今、「お前の一番大切なものは何だ」って聞かれたら…
俺は、何て答えるんだろう。
前までは、はっきりと断言できた。
永遠にそれは揺るがないと思ってたんだ。
今は…”どっち”か分からない。
どっちなんだ…今は…
9人はアジトへ戻って来た。
太一と利九は、データをまとめてすぐに零の医療所へ向かった。
残ったメンバーは、アジトで各々過ごしていた。
すると。
広間の窓の外を、じっと眺めている五月が居ることに幸四が気付く。
幸四「何やってるんですか」
五月は無表情で振り返った。
五月「…別に」
幸四「別にってことはないでしょう」
五月の表情は、悲しみでもなく、怒りでも無かった。
どちらかというと、何か考え事をしている様に見えた。
五月「…うるせーな…声かけてくんじゃねーよ」
そのままその場を離れ、広間から出て行く。
その後ろ姿を見て、幸四は手を腰に当ててため息をついた。
何を考えているんだか。
まあ…大体想像つきますけどねえ。
太一と利九は、零にすぐに寿命システムの話をした。
驚きを隠せない零に、立て続けにデータを渡す。
零「…こんな…信じられない…」
すぐに太一のレントゲンを撮った。
このレントゲンは、零が最近作り上げたものだ。利九が持ってきたデータを元に、チップの詳細も写し出すように作り上げた。
出来は成功のようだった。しっかりとチップが写し出されていた。
零「これは…これが、寿命チップだね。正確には、”これら”…かな」
利九「…これが…」
正直、太一にはどれが寿命チップなのかさっぱり分からなかったが、利九はこれを見て納得したようだった。
零「これだよ太一。数字が出ているだろう?これは、寿命が来るまでの日数がカウントダウンされているんだよ」
見えた。
”372”という数字が。
無数に見えた。
太一「…こんなに、たくさんチップが…!?」
意味が分かった。なぜ、誰にも外せなかったのか。
少なくとも30個はあった。これを、1つ残らず、後遺症を全く残さずに外せるとはとても思えなかった。
利九「…372…」
372、という数字も正確だった。計算すると、太一の寿命は残り372日である。
恐ろしいくらい正確だった。
零「…一応、研究出来るだけやってみるよ。でも…」
太一「でも…?」
零「はっきり言って、かなり難しい。これは、ウィルスによって<E>のチップに寿命チップが拡散されているんだ。
つまり、寿命チップを取り出すということは、<E>のチップを取り出すのと同じことなんだよ」
利九「…」
零は、手に持った資料をギュッと握った。
零「でも…がんばってみるよ。1年以内に何とかすればいい…」
太一「違うんだ、レイ…3週間なんだよ。3週間以内に何とかしてもらわないと…手遅れなんだ…」
零は唖然とした。
零「3週間だって…!?いくら何でも、それは無理だよ。一体何で…」
太一「巳六。あと…3週間の命なんだ…」
零「!?」
資料を落とす。
零「…何…だって…!?…本当かい…」
静かに、頷いた。
零「…なら、今すぐに巳六を連れて来てくれないかい。レントゲンを撮りたい」
それをきいて、太一と利九は顔を見合わせた。
太一「巳六、怪しむだろうなあ…」
利九「…あいつは、勘が鋭いからな」
既に零は、レントゲンの準備を始めている。
零「そんなこと言ってる場合じゃないだろう。さあ早く!」
零の目は、完全に医者の目だった。
太一「…分かった」
太一は走ってすぐにアジトへ向かった。
巳六「…怪しい」
予想通りの反応だった。
巳六「ビルの時も思ったけど、お前ら何か俺に隠し事してんだろ」
やっぱりなあ…
医療所に連れて来られるなり、巳六は完全に疑いの表情で3人を見比べた。
太一「いや、ちょっとアレだよ、アレ。なあ、利九」
ちなみに太一は嘘が下手である。
利九「…1番最初に<E-ナンバーズ>になったお前のデータが欲しいだけだ。<E>になった時期によって、チップに相違があるのかどうか調べている」
利九が上手くフォローした。
巳六「フーン…」
しかし、巳六の疑いが晴れた訳ではない。
そこに、零がレントゲンの機械に手をかけて話しかけた。
零「巳六、ちょっとここに寝てもらっていいかい?」
巳六「うわっ、ますます怪しい!!」
オーバー気味に仰け反り返った。
そして。
巳六「…本当の理由を教えてくれるまで、ぜってー寝ねーから」
腕を組んで、そっぽを向いてしまった。
巳六は難しい。何せ、気分屋だからだ。
利九「…巳六」
利九が、1回咳をした。
利九「おとなしくレントゲンを撮らせてくれたら、1回だけ何でも言うことをきいてやる」
巳六の表情が変わる。
巳六「…マジ?」
それは、完全に面白がっている表情だった。
巳六「利九、忘れんなよ!」
利九を指差して笑った。そして、そのまま素直にレントゲンの台に寝転がる。
本当に気分屋だ。
…太一と利九には、信じられなかった。
今、確かにそこに居る巳六が、3週間後にこの世に居ないのかもしれないなんて。
零「…よし、巳六、もう行ってもいいよ」
巳六「何だよ。結果とか教えてくれねーの?」
レントゲンを終えた巳六は、素直に入り口の方へ向かっていた。
巳六「まあいいけど。とりあえず、利九に何してもらうか考えとかねーとな」
そして。
巳六「ああ…それと。太一、利九。俺、何言われても動じねー自信あるからさ。気が向いたら、本当の理由いつでも言いに来いな」
太一「!!」
利九「!!」
巳六「じゃ、行くわ」
普段通りの表情で、医療所を出て行った。
利九「…」
利九は、複雑そうな表情で巳六が去ったドアを見つめていた。
23。
レントゲンに写っていた数字だ。
零「…どうやら、本当みたいだね…」
太一「…」
利九「…」
3人は言葉を失ってしまう。
零「…出来る限りのことは、やってみるよ…」
23日。
直接数字として見てしまうと。
何だか。
…足が、すくんでしまいそうだ。
現実を見せられた気がして。
ああでも
俺は
まだ
諦めてない
まだ
夜。広間に、太一と利九以外の皆が集まっていた。
そこに、太一と利九が帰ってくる。
三琴「あら、2人とも、お帰りなさ…」
思わず、そこで止まってしまった。
利九が、険しい目つきでスタスタと歩いていたからだ。
まっすぐ廊下のドアへ歩いていく。
その後ろには太一が居たのだが。
太一は、笑顔だった。
太一「ああみんな。利九、データの取りすぎで少し疲れてるんだ。俺、部屋までちゃんと送ってくる」
利九の背中に手をやって、皆に笑いかけた。
七々「…どうしたんだろ」
巳六「怪しいな…」
皆は、どよどよと顔を見合わせた。
英二「…」
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