「檻」

闇の街、這い回る蛇の如く











私はあなたのことを何も知らない。
”5年間”に、どれくらい色々なことがあったんだろう。
ねえ、あなたが私を支えてくれたみたいに、あなたに何かあったら、今度は私が



 6日目。
 三琴以外の全員が、広間に集まっていた。
太一「よし、作戦会議を始めるか!」
英二「…何張り切ってんの」
太一「いや、何となく」
 皆、太一を見て笑った。太一が居ると、それだけで場が何となくまとまるのだった。
 利九が1回咳をする。
利九「みんな、これを見てくれ」
 そう言って、全員に紙を配った。
太一「…地図…?商業区のか?」
 それは、商業区の地図だった。かなり細かい所まで描かれている。
英二「これ、俺達の手作りなんだよ」
太一「マジか!!すげーじゃん…!」
 太一が立ち上がって皆を見回す。
幸四「まさか、利九が地図を作ろうとしていたなんて、考えもしませんでしたよ」
五月「色々調べたり書いたり、大変だったんだぞ」
 利九は幸四と五月をそれぞれ見て、頷いた。
利九「だが、思ったより早く完成しから良かった。作業中に幸四と五月が、”勝手に”お互いに対抗意識を持ってくれたおかげで、だいぶペースが早まったからな」
幸四&五月「!?」
 太一と巳六がブッと噴いた。
五月「利九…テメエ…」
幸四「…利用されてたと思うと癪ですね。五月なんかにムキになるんじゃありませんでした。」
五月「アァ何だと…!?」
利九「今から説明をする」
 利九は聴いていなかった。
利九「商業区はかなり道が複雑な上に、アンテナも政府の支部のすぐ近くにあるから、地図をしっかり頭に叩き込んでくれ。
そして、今回マーキングをするまでの手順だが…俺達はもう、政府に”見られること”自体が危険な立場だ。
それに、あんなに道が複雑な場所で見つかったらまずい。そこで…」
 利九は、テーブルの真ん中に大きく引き伸ばされた地図を置いた。そして、2つの建物を指差す。
利九「商業区の中で悪名高い金字屋と銀将屋を、路上で大喧嘩させるように仕向ける。
あの2つが喧嘩をすると、100%の確率で政府が鎮圧しに来るようだ。支部が隙だらけになったところで、その隙にマーキングをする」
太一「…まあ、1番安全な方法だな」
 利九の話を聴いて、巳六は密かに反応をした。
巳六「銀将屋ねえ…懐かしい」
 そうボソリと呟いた。
利九「チームを2つに分ける。まずは金字屋をそそのかすチーム、銀将屋をそそのかすチーム、そして、その間にあるビルの屋上から合図を出すチームだ」
 英二が右手を上げた。
英二「え、アンテナに向かうチームは?」
利九「アンテナには俺が1人で向かう」
 全員驚いた顔をした。
太一「1人って、大丈夫かよ!?」
 利九はすました顔をしている。
利九「人数が多い方が危険だ。俺1人でいい。俺が危険にならないように、お前たちががんばってくれればいい」
幸四「さらっと凄いこと言ってますねえ…」
 とりあえず、チーム分けをすることにした。
五月「金字屋には俺が行く。地図描いてる時に、その辺調べたの俺だからな」
幸四「五月なら、金字屋そのものを1人でツブせそうですね」
 五月は、得意そうに笑った。
五月「まあな。その気になりゃ一晩でな」
幸四「何せ、相手はただの人間ですからね」
五月「アホか。能力なんて使わなくてもツブせる」
幸四「出来ますかねえ…」
五月「やってやろうじゃねーか…」
英二「…誰も金字屋ツブせなんて言ってないでしょ」
 ボソリとツッコむ。
 利九は、キョーダイを一通り見回した。
利九「よし、じゃあ後は、そっちに幸四と八重が向かってくれ」
 幸四と五月は、あからさまに嫌そうな顔をした。
五月「幸四はいらねえ。八重だけでいい」
幸四「僕だって五月なんて嫌なんですけど。八重だけでいいです」
 八重はそこでスッと立ち上がる。
八重「ケンカしちゃダメ。仲良くして!」
幸四&五月「…!」
 八重にそう言われて、2人はおとなしくなった。
太一「うまくいきそうだな、このチーム」
英二「うん」
 こそりと呟き合う。
利九「よし、じゃあ次は銀将屋だが…」
巳六「…あ、俺な。銀将屋の方には俺が行く。昔、色々あってな」
 七々が巳六の方を見た。
七々「色々?仕事してたの?」
 巳六は、いつも通りの表情で言った。
巳六「俺、昔そこに捕まって、売り飛ばされそうになったんだわ」
 全員、驚きの表情で巳六を見た。
七々「…え…?売られそうにって…」
 巳六は全員の表情を見ても、いつも通りの顔をしていた。
巳六「あー俺、1人で旅してた5年間、そんなことばっかだったから、慣れてたから気にすんなよ」
七々「慣れてたって…」
 太一が立ち上がって巳六に近づき、肩にポンと手を置く。
太一「…お前…つらくなかったか…?」
 巳六は、ケロッとした表情で言った。
巳六「いや、マジで慣れてたから。強漢に絡まれたりケンカしたり売られそうになったり。正直、政府に居た頃に比べれば外は自由だったからな」
七々「巳六くん…!」
 手で口元を押さえた七々に微笑みかけ、巳六は利九の方を向いた。
巳六「つーことで利九、俺その辺よくウロウロしてたから、その辺結構詳しいからそっち行くわ」
利九「…」
巳六「利九?」
 利九はハッとなった。
利九「…分かった。頼む」
 そこで七々が立ち上がる。
七々「利九くん、私も巳六くんと一緒に行く。お願い」
巳六「七々、涙ぐんでどうしたんだよ」
 七々は思い切り巳六を振り返った。
七々「だって…巳六くんを売ろうとした所に巳六くんが行くなんて…」
巳六「…七々、俺、マジで大丈夫だから…」
七々「ダメ、近くで見てないと不安なの」
 七々は再び利九を見る。
七々「利九くんお願い」
利九「…分かった」
 七々は息を吐いて、椅子に座った。
巳六「七々…ありがとな」
七々「!…ううん…他に何もしてあげられなくて、ゴメンね…」
巳六「充分充分、ホント、嬉しいから」
 巳六はニコッと笑った。その笑顔を見て、七々は更に涙ぐむ。
 巳六は本当に動じていない。その事実が、逆に悲しかったのかもしれない。
 太一も席に着き、話は続けられた。
太一「…じゃあ、余った俺と英二は合図のチームだな」
英二「太一は一応ケガ人だから、戦う確立が低い役で丁度いいかもね」
 利九は軽く深呼吸をした。
利九「よし、チームは決まったな。次は、細かい行動についてだが…」
 話は、その後も続いた。


 7日目。
太一「お前ら、本当に助かった。ありがとうな」
「いいってことよ!三琴ちゃんは俺達に任せろ。気を付けろよ」
 工場区の仲間がうまくやってくれたようだ。今、工場区と商業区に行くまでの道は、政府の人間が誰も居ない状態らしい。
利九「すぐに出るぞ。いつまでこの隙が持つか分からないからな」
 全員、すぐに外に出た。
 そこで。
三琴「太一。気をつけてね」
太一「…ん…あ、ああ」
 何故か、何となく後ろ髪を引かれる感じがした。
太一「お前も、気を付けろよ」
 太一はその気持ちを振り払うように、皆に続いて走り出した。