―工業都市ドリーム島(とう)工場区現場3。
鉄の柱が入り組んだ場所で、数人の青年が働いていた。
太一「そろそろハラ減らないか?」
赤髪の彼が太一。
英二「別に減らないけど?」
緑の帽子の彼が英二。
他に、数人の仕事仲間が居た。
「ハハハ、ガマンしろよ太一」
「今何か食べれば~?」
「いや、どうせなら三琴ちゃんの料理が食べたいよなぁ?」
鉄柱の上で作業している太一は笑った。
太一「そうだなー三琴の料理は世界一だからな。いや、宇宙一だな!おい英二、早く帰ろうぜ」
英二「ダメだってば」
あきれた。
俺と英二は、工場区のアジトに隠れ住んでいる。何で隠れてるのかっていうと、まあ色々理由があるんだけど。
「キョーダイ」って呼び合ってる仲間同士で、アジトに隠れ住んで、こうやって時々金を稼いで暮らしてるんだ。
キョーダイってのは、「兄弟」「兄妹」「姉弟」「姉妹」全部ひっくるめたイメージ?とりあえず、血は繋がってないけどキョーダイって呼び合ってる。
みんな大事な仲間!
仕事を終えた帰り道。
英二「今日、現場5がちょっと忙しいんだってさ」
太一「えー、そうなのか。あいつら大丈夫かな」
太一は大げさに驚く。
英二「今日多分帰ってこれないかもって幸四が言ってた」
太一「なっ!!?マジかよ!!3人ともか??」
英二の肩を掴んだ。
英二「そうだろうね」
太一「そうなのかよー…超心配じゃねーか。おい手伝いに行くぞ」
英二「そうしたらアジトに三琴一人になっちゃうじゃん」
英二はため息をついた。
太一「はっ、そうか…それは絶対ダメだな」
三琴の顔が浮かんで冷静になる。
英二「まったく、太一は心配性だな~」
太一「うん。俺みんなのこと大好きだからな」
英二「…聴いてる方が恥ずかしいよ」
今、アジトで7人で暮らしてる。まずは、今ここに居る俺と英二。そして、今現場5で働いてる幸四、五月、七々。家にはいつでも三琴がメシを作って待っている。
そしてもう一人は、利九。今は―…ちょっとした所に出掛けてて帰りがいつになるか分からない。こんなところかな。
ホントはあと二人居るんだけど…まだ「見つかってない」んだ。…きっと、何とかなるって信じてるけどな!
とにかく今日は俺と英二と三琴だけみたいだ
工場区にあるスラム街の裏通りに、アジトはある。スラム街は、ほとんどが鉄柱やレンガや木の板で作られた質素な家ばかりだが、工場区だけあってどれも作りは頑丈だ。
アジトは、他の家々の中に紛れて目立たない所にあった。
太一「三琴、ただいま!」
三琴「あら、お帰りなさい」
玄関から入ると、すぐに工場に似た大広間。テーブルや椅子があちこちに置いてあり、大きなテレビもあった。
三琴はキッチンで料理をしていた。
英二「いい匂いだね」
三琴「ありがとう。今日は2人だけなのよね?」
カチューシャをしたロングスカートの彼女が三琴。
太一「そうそう。あいつらが心配だけど―まあ大丈夫だろ!」
三琴「今日は3人なのね。少し寂しくなるわね」
太一「俺がみんなの分も盛り上げるから大丈夫」
笑った。
三琴「ふふふ。さあ、食事の準備をしましょう」
食事中。
英二「…でも、他の3人が心配ってのも分かるなあ」
太一「ん?」
英二「だって、俺達”狙われてる”し。」
三琴「…そうね」
空気が真面目になる。
英二「普通に暮らしてると、狙われてること忘れそうになるね。一応狙われてるから隠れ住んでるんだよね」
キョーダイは全員狙われている。「利九」以外は。
太一「今、”あそこ”に居る利九が何とかしてくれれば、こんな島すぐ脱出するさ。そうすれば本当の意味で自由になれる」
英二「…利九、大丈夫かな。いつも1人で”あそこ”に進入してるし」
太一「一緒に行くって言っても聞かねーからアイツ」
苦笑した。
今の俺達の現状。
・アジトでキョーダイ達と暮らしている。
・利九以外”狙われている”から隠れ住んでいる。
・”あそこ”に居る残りのキョーダイ2人を助けなければいけない。
・そのために、唯一狙われていない利九が時々進入して色々調べている。
・2人を助け出してキョーダイ全員が揃ったら、船で島を脱出したい。
こんなところかな。
俺達は普通に暮らしたいだけ。ただ、それだけのこと。
いつか叶えてみせる。
絶対に。
次の日。
今日も仕事だ。食べていくためには、稼がなければいけない。
現場3への道を、2人は歩いていた。
太一「ていうか俺らさ、フツーに暮らしててよくあいつらにバレないよな」
英二「俺達の顔、覚えてないからじゃない?人って思われてなかったし。名前もコードネームで呼ばれてたし」
太一「そーだったなぁ…あと、隠れてやってた実験だったみたいだから表立って俺達のこと探せないんだろうな」
実験。
英二「うん。そうじゃなかったら、利九が俺達の外出を許さないでしょ」
太一「確かに」
太一は頷いた。
英二「でも…」
太一「ん?」
英二「…そろそろバレてもおかしくない気がしない?」
二人の目が合う。
太一「…俺も最近そんな気がしてる」
英二「だってさ、あんなデカイ組織から狙われて、いくら見た目をよく覚えてないからって、逃げてから3年もたってるし、見つからない方がおかしいと思わない?」
太一「でも、表立って探せないんだから人が大勢居る所に居れば…」
英二「…それって、バレてること前提の話?」
英二は怪訝そうな顔をした。
太一「うーん…とりあえず、最低2人以上で行動を心掛けるか!」
英二「そうだね。…あ、三琴はいつも1人で買い物に…」
キャアアーーーー!!!!!
太一・英二「!?」
三琴の悲鳴が聴こえた…気がした。
太一「…気のせい…か」
英二「そうだね。こっち、市場と逆方向だし。あんな話してたせいかな」
太一「幻聴が聴こえるくらい心配ってことで」
無理やり納得してみたが、正直不安だった。
太一「…明日から、やっぱ1人三琴以外にアジトに残しとくか。買い物の時なんかに一緒についていけば安心だな」
英二「そうだね。ていうか昔はそうしてたよね。ちょっと俺達平和ボケしてるかもしれない」
太一「常に気を引き締めておこうぜ」
二人で頷きあった。
が。
嫌な予感は的中していたようで。
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