「声」

あなたにも、届いているでしょうか











心とは、いったい何でしょう
幸せとは、いったい何でしょう
命とは、いったい何でしょうか
知りもしないくせに、分かったようなことばっかり言ってしまうよね
もっと知りたかったと思う
もし 許されるのであれば
…ほんの少しでも、可能性を信じてもいいでしょうか
期待はしていません でも
ほんの少しだけ…あがいてみようと、思う…



零「気を付けて…」
太一「ああ」
 9人は、アンテナのマーキングを終え、造船区の港へ来ていた。
 ライク島へ行く訳ではない。
 あの日から、もう4日も経っていた。寿命は、あと3日しかない。ライク島へ船で向かうと3日かかる。とてもじゃないが手術など出来そうになかった。
 そこで。
 9人は、船で1日もかからないホープ島へ行くことにしたのだ。
 ただ、ホープ島はドリーム島と敵対関係にある。島の情報が何も無いので、どの程度医療が進んでいるのかも全く分からない。
 医者に辿り着けるどころか、船が入れるかどうかも分からなかった。
 それでも、わずかな可能性に賭け、9人はホープ島へ行くことにしたのだった。
利九「もう少し待っててくれないか」
 利九が船の点検をしている間、8人は海を見ていた。
八重「海!すごい。大きいね。みんな、早く行こう!」
 八重は、海を初めて見たのだった。目をキラキラと輝かせている。
 そんな八重を見て、幸四は。
幸四「…やっぱり、かないませんねぇ」
 笑いながら、ため息をついた。
 そこに五月が近づいてくる。
五月「何がだよ」
幸四「八重、最強伝説です」
五月「だな」
 2人は、笑い合った。

 巳六と七々は、2人で海を見ていた。
 正確には…巳六は、海を見ている七々の横顔を見ていた。
巳六「…七々」
七々「ん…?」
 巳六は、頭を掻きながら、目を逸らして言った。
巳六「…あー…えっと…そういえば、ちゃんと言ってやってねーと思ってさ…」
七々「?何を?」
 きょとんとしている七々を見て、巳六は赤くなって慌てた。
巳六「だから!アレだよ。分かるだろ!」
 七々を、キッと見つめる。
七々「…!」

まだ、すきっていってない

七々「…あ」
 七々も、一瞬で真っ赤になった。
 2人は、じっと見つめあう。
 でも…少し考えた。
巳六「…ああ、そうだ」
 巳六は、穏やかに笑った。
巳六「…もし…俺達が全員助かったら…その時に言うわ」
七々「!」
 巳六の穏やかな笑顔を見て、七々も一緒に笑った。
七々「うん…楽しみにしてる」

 そして、太一は。
 海を見つめる、三琴の横に立っていた。
 ただ、立っているだけ。
 …手を握る、勇気がどうしても出なかった。

うーん…
これも、もう少し時間が欲しかったな…


 太一は苦笑した。
三琴「…何、笑ってるのよ」
太一「ああ、いや、何でも…」
英二「みんな、利九が終わったって」
 船の点検が終わったようだ。
 9人は船に乗り込もうと、船の横に集まった。
 そして…
零「…もう、行くのかい」
 寂しそうな表情をした零が、9人を見つめていた。
太一「ああ」
零「手術が終わったら、すぐに帰ってきてくれよ。待たされるのはごめんだからね」
 そこで、太一は、零に向かって、拳を突きつける。
 優しく、笑った。
太一「…俺の声が、きこえるか?」
零「…」
 辺りが静まり返った。風が吹く。
零「…うん」
太一「今、目の前に居る俺達が、消えてしまうと思うか?」
零「思わない」
太一「…そう。レイ、助かる可能性はゼロじゃない。きっと大丈夫。手術は3日以内に終わるはずなんだから、また数日後に戻ってくるよ」
零「分かった」
太一「…じゃあ、またな」
 永遠の別れのつもりは無い。
 9人は、軽く零にあいさつをして船に乗り込んだ。
 そして、船が出る。
 船は少しずつ遠ざかっていき…
 そして、完全に見えなくなった。
零「…」


普通を…
普通を 与えてあげたい
あの子たちに 普通を

帰ってきて、普通に暮らすんだ
当たり前な日常を

…絶対に帰ってくる
だから 僕は待つ
すぐに帰ってきてくれよ
待たされるのはごめんだから











→「終」