った。
利九「貴様が…ウィルスを作ったのか…!そうなのか!?おい!!!」
 今にも繭野に掴みかかりそうな利九を、太一と幸四が止める。
太一「こんな奴放っといて、早く行くぞ!!」
七々「…待って太一くん…私も…許せない…この人…」
 巳六はウィルスのせいで死ぬかもしれない。七々もわなわな震えながら前に出る。
繭野「作ったは作ったけどな…<E>の機器に感染してしまったのは予想外だったな。ま、治す方法なんて考えてなかったからどうしようもなかったけどなあ…」
利九「…!!」
七々「…!!」
 顔を怒りに歪めた2人を、太一が手で制した。
太一「2人とも、行くぞ!!あいつが持ってる銃のウィルスがどんなウィルスか知らないけど、浴びたらどうなるか分からないぞ…!」
 繭野は、気味悪く笑った。
繭野「このウィルスが、どんなウィルスか知りたいか…?このウィルスは、ナンバーズの寿命を一気に1週間に縮めるウィルスなんだよ」
 その場に居る、全員が凍りついた。
 とても、さらっと、とても恐ろしいことを言っている。
 人間の寿命が、一瞬で1週間になるのだ。