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三琴「みんな、無理だけはしないで。いつだって帰ってくるのよ、いい?」
三琴に見送られ、次の日、太一たちは政府ビルへやってきた。1~3階は一般人でも誰だって入れる。
ただ、狙われている立場なので、気を引き締めてビルに入った。
立派。
ドリーム島の全てを統括している場所だけあって、相当大きく、最新技術がふんだんに使われた入り口のロビーだった。
受付がいくつも並んでいて、政府の人間が訪れた人々に対応している。ロビーは一般人で溢れ返っていた。
幸四「…利九が今まで1人で平気だった理由が分かりますねー」
五月「こんなに居んのかよ…」
利九「もっと奥に行くと、誰も居なくなるぞ」
太一「ってソレ…やっぱ危険だったんじゃねーか利九!」
利九は、いつも通りクールな表情だった。
利九「セキュリティが薄い所、厚い所。俺は何でも知っている。特に問題は無かった」
七々「そっか。利九は常に色々調べてるもんね」
利九「政府はまだ未発達だ。よく調べれば、穴だらけだ」
太一「頼りにしてるぜ、兄ちゃん!」
ポン、と肩を叩く。
利九はいつも通りの表情だった。
利九に指示された通り、通路を次々と通過していく。
もう、一般人は誰も居なかった。
太一「スゴ…」
英二「完璧じゃん、利九」
利九「いつも通りだ。だが…今までこのあたりで端末をいじっていたが、今日からはもっと奥へ行く。恐らく…護衛兵あたりが出てくるかもしれない。その時は…」
五月が前に出る。
五月「そのために、俺達を連れてきたんだろ?出てきた奴ら、片っ端からシメてやるから安心しろ」
利九は頷いた。
利九「…よし、行こう」
次の部屋には誰も居なかった。
利九が、小さなダクトに入り込んで調べ事をしている。太一たちは、誰が来てもいいように見張っていた。
すると、
?「…あ、お前ら…!!」
太一たちは、一斉に身構えた。政府の人間か、それとも兵士か…
藍「何でこんな所に居んだよ!」
何と、造船区で会った藍だった。
英二「こっちのセリフなんだけど!アイ、何でこんな所に…」
藍「ああ、ちょっと手伝いでさ。造船のことで届け物をしに来たんだわ。なあ、ハル」
藍は、黒ずくめの男と一緒に居た。顔は大きい色つきのゴーグルのせいで見えない。
ハル「…こいつらは、部外者か?」
藍「ん?いやー違う、違う」
何かを察して適当にごまかそうとした。だが。
ハル「…」
ハルは、全員を静かに見回す。
ふと、五月の前で目が止まった。
ハル「…お前…」
ハルは、武器を構えた。全員ハッとなって身構える。
こいつは…アイって奴と違って、本当に政府の人間か何かだろうな。
…俺のことしか見てねぇ…何なんだ?
五月「テメエ。俺に何か用なのか?」
ハル「…」
いきなり五月に切りかかってくる。五月は軽くかわした。
藍「オイ!ハル」
そして、2人は武器―五月は能力を付加した木の棒―を打ち合った。
一気に緊張が走る。しかし。
幸四「…様子がおかしいですね…」
2人は、本気を出していない様に見えた。
こいつ…俺の力を試してんのか?
ハルが本気を出していない様に見えたので、五月もそれに合わせて戦っていた。
意図が全く分からなかった。
皆しばらく様子を伺っていたが、藍がようやく止めに入る。
藍「ハール。そのへんにしとかねえ?よく分かんねーけど」
ハルは、ピクンと動いて武器を下げてじっと考え込む。
そして、我に返ったように藍に向き直った。
ハル「…ああ」
五月は呆気にとられていたが、顔色がすぐ怒りに変わる。
五月「テメエ…ハルとか言ったか一体何なんだよ!!」
ハル「…」
ハルはもう、五月を見ても攻撃してこなかった。
五月「何とか言いやがれ!!訳わかんねえ!!」
幸四「五月。落ち着きなさい。政府の誰かが来たらどうするんですか」
五月「…チッ…」
五月は、無理やり怒りを押さえ込んだ。もちろん、収まってはいないが。
幸四「とりあえず、こんな所に長くは居られませんからね。ハル、でしたっけ?何も話さないなら、何も聞きません。
ですけど、あなたが政府の人間だとしたら、僕達のことは誰にも言わないでほしいんです。
アイの知り合いみたいなんで、無理を承知でお願いできませんか?」
ハル「…俺は政府に雇われた傭兵だ。今は、アイを奥の方に案内しただけだ」
藍「じゃあ、誰にも言わないってことでいいな?」
ハル「どうでもいい」
ハルはもう、完全に無関心な顔をしていた。
藍「とりあえず、サンキューハル。戻る道は分かるから、戻ってもいいぜ」
ハル「…」
ハルは、何も言わずに部屋から出て行った。
五月「…何なんだよ、アイツ…」
太一「五月、落ち着けって。お前の力を試したかっただけかもしれないじゃん」
五月は、まだ納得できない感じだった。
それはともあれ、藍との意外な再会だ。
七々「アイくん、また会えたね」
藍は、いきなり七々にとびついて、抱きしめた。
藍「七々…超嬉しい。また会えたな…!」
七々「う、うん…アイくん、苦しいんだけど」
藍「あー、ゴメン!」
パッと離す。藍は全員を見回した。
藍「お前らも、また会えたな!こんな所で何してんだよ」
太一は頭をかく。
太一「あー、えっと…ちょっと調べ物を…」
藍「うそつけ。さっきハルに”誰にも話すな”とか言ってたじゃねーの。ココは関係者とか、許可もらった人しか入れねー所らしいし」
幸四「…まあ、前と同じですよ。ちょっと個人的な理由で色々調べてるんです」
藍「フーン。大変なのな」
藍は、何かに気付いたようにハッとした顔をした。
藍「…俺、もう行くわ」
七々「?どうしたの?」
藍「俺、政府に実は狙われてる立場なんだわ」
七々「…えっ…私達と同じ…」
藍「そうなのか?とりあえず、長く居たくねーんだ。狙われてるってのもあるし、…すげー、嫌な思い出ばっかだし」
俺達と同じ…
七々「アイくん…」
藍「…あ、悪い。こんな話、お前らにしてどーすんだ…ああもう、ここに居るとダメだ俺。さっさと外に出たい…」
その時。利九がようやく、ハッキングを終了したのか、ダクトから出てきた。
藍「…ん?誰…」
利九「…?」
利九と藍の目が合う。
利九は、藍を見ながら思いを巡らせているようだった。
そして。
いつもクールな利九の目が、驚きに見開かれる。
利九「…ミロク…?」
利九は、声を震わせていた。
藍「えっ…ミロクって…」
利九「…間違いない。お前は巳六だ…」
太一「巳六!?巳六って、キョーダイの1人の…?」
藍「…まて」
藍は、利九の両肩を掴んだ。
藍「お前、俺のこと知ってんのか…!?おい、教えてくれ。俺、ここで実験みたいなことされる前のこと、何も覚えてねーんだ…!!」
英二「実験前のことを覚えてない…確実だね…」
ずっと探していた、キョーダイ2人。何と、藍がそのうちの1人だったのだ。
利九は、藍をなだめるように肩をポン、と叩いた。
利九「お前は巳六。俺達キョーダイ…メンバーの一員だ」
藍「巳六…」
目を閉じる。
巳六「俺は、巳六…」
目を開いて、キョーダイたちを見回す。
巳六「俺…旅してりゃ、いつか俺のことを知っている人に会えると思ってた。
俺は記憶が何もねーから、会えたら向こうが気付いてくれるかもって。時々空を見上げて。
カオも名前も分からない大切な人たちを探してたんだ。まさか…お前らがそうだったなんて…」
太一「巳六、よろしくな」
巳六は涙ぐんだ。
巳六「うわ、ヤメロよ!俺!泣きたくねーんだけど!見んな!!」
皆、笑った。
七々「巳六くん」
巳六「…!!そうか…七々ともキョーダイ、メンバーの一員なんだな。七々、よろしくな…」
七々「うん。よろしくね、巳六くん」
その時。
警報が鳴り響いた。
英二「…!!まさか、ハルが…」
巳六「いや、ハルはそんな奴じゃねーはず」
利九「いや、これは俺がやった」
太一「えぇ!?」
利九「重要な情報が見つかったんだ。セキュリティが掛かっていたが、お前らの言葉に甘えて遠慮なく踏み込ませてもらった」
巳六「利九、やる~」
口笛を吹いた。
巳六「待ってろ。無駄に戦わなくても、いい道知ってっから。こっち」
英二「何でそんな道知ってるの?」
巳六「歩きながら、興味があったからハルに色々聞いた」
英二「またソレか…ビルに居るの嫌だって言ってたじゃん」
巳六「それとこれとは話が別じゃね?」
英二「…巳六の興味に助けられてばっかりだね」
太一はプッと吹いた。
巳六「七々も。ほら、足元気イつけて」
七々「ありがとう」
巳六のおかげで、その場はうまく脱出することができた。太一たちはアジトへ帰ることにした。
巳六と一緒に。
ハル…あいつ、ホントに一体、何だったんだ…
何か、すげえ気持ちが悪りぃ。…なんだコレ…
→「闇」